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イベントレポート

出張Out of Box相談室 in 筑波大学(4/12)

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「出張Out of Box相談室」第2弾を開催
業界関係者と研究者が実用化を課題に議論

製薬・医療領域の業界関係者がアドバイザーとなり、同じ製薬・医療領域の研究者の様々な疑問や課題にアドバイスをするイベント「Out of Box相談室」。普段は日本橋で開催しておりますが、今回は「出張版」として筑波大学(茨城県つくば市)で開催いたしました。当日は、新規メカニズムによる抗がん剤、再生医療、新しい前臨床試験モデルなど、様々な疾患領域における研究課題をテーマに、研究者とアドバイザーとの間で活発な議論が行われました。アドバイザー間でも異なる意見が出ました。

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御参加いただいた研究者の方々

小田竜也先生(筑波大学医学医療系消化器外科)
八重垣健先生(日本歯科大)/福田邦明講師(筑波大学医学医療系消化器内科)
松井裕史先生(筑波大学医学医療系消化器内科)
猪股伸一先生(筑波大学医学医療系麻酔蘇生学)
宮﨑 淳先生(筑波大学医学医療系腎泌尿器外科)

この日の相談会では、作用メカニズムや他の疾患に対する応用性などに関する話題から、知的財産権や製薬企業との連携の可能性まで幅広い議論が行われました。特に「企業との連携」については、共通のテーマとなりました。

アドバイザーたちは、研究者とは異なる視点による指摘を行いました。たとえば、研究者の多くは製薬企業の協力および資金支援を期待しますが、実は企業との連携は簡単なことではないのが現状です。その原因の多くはサイエンス上の課題ではなく、ビジネス上の判断だといいます。「既存薬の治療満足度がそこそこ高いことから新薬の開発に消極的」「知的財産権の取得が難しい」「社内パイプラインが充実しており外部シーズが入り込む余地がない」などです。

こうした状況に対して、アドバイザーは大手製薬企業だけでなく、国内外の上場しているバイオテック関連企業など特定領域で活動している企業との連携も検討するべきだとアドバイスします。疾患評価モデルを研究する研究者には「医薬品開発業務CROへの技術移転」という意見も出ました。

国内外のベンチャー・キャピタル事情に詳しいアドバイザーからは「米国で開発すれば資金調達やアントレプレナーシップに関するノウハウも取得できる」との提案も出ました。また中国のベンチャー・キャピタル市場は「投資できる資金はあるが投資先がない」という事情から投資先を日本などの海外に求めており、知的財産権のリスクはあるが、彼らの力を借りるのも有用だと指摘されました。

その他アドバイザーからの様々なコメントの一部を紹介します。

1.がん領域について

  • 抗がん剤領域で製薬企業が重要視するのは、まずその薬剤が「first-in-classになり得るか」という視点です。best-in-classを目指す場合は、現在の標準治療と比較して明らかな有意性を示すことが重要です。

2.再生医療について

  • 製薬企業が再生医療に期待する結果は「根治治療」です。しかし現在の幹細胞移植は、移植後の細胞が長期間活動できないという課題があります。再生医療製品については、その問題を解決する必要があります。

3.疼痛評価モデルについて

  • 日本国内とは異なり、海外では疼痛治療領域に注力している企業は少ないのが現状です。企業が消極的になっていった理由は、難治例に対する開発が難しいことです。しかし先生が研究している疼痛評価モデルが治療薬の開発に利用できるようになれば、その状況が大きく変わる可能性があります。
  • 疼痛領域における現在のトピックは「抗体医薬」と「偏頭痛」。特に偏頭痛にはどの企業も高い関心を持っています。もし偏頭痛を客観的に評価できるモデルを作ることができれば、製薬企業の強い関心を引くことになるでしょう。

4.知的財産権について

  • 製薬企業は複数の権利者にまたがる知的財産権を嫌います。商業化を目指すのであれば、知的財産権はきちんと整理する必要があります。その場合は大学のTLOや産学連携部署の専門家と相談し、一緒に交渉するのが望ましいでしょう。
  • 中国のベンチャー・キャピタル市場に流れ込む資金額は、日本市場の約十倍に上るといわれています。中国市場は「投資する資金はあるが投資先となる知的財産が国内にない」という状態が続いており、彼らは日本や米国など海外の研究に対しても積極的に投資しています。ただし中国に関しては知財トラブルに巻き込まれるリスクもあります。そこはある程度覚悟し十分準備をしておく必要があります。
  • 再生医療であってもバイオマーカーによって定義できる自然物でない細胞を作る場合では、物質特許の取得は可能です。海外企業の中には、再生医療領域で物質特許を取得した企業もあります。製造方法に対する特許では、将来的に様々な抜け道が生じる可能性があるのです。

5.製薬企業との連携のあり方について

  • 抗体の製造コストはかなり下がってきていて、これからも下がる一方です。アプタマーは、まだ市場に出ていないということもあり、コスト面では不利だと思います。
  • この標的で劇的に効くのであれば、アプタマーに絞るというのはちょっと危険な気がします。低分子から全部含めてやったほうがいいと思います。

6.製薬企業との提携について

  • 製薬企業に対するコンタクトは「評価モデルを作成したから貴社で使ってほしい」ではなく「我々の評価モデルの検証に貴社の化合物を使いたい」と提案した方が、その後の展開も良好です。そこで興味深いデータが生じれば、彼らはより関心を示します。
  • 製薬企業は市場に出している薬剤以外にも、多くの有望な化合物(ツール化合物)を保有しています。それを自分たちの検討に使いたいと依頼すれば連携のハードルも下がる筈です。企業と「試料提供契約」を結べば化合物の提供も受けられます。
  • 製薬企業の化合物ライブラリーを利用するという方法もありますが、実際に外部に提供されるケースがわずかです。企業の化合物ライブラリーは社内のプロジェクトですら順番待ちという状況で、まして外部の関係者が利用するのは非常に難しいのです。それよりも他の手段で有望な化合物を先に見つけておくのも、方法のひとつでしょう。海外では産官学コンソーシアムの活動も活発です。
  • アカデミアにとっての潜在的パートナーは製薬企業だけではありません。新興バイオテック企業、ベンチャー・キャピタル、さらには大学からのスピンアウトなど選択肢はさまざま。彼らとよく相談をしながらパートナーを見つけてほしいと思います。

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