2024年9月30日(月)、LINK-Jは東京大学多様性包摂共創センターおよび産学協創推進本部との共催で「ライフサイエンス研究のダイバーシティ ー多面的な研究、多様なキャリアパス、多彩な研究者ー」をハイブリッド形式にて開催しました。
当日は会場・オンライン合わせて82名の方にご参加頂きました。
日本の女性研究者の割合は年々緩やかな増加傾向にありますが、諸外国と比較すると未だ少数に留まっています。そこでLINK-Jでは女性活躍支援イベントを昨年11月に開始しました。
第三弾東京大学編 として本企画では先輩女性研究者の先生方にご登壇いただき、日本の女性研究者の現状からご自身のキャリアやこれまでの研究をお話い頂くことで、現役の女性研究者や、研究者を志す学生の方はもちろん、女性、男性を問わず研究者のキャリアパスについて興味を持って頂くことで女性活躍の支援の一助となることを目指すイベントとなりました。
開会挨拶
曽山 明彦(LINK-J 常務理事)
「東京大学 ダイバーシティーへの取組み」
吉江 尚子 氏(東京大学副学長・生産技術研究所教授)
▼講演要旨
東京大学は、現在、女性リーダー育成に向けた施策「UTokyo男女⁺協働改革#WeChange」を実施しています。#WeChangeの詳細はこちらをご覧ください。
東京大学は本年4月に、多様な人々の公平な包摂を実現する学知とキャンパス環境を共同創造するために、多様性包摂共創センター(通称:IncluDE)を設立しました。IncluDEに置かれたジェンダー・エクイティ推進オフィスが中心となって、#WeChangeをはじめとする東京大学の女性活躍推進に取り組んでいます。
「研究者人生の折り返し地点で考える、これまでとこれから」
小林 奈通子 氏(東京大学大学院農学生命科学研究科 准教授)
▼講演要旨
農学部に所属し、植物の研究をしています。特に、放射性同位体を使って物質の動きを追跡する手法は、開発の面からも取り組んできました。最近では、必須栄養素であるマグネシウムが、植物体内で濃度制御され、必要に応じて別の器官に移動していく仕組みに注目しています。ライフイベントとしては、博士課程1年の時に結婚し、在学中に2回の妊娠出産を経験しました。延べ1年間の休学と在学期間延長の末、30歳でようやく博士論文を提出しました。子育てしながらの研究に対して研究室のメンバーや家族の誰からも疑問の声はあがらず、むしろ応援し励まし続けてくれたことに心から感謝しています。私のキャリアで特異なのは、組織の移動や留学経験がない点です。ただその分、1週間~1カ月程度の期間での海外イベント等には積極的に参加してきたのですが、これが今に繋がる糧になりました。また、子供は成長していくもので、私の仕事の自由度は年々向上しています。まもなく夫との二人暮らしになるので、ライフ・ワークの両面での次の展開を楽しみにしています。
「分野と国を旅するキャリアパス」
杉原 加織 氏(東京大学生産技術研究所 准教授)
▼講演要旨
物理工学専攻で修士を取り、その後スイスに行き生体医工学の分野で博士を取得、ドイツでポスドクをしました。最初に独立して研究室を持ったのはスイスに帰ってテニュアトラック助教のポジションに着いた時で、研究室の立ち上げをしながら子供2人を産みました。12年間のヨーロッパ生活の後、2020年に帰国し着任2週間で研究所がコロナ・ロックダウン!留学、分野変更、ライフイベントとの両立、トラブルを乗り越えるコツなどをお話しします。
「ナノ粒子を使って認知症に挑む~治らない病気を、治る病気に」
中村 乃理子 氏(東京大学 大学院工学系研究科 助教)
▼講演要旨
工学系研究科で助教をしています。博士課程では、中枢神経系疾患の治療を目的として脳へ薬物を送達するナノ粒子の研究をしていました。学位取得後、治療に加えて早期診断にも取り組みたいという思いから現在の研究室に移り、ナノ粒子によるバイオイメージングや生体分子の検出による体外診断の研究をしています。助教になってからはこれまで扱っていた合成ナノ粒子に加えて、生体内で産生するナノ粒子にも挑戦中です。まだ研究者としては駆け出しですが、振り返ってみると「治らない病気を治る病気に変えたい」という子どもの頃から持っていた思いに従って進路を選択してきたように思います。加えて、学部生のときから今に至るまで、多くの先生に心のこもった非常に大切な言葉をかけていただいてきました。私の経験をお話させていただくことで、同じようにどなたかの糧になれば幸いです。
「企業での創薬研究や働き方について」
藤井 佑紀 氏(武田薬品工業株式会社 リサーチ ニューロサイエンス創薬ユニット 主席研究員)
▼講演要旨
博士号(生命科学)取得後、武田薬品工業(株)の研究部門にて勤務しております。今回の講演会では唯一のindustryからの演者ということで、製薬企業における創薬研究の流れや、弊社における働き方や多様性を受け入れる取り組みについてご紹介いたします。
パネルディカッション モデレーター:吉江 尚子 氏(東京大学副学長・生産技術研究所教授)
パネリスト:上記登壇者
パネルディスカッションでは、吉江尚子氏にモデレーターを頂き、ご登壇の皆様と熱い議論を交わしました。
参加頂いた皆様からは「御活躍をされていらっしゃる御姿がとても伝わってきました。キラキラと輝いて、とても美しいです。とても励みとなりました。」「分野は異なれど、ご自身のキャリアを追求されていて勉強になりました。」「初めて登壇者がすべて女性のイベントに参加しましたが、思ったより率直に色々なお話をして下さって有難かったです。」と多くの感想が寄せられました。
ご視聴・ご参加、誠にありがとうございました。