Menu

イベントレポート

「金沢新発見!社会実装を目指した最新技術Vol.2 ~金沢大学が拓く未来のがん治療と医薬品開発~」を開催(11/28)

2025年11月28日(金)、国立大学法人金沢大学とLINK-Jは「金沢新発見!社会実装を目指した最新技術Vol.2 ~金沢大学が拓く未来のがん治療と医薬品開発~」をハイブリッド形式にて開催しました。

主催:一般社団法人ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(LINK-J)、国立大学法人金沢大学
協力:学際領域展開ハブ形成プログラム「健康寿命科学」

LINK-JのYouTubeチャンネルでアーカイブ動画を公開しています。
 

金沢大学は、世界トップレベルの研究を行う7つのフラッグシップ研究所、9つの研究センターをはじめとして、世界最先端の基礎研究・応用研究や産学官連携による実証研究が行われています。LINK-Jは本イベントを通じ、金沢大学の優れた研究環境で生まれる新しい技術、アイデアの社会実装を目指した取り組みを紹介しました。

2回目となる今回は『がん治療』をテーマに、学際領域展開ハブ形成プログラム「健康寿命科学(CIMA)」の協力の下、4名の研究者にご登壇いただき、下記のテーマについてご講演いただきました。

①肺がんの耐性遺伝子同定と、それを克服する薬剤開発の現状
②トリプルネガティブ乳がんに対するFXYD3を標的とする新たな分子標的薬の開発
③転写因子 PRDM14 を標的としたRNA(siRNA)による治療薬を開発した取り組み
④低分子Magic Bulletと、グローバル展開を目指した現在の試み

CIMAとは、金沢大学がん進展制御研究所、東北大学加齢医学研究所、大阪大学微生物病研究所、慶應義塾大学先端生命科学研究所が集結し、「がん」「老化」「炎症」「代謝」に関する卓越した研究を結びつけ、組織レベルの機動的な連携・協働を拡充することによって、学際研究領域「健康寿命科学」コンソーシアムです。詳細はこちらをご確認下さい。

オープニング
高橋 俊一(LINK-J 事務局長)

オープニング
中村 慎一(理事(研究・社会共創・大学院支援担当)・副学長)

基調講演「患者にやさしい肺がん治療開発への挑戦」
矢野 聖二(医薬保健研究域医学系 呼吸器内科学 教授)

【講演要旨】
わが国のがん死亡数はいまだに増加しており、がん死亡原因の第1位は肺がんである。肺がんの治療は、手術や放射線治療に加え、薬物治療の進歩が著しく、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬とともに抗体薬物複合体や二重特異性抗体が使用可能になっている。これらの薬剤は肺がん患者の生存期間を延長するが、多くの場合耐性により再発してしまう。発表者は分子標的薬の耐性機構を解明し、耐性を克服する治療法開発を目指した研究を行ってきた。分子標的薬が効きにくい体質(BIM遺伝子多型)でも効きやすくする薬剤の医師主導治験を行い、わが国の医師主導治験実施基盤の整備に貢献した。さらに、EGFR遺伝子を持った変異肺がんの一部が分子標的薬耐性を起こす耐性遺伝子(ARID1Aなど)を同定し、それを克服する薬剤(WEE1阻害薬)候補も同定し、臨床試験のパートナー企業を探している。また、今年FDAで認可された抗体薬物複合体(Telisotuzumab vedotin)の標的分子であるMETのがん細胞における発現を非侵襲的にイメージングで診断するPETプローブの開発にも着手している。本講演では、このような肺がん患者にやさしい治療法開発の取り組みを紹介する。

一般講演1「再発の「種」を断つ—FXYD3を標的とした次世代がん治療へ」
後藤 典子(がん進展制御研究所 教授)

【講演要旨】
乳がんは世界の女性のがん死の2位、日本では現在1年間に約15,000人が乳がんにより死亡している。約15%のトリプルネガティブタイプ(ホルモン受容体、HER2ともに陰性)は90%以上の症例で治療可能なドライバー変異が見つからず、ゲノム医療の恩恵が受けられない。従来型のタキサン系抗がん剤が依然使用され、一旦治療効果を認めても、数年後に一定の頻度で再発や転移が見つかるため、患者死亡数の増加が問題になっている。 私たちは、FXYD3は治療抵抗性のがん幹細胞Drug tolerant persisters (DTPs)の生存に重要な分子であることを、世界に先駆けて示してきた。FXYD3を標的とすれば、不均一ながん細胞集団を全て死滅させ、がんを根治できる可能性が高い。私たちが提案するFXYD3を標的とする分子標的薬が実用化されれば、トリプルネガティブ乳がん患者のがんを根治できる可能性が高い。

一般講演2「金沢大学から世界に発信する新しいがん核酸創薬」
谷口 博昭(がん進展制御研究所 教授)

【講演要旨】
がん治療はこれまで低分子薬や抗体医薬が中心でしたが、近年、遺伝子そのものを直接狙う「核酸医薬」が新たな選択肢として注目されています。核酸医薬はDNAやRNAといった遺伝子情報を介して原因遺伝子の働きを抑えるため、従来は薬にしにくかった分子や転写因子にもアプローチでき、がん治療の可能性を大きく広げます。今回ご紹介するのは、さまざまな固形がんで異常発現し、再発・転移や薬剤耐性に関わる転写因子 PRDM14 を標的に、小さなRNA(siRNA)による治療薬を開発した取り組みです。この挑戦は、医学に加えて理学・工学・薬学の研究者と連携し、高活性なsiRNA配列の設計や、がん組織へ効率よく届けるナノキャリアの創出など、数々の工夫を重ねて進めました。さらに公的研究費のご支援のもと、原薬製造・製剤化の段階では国内外企業の高度な技術も活用しています。完成した候補薬は非臨床試験を経て、がん研究会有明病院にて難治性乳がん患者さんを対象に第I相治験を先行的に実施し、良好な安全性と一部患者さんで病勢制御が持続した事例を確認しました。血中薬物濃度も、前臨床で抗腫瘍効果が示された有効域に到達しており、臨床応用への道筋が見えつつあります。臨床と並行する研究開発は容易ではありませんが、産学官連携を基盤に、金沢大学附属病院を中核としてがん専門医療機関と緊密に協働し、金沢からがん核酸医薬の実装に向けた挑戦を続けてまいります。

一般講演3「低酸素活性化技術を活用した抗がん剤プロドラッグの開発」 
池田 豊(がん進展制御研究所 特任准教授)

【講演要旨】
がん創薬は2000年代から従来の殺細胞性抗がん剤から分子標的薬へと変化し、様々な医薬品が開発された。また免疫チェックポイント阻害剤の登場により、がん治療が新たな時代を迎えている。これらの優れた抗がん剤が開発される一方で、患者の高齢化や医薬品の高額化により、医療経済や経済毒性といった新たな課題も生じている。特に、がん患者の高齢化は今後世界的な課題となることは明らかであり、この課題解決に取り組むことは、これからのがん創薬のグローバル展開を考える上でも重要である。 この課題解決のため、我々は低分子Magic Bulletを提案する。本セミナーではこれまでに開発した低分子Magic Bulletと、グローバル展開を目指した現在の試みについて紹介する。

クロージング
鈴木 健之(がん進展制御研究所 所長)

司会
中川 昌也 (先端科学・社会共創推進機構 特任教授)

イベント後のネットワーキング・レセプション会場は非常に盛り上がりました。 参加者の皆様は、登壇者をはじめ多くの方々と交流され、活発なネットワーキングが行われました。

参加者からは「社会実装を意識した金沢大学の創薬の話しは大変興味深かった。」、「新しいターゲットなどすばらしい研究が進んでることを知ることができた。」、「金沢大学を中心としたCIMAによる最先端のがん治療研究を一度に俯瞰でき大変有意義でした。」など、多くの感想が寄せられました。
最後に、登壇者の皆様と記念撮影を行い、盛会のうちにイベントを締めくくりました。

ご参加頂いた皆様有難うございました。

こちらもおすすめ

pagetop