2026年2月19日(木)に「イノベーションの最前線!プレイヤーが語る社会実装の具体的な取り組み ~琉球大学発シーズと沖縄県の産学官連携エコシステム~」をハイブリッド形式にて開催いたしました。
(主催:LINK-J、共催:琉球大学、公益財団法人 沖縄科学技術振興センター、後援:沖縄県)
LINK-JのYouTubeチャンネルでアーカイブ動画を公開しています。
沖縄県はライフサイエンス分野のスタートアップ創出を目指し、様々な取り組みを行っています。
今回LINK-Jは琉球大学と初めてイベントを共催し、沖縄・琉球大学発の具体的な創薬・ヘルスケアシーズを紹介いたしました。
本イベントでは沖縄県と琉球大学の取り組み紹介に加えて、
① 革新的な拡張型心筋症治療薬の開発
② 新たなフッ素化創薬
③ AIおよびデータ活用によるヘルスケア変革の最新動向とその実装
④ 極細径・高柔軟ファイバースコープ技術を胆膵がんへ横展開する事業化戦略
以上の4点をテーマに、登壇者に技術、思い、事業化への戦略について語っていただきました。
オープニング
曽山 明彦(LINK-J 常務理事)
講演
「沖縄県におけるライフサイエンス分野の取り組みと支援」
照屋 健一 様(沖縄県企画部科学技術振興課 班長)
【講演要旨】
県内大学や企業、支援機関と連携しながら、バイオ・ライフサイエンス分野を核としたイノベーションエコシステムの構築に取り組んでいます。
沖縄バイオコミュニティの形成や産学連携による共同研究支援、インキュベーション施設の整備を通じ、研究成果を社会実装につなげる基盤が着実に整いつつあります。
今後は新たな先端医療技術支援事業も活用し、県内外の研究者・企業の皆様と連携しながら、沖縄発の産業創出をさらに進めていきたいと考えています。
「移転後の琉球大学医学部・病院キャンパスの紹介」
中西 浩一 様(琉球大学医学部長・医学研究科長、大学院医学研究科育成医学講座教授)
【講演要旨】
琉球大学医学部・病院は、令和7年に西普天間キャンパスに移転しました。
移転に伴い、地上5階・延床8,880㎡の先端医学研究センター棟を整備しています。各階にはラウンジを配置し、異分野の研究者同士の交流や情報交換等を促す設計となっています。
先端医学研究センターは、基礎研究支援部門と臨床研究支援部門からなり、亜熱帯・島嶼という地理的特性をふまえた本学部の特色ある先端医学研究を支援するため、2016年に設立されました。本センターでは、沖縄県民の検体、ヒト脂肪幹細胞等がストックされ、ヒトゲノム研究、再生医療研究等が行われ成果を上げています。また、人材育成プログラムや医工連携プロジェクトを実施しています。さらに、レンタルスペースを整備し企業との共同研究を促進するとともに、産学連携も推進しています。
研究機能を強化し、医療水準を向上させ、沖縄健康医療拠点に資するため、今後もさらなる発展を目指したいと考えています。
「病態形成過程を抑制する革新的な拡張型心筋症治療薬の開発」
黒柳 秀人 様(琉球大学 大学院医学研究科 教授)
【講演要旨】
本講演では、病態形成過程を抑制する革新的な拡張型心筋症治療薬の開発を主題として、創薬コンセプトと開発戦略を紹介いたしました。
RBM20変異により生じる病態に対し、変異特異的な治療に留まらず、多様な原因に共通し得る標的を探索した結果、間質細胞に発現する遺伝子Xを新規ターゲットとして同定いたしました。そして、遺伝子Xを抑制すると、モデル動物で形態異常が改善し、突然死が減少して寿命が延長するなどの概念実証が示されました。
現在は、遺伝子X/タンパク質Xの抑制に向けて、分泌タンパク質にも適用可能なLYTACsや、間質細胞内の情報伝達遮断を狙う解析・スクリーニング基盤(空間・単一核トランスクリプトーム、レポーター系)を整備しています。
将来的には、RBM20変異に限らない拡張型心筋症/心不全への適応拡大を見据えた開発を進められればと考えております。
現在、主に沖縄県・琉球大学からのご支援をいただきまして、ここまで開発が進んできました。この先、内閣府のファンドや、あるいは将来的にはJST、AMEDにもご支援いただけるように頑張っていきたいと思います。
「含フッ素医薬品の新しい合成法と創薬シーズ」
有光 暁 様(琉球大学 理学部 化学系・教授)
【講演要旨】
「フッ素」は、全元素の中で最も電気陰性度が大きいなど特異な性質を有する元素です。そのようなフッ素を医薬品の骨格に導入すると、代謝安定性や脂溶性が向上することが知られています。現在では、多くのフッ素化医薬品が市場に流通しており、有機フッ素化合物は創薬研究において、他のハロゲン化合物とは一線を画す重要な役割を果たしています。
一方で、その合成法には、有毒な金属試薬やフッ素化剤の使用、副生成物の制御といった課題が残されており、医薬品製造に適用可能なフッ素化反応は限られています。
有光研究室では、有機触媒に着目し、安全かつ環境負荷の低いフッ素化反応を数多く開発してきました。さらに、これらの合成法を応用することで、副生成物の生成を抑制しつつ、これまで合成が困難であったフッ素化医薬品を簡便に合成する手法の開発に取り組んでいます。加えて、新たなフッ素化創薬シーズの創出にも挑戦し、フッ素化医薬品の可能性を広げることを目指しています。
「沖縄の健康・長寿に向けたヘルスケアエコシステムの構築」
泉 晃 様(株式会社リュウェル 代表取締役社長)
【講演要旨】
本講演では、超高齢化社会における医療・介護課題を背景に、AIおよびデータ活用によるヘルスケア変革の最新動向とその実装について紹介いたしました。沖縄をフィールドとした認知症のオンライン診療・AI診断(SaMD/Non-SaMD)の取り組みをはじめ、ウェアラブルや映像・音声等のマルチモーダルデータを活用した予防・早期発見モデル、自治体・金融機関・観光業と連携した社会実装事例を取り上げました。さらに、日本RWD学会の立ち上げに代表される、地方企業としてのエコシステム形成戦略やその意義についても議論いたしました。
「腫瘍選択的蛍光標識と極細径ファイバースコープによる胆膵がん診断・治療プラットフォームの創出
―『届かなかった胆膵がんへ』― 0.8mm以下の極細径ファイバースコープが拓く新診断―」
岡 潔 様(国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構・上席研究員、株式会社OKファイバーテクノロジー・技術顧問)
【講演要旨】
胆膵がんは診断・治療ともにアンメットニーズが極めて大きく、技術革新と社会実装が強く求められる領域です。
本講演では、琉球大学発のアカデミアシーズとして、末梢肺がんで実証を進めてきた極細径・高柔軟ファイバースコープ技術を胆膵がんへ横展開する事業化戦略を紹介いたしました。本技術は、既存のファイバースコープより柔軟性に優れ、外径0.8mm以下に極細化しつつ、胆道・膵管への挿入性や操作性を考慮して胆膵がん向けに最適化しています。
さらに琉球大学が保有する腫瘍選択的ペプチドによる胆膵がんの蛍光標識技術と組み合わせることで、従来困難であった病変の高コントラスト可視化を実現し、通常観察・蛍光診断から将来的な光線力学治療(PDT)までを一体化した診断・治療プラットフォームとしての展開を目指します。肺領域で確立した技術基盤と、胆膵がん特異的分子シーズを融合することで、高付加価値医療機器としての事業化、産学連携、スタートアップによる社会実装の可能性を提示したいと考えています。
本講演が、LINK-Jにおける新たな連携・共創の起点となることを期待しています。
クロージング
加藤 貴士 様(沖縄県 東京事務所 企業誘致対策監)
ネットワーキング
講演後、ホワイエにてネットワーキングが行われました。
参加者からは「沖縄でのイノベーションが大変進んでいることが良く分かりました」「沖縄県の産学連携の熱意とレベルの高さを感じました」など、多くの感想が寄せられました。
最後に、登壇者の皆様と記念撮影を行い、盛会のうちにイベントを締めくくりました。