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イベントレポート

第24回LINK-Jネットワーキング・ナイト「患者主導の新しい創薬のあり方 ~7 SEAS PROJECTを題材に~」を開催(12/6)

12月6日、日本橋ライフサイエンスビルディングにて、第24回目となるLINK-Jネットワーキング・ナイト「患者主導の新しい創薬のあり方 ~7 SEAS PROJECTを題材に~」を開催しました。

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本イベントは、希少・難病性疾患の創薬支援活動を行っている一般社団法人こいのぼりの四名から、「7 SEAS PROJECT」の活動経緯や取り組みについてご紹介いただき、"創薬"や"ソーシャルイノベーション"の観点から、普段より業務を担当されているお二人にご講演いただきました。

【座談会】
稲葉太郎 氏(Remiges Ventures Founder & Managing Director)
渕上欣司 氏(Mitsui & Co. Global Investment, Inc. Venture Partner)
菅沼正司 氏(一般社団法人 こいのぼり 代表理事)
篠原智昭 氏(7 SEAS PROJECT 代表/こいのぼり 理事)

【講演】
鈴木忍 氏(日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 神戸医薬研究所 創薬研究アライアンス部)
田中万由 氏(READYFOR株式会社 ソーシャルインパクト事業部 リードキュレーター)

座談会:患者主導の新しい創薬に向けて

一般社団法人こいのぼりのメンバーである4名に、自己紹介および7 SEAS PROJECTを立ち上げることになった経緯についてお話頂きました。
ミトコンドリア病リー脳症のお子さんを持つ篠原氏が代表を務め、医師でありベンチャー経験もある菅沼氏が中心となって、2017年7月に発足されました。

ミトコンドリア病は、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、あるいは核内DNAに変異が起こることで発症する疾患です。ミトコンドリアの主要な役割はエネルギー(ATP)産生であり、食事で摂取した糖、脂肪、アミノ酸の分解によって得られた電子でエネルギーを作り出しています。よって、エネルギーを消費する部位で支障が発生し、脳、心臓、目などに症状が表れます。病態にもバリエーションがあり、核DNAおよびmtDNA内にそれぞれ100から200種類の変異があるといわれています。

稲葉氏と渕上氏は普段はベンチャーキャピタルという立場で、医薬品開発への投資をしていますが、「基礎研究や新薬開発が患者から遠いこと」、「他の業界ではユーザからのフィードバックを受けて開発をするのに、製薬業界ではそれが実現できていない」という懸念から、このプロジェクトに取り組まれています。

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菅沼氏が海外製品のリサーチをしていた際に、こいのぼりのメンバーから米Edison Pharmaceuticals社のEPI-743という開発品について紹介を受けたのが経緯となり、Guy Miller氏(米Edison Pharmaceuticals社の創業者)に直接会いに行き、その後、国立精神神経医療センターにて臨床研究を開始しました。また、コンパッショネート・ユースが必要な患者さんに対して、日米ともに未承認の医薬品をどうやったら使うことができるか、稲葉氏を中心に模索や調査をした結果、CROの方に協力を得ることで、橋渡しを実現されました。

米国では患者会が積極的にファンディングを実施しており、United Mitochondrial Disease Foundation(UMDF)と提携し、更に、国内でも研究者に直接アプローチすることで、新しいテーマで共同研究をスタート、ベンチャー起業による開発ステージへと進まれています。

インダストリーの視点から患者主導の創薬について

2018年4月にこいのぼりと共同研究契約を締結した、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社の鈴木氏より、製薬企業の視点からご講演いただきました。

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2万以上の病気があるとされている中で、症状や一般の臨床検査によって診断のつかない病気が多いことを挙げられ、製薬会社の使命として、「数ある疾患の中で、どの薬を優先的に作るべきか」という課題を掲げられました。
創薬の対象疾患領域について、製薬企業として利益を生み出すことを前提とせざるを得ないことが制限となる、とした一方で、「ブロックバスターだけに焦点を充てるのではなく、患者数が少数であっても薬を開発するトレンドが来ている」と述べられました。官による希少疾患のためのサポート体制(希少疾病用医薬品指定前実用化支援事業)の整備も進み、製薬企業では創薬開発においてPatient Centricityの概念が積極的に取り入れられていることを説明され、「患者とビジョンを共有し、ともに歩み続けたい」と創薬の課題を打開するビジネスモデルを示されました。

ソーシャルファンディングの視点から見た7SP

クラウドファンディング「Readyfor」の運営会社でリードキュレーターをされている田中氏より自社のサービスおよび事業についてご講演頂きました。

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クラウドファンディングとは、資金を必要としている人に対し、共感した人がインターネットを通じて出資支援をする仕組みのことで、単なる資金調達という目的だけでなく、長期的な仲間や応援者を募る、団体のPRや認知度を高める目的でも使われています。
Readyforは2011年に日本で初めてクラウドファンディングを開始し、7年間で9千件のプロジェクト(150件/月)が登録、51万人の支援者にまで成長、全体で75%の達成率をあげています。一般社団法人こいのぼりも、2か月間で目標金額を上回る支援を得ることができたとのこと。最近では特に、医療分野のプロジェクトが増加しており、「患者主導のプロジェクト」や「新しい治療法の研究」など具体例を挙げられ、社会貢献をしたいという方が多く参加していることを解説いただきました。

巻き込む力で広げていく終わりなき挑戦

パネルディスカッションでは、登壇者全員に対して、各々の意見や考え方について語っていただき、会場からの質問を受けながら、質疑応答を行いました。

稲葉氏:「こいのぼり」について、鈴木さんからご意見下さい。

鈴木氏:私は「こいのぼり」を新聞で知りました。自分でも何かできることがあるのではないか考えて、連絡させて頂きました。こいのぼりさんの形態は大変面白く、産学連携の溝を埋める役割として、スムーズに双方感のコミュニケーションを取ることのできる団体であり、画期的なビジネスモデルだと感じています。

稲葉氏:田中さんは医療系のプロジェクトを担当されているとのことですが、活動のモチベーションについて教えてください。

田中氏:今の担当のきっかけとなったのは、原因不明の高熱が3週間くらい出たことでした。私は医師ではありませんし、医療についても詳しくありませんが、仕事でも患者さんの声を聞く機会が多く、「寄付をする文化」というものをこのサイトから作っていくことで、貢献できたらと考えています。

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稲葉氏:こいのぼりの活動は10年近く継続してきましたが、活動をする上のモチベーションについていかがですか。

菅沼氏:この病気を治したいという気持ち、「仲間」と一緒に仕事をしていきたいという気持ちを持ち続けています。篠原さんが加わり、患者さんが近くにいることで、突き動かされますし、よりネットワークを作って次につなげていきたいと思っています。

稲葉氏:クラウドファンディングでも長期的な仲間をつくることができるというお話がありましたが、クラウドファンディングでの仲間というのはどういうものですか。

田中氏:支援者は過去の経験などもあり、プロジェクトに共感して資金を投じてくれるため、期間が終わった後でも、長期的につながることで主体的に仲間になってくれる方が多く居られます。一度の応援がきっかけで、続いていく関係性には濃いものがあります。

稲葉氏:「共感」という観点で、篠原さんの活動について一言お願いします。

篠原氏:こいのぼりが、通常の「創薬」と違うこととして、患者さんからメールが多く届きます。そのメッセージから共通して感じることは、私たちも病気を治したいと思っている、ということです。「薬をつくろうとしている人がいることで、生きる希望が湧いてくる」という言葉を頂きます。私は、このプロジェクトを通じて何ができるかを、患者家族の皆さんにお伝えしていきたいと考えています。

稲葉氏:「こいのぼり」では、創薬をする上での専門家だけでなく、背景の異なる人とつながっていると思うのですが、患者中心につながることについて、ご意見ください。

渕上氏:製薬会社同士は競争相手でありますが、共通の目標があると思っています。一番の目標は患者のためということです。製薬会社の中で創薬に取り組んでも、患者さんと直接会うことはできないため、目標を失いがちです。自分もかつて薬をつくりましたが、専門性の中でも垣根があり、できることとできないことがあると感じました。

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会場Q:私も何ができるのか悩み、行動に移せていません。企業の人間として、どういうところを大事にしていけばいいのかアドバイスをください。

鈴木氏:病気を治すために、どのような薬を作ることができるかといったディスカッションを通し、多くの勉強をさせてもらっています。どのようなビジネスモデルなら会社を説得できるのか、他社でも受け入れられるような魅力的なモデルはどのようなものなのか?などについて考えるのに、「まずは話す」ことから始めています。また、患者が薬を作るために積極的に活動しているということを周囲に示すことができれば、様々なバックグランドを持った人々の「やってみよう」という波を起こすことができると考えています。

会場Q:「こいのぼり」のプロジェクトをどのように今後、管理、継続されていくのか教えてください。

菅沼氏:病気の詳細について研究、議論したうえで、分野を問わず多くの人を巻き込んでいこうと考えています。一緒に研究してくれる方に会いに行き、研究費をお渡しして、成果を出してもらっています。アメリカからの支援もあります。アカデミアの出口戦略を特許化し、次の資金を入れていく。共同研究を特許としてまとめ、ライセンスとしてベンチャーを設立、ライセンスを売るといったモデルです。また、そこから出てきた知財をベースに展開も考えています。ミトコンドリアは生命の根源に関わる器官ですので、関連疾患、その他の小器官へと広げていけたらと思います。

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講演後は10階コミュニケーションラウンジにて、ネットワーキングが行われました。当日参加者は約90名の方にご参加いただき、参加者からは、「製薬会社にいると、どうしても利益先行型になり、本当に必要とされる薬が創られていない状況がある中、大変希望のある内容だと思った」、「私自身研究者として同様の悩みを抱えていいて、なにか状況を変えるための行動をとりたいのに、何もしてこなかった。もう一度自分にできることを考えてみたい。」、「熱い想いを感じ取りました。非常に感銘を受けました」などのご意見を頂きました。ご参加いただいた皆様、ご登壇頂いた皆様、誠にありがとうございました。

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