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イベントレポート

L x T bridgeライフサイエンス起業塾~アフターコロナへの挑戦~vol.1スタンフォード大学池野先生による「グローバルライフサイエンス領域における将来展望と示唆」(4/27)

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本イベントは、昨年、4回行われたL x T bridgeシリーズのweb seminarとして、4月27日(月)に、初めて行ったライフサイエンス起業塾と題したエクステンション・イベントです。

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登壇者
スタンフォード大学 Biodesign Program, Director 池野 文昭 氏
    本荘事務所代表・多摩大学MBA客員教授 本荘 修二 氏(モデレーター)
    LINK-J理事兼事務局長・東北大学客員特任教授 曽山 明彦(モデレーター)

池野先生のご紹介
池野文昭先生は、スタンフォード大学のバイオデザインプログラムというデザインシンキング手法を医療機器開発に徹底活用した、世界的に定評のあるプログラムのディレクターであり、国内外の数々のライフサイエンス関連シンポジウムにも登壇なさっています。まさに日本はもちろん世界のライフサイエンス領域を俯瞰している方です。

■モデレーター本荘氏のご紹介
モデレーターは、本荘事務所代表、多摩大学MBA客員教授、本荘修二氏とLINK-J理事兼事務局長、東北大学客員特任教授曽山明彦の二人が行いました。本荘氏は、Forbes Japanに「垣根を超える力」という連載、500 Startupsのアドバイザーを務めるなど、新事業を中心にマルチタレントな活躍をなさっています。

■~池野先生の講演~はじめに
今日まで世界で約20万人の方がコロナによって命を落とされました。そして、その家族の方、ご親戚の方、ご友人の方等、非常に悲しい思いに打ちひしがれていると思います。現状、まだこの病気が解決されている訳ではありません。我々も明日は我が身という形で捉えていくべきだと思います。そして何よりも、現時点でも多くの医療従事者の方が自己犠牲のもとに、多くの病気と戦われているということに、感謝しなければいけないと思います。ということを最初に述べさせてください

■池野先生の3月以降の生活の話
そして私は3月3日以降、週数回の買い物以外外出しておりません。自宅の徒歩圏内の体感情報以外は全てインターネットによる情報です。よって、本日の私の考えは極めて偏った狭い世界とバーチャルな世界から導かれた妄想であり、信頼性がない戯言であることを最初に断っておきます。私はこの2月26日を最後に出張しておりません。1月と2月でアメリカと日本を8往復ぐらいしておりました。全く出張がなくなったお蔭で良いことがありました。ベッドの上で寝ることができるようになった、とか、機内食がDoordashに変わった。少なくとも生活スタイルは自分にとって悲惨なことが起こっておりません。

■コロナのインパクト
2001年からアメリカに渡っておりますが、その間に今回を含めて合計4回の大事件に巻き込まれました。2001年September 11th、2008年リーマンクライシス、そして2011年東北大震災。この3つは、何月何日に起こって、どれくらい続くかということが、明確にわかりましたが、今回のコロナに関しては、何月何日に発症して起こったということが言えない、また、いつまで続くかもよく分からないという点が、不安をかき立てているところです。
その不安を象徴する数字として、今回のコロナで米国ではこの5週間に失業保険を請求した人の数が、なんと、約2600万人です。これは、リーマンクライシスの時と比べて桁違いです。コロナがどれぐらいのインパクトを与えているかということが理解できると思います

■アフターコロナの状況は?
「コロナパンデミックが明けたら、何がどうなっているのか?」私も全くわかりません。どのくらい続くのか?これによってアフターコロナの状況は変わってくると思っています。例えば科学的エビデンスとして Science 誌にこの4月14日に載ったシミュレーションデータによるとソーシャルディスタンスを保つような生活が2022年ぐらいまで続くのではないかと予測しております。ビルゲイツがワクチンを開発するということで巨額コストをつぎ込んでおります。彼自身も新しい新型コロナに対するワクチンはおそらく18ヶ月後ぐらいに完成するだろうと。そこから普及までに丸1年かかるとして30ヶ月。やはり2022年ごろまで続くのではないかと考えていたほうがいいと思います。

■現在の身の回りの状況
カリフォルニア州は、不要不急の外出は控えること、マスクをせずに外出した場合は法的規制によって罰金をとられるということ、そして1.8m必ず離れること。みなさんこれらを忠実に守っています。昼間も主要道路以外は、ほとんど車が走ってない。一旦路地に入ると人がいないという状況です。レストランは出前のみ、スーパーマーケットは時間制限や入場制限をして開店(ただし野菜は品薄)、美容室や床屋は閉店、病院は緊急対応のみ、歯医者は休診、会社はすべて自宅勤務、幼小中高大は自宅勉強を、公園は閉鎖となっています。僕も2カ月間髪の毛を切っていませんし、歯医者のクリーニングも、半年間、営業していません。

■ビデオカンファレンスについて
圧倒的に僕の生活を変えてしまったのは、毎日朝から深夜遅くまでのビデオカンファレンスの連続。人間は五感を駆使して人とコミュニケーションをとる動物だと思います。ビデオカンファレンスをやると、視覚と聴覚は何とかなりますが、それ以外の人間の五感の中の3つは、なかなか感じることができません。そしてなによりもやはり第六感ですよね。空気感、行間、雰囲気、霊感・・・あるかないかは別として、超アナログなところが全く通じないです。
今まではフェイスtoフェイスのミーティングを非常に大事にしておりましたので、丸2ヵ月、ビデオカンファレンスをしていますが、正直、僕としてはまだしっくりときません。それを考えるとゲーマーの人は凄い。ある意味、五感の中の視覚と聴覚だけであたかも人間が昇華していった感じです。僕自身アナログなので、「こういう世界も出てきているのか、世界が変わってきているな」と思います。

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■コロナの影響で良好になったこと
明らかに空の青がむちゃくちゃ綺麗です。そして、車の走行量が減り、交通渋滞がないです。そして、交通事故が減っていますね。
もう一つ。山の中に住んでいる、どう猛なマウンテンライオンが、堂々と街のど真ん中を歩いている。人間が出なくなった分、野生の動物が人間の住んでいる所を恐れずに出てきている。自然が非常に活発に動き始めているということは、逆に言うといいことかな、と思います。

さらに、もう一つ、僕はIT大臣の、ハンコ議連の会長さんが自ら、伝統的な日本のハンコ文化を見直してもいいと宣言されたということです。私もハンコを押さなくてはいけなくてFedExで1万円かけてアメリカに書類を送ってもらって、また1万円払って日本に返すというようなことで、20万円程使ったわけです。しかし、それが不要になる。

最後にもう一つ。今は、アメリカでもほとんどの患者さんは、病院、診療所には物理的に行けません。その代わり遠隔診療(テレメディスン)が当たり前のように行われています。スタンフォード病院でもこのコロナ危機の間は、基本、遠隔診療100%です。先週、スタンフォードの経営者が、テレメディスンに関して、コロナ以前の状態には、戻れない、すべてではないが、使用する場面を選べば非常に効率が良いと言っていました。もちろん、米国でも最初から最後までのテレメディスンは容認しておりませんが、不要不急の場合に限っては、非常に効果があるという結論を出していました。

■コロナによる不具合~肥満、生活習慣病、虫歯など身体に関して
明らかに、動いてないですね。万歩計を着けているとわかりますが、コロナ以前は1日1万歩歩くのを運動の最低ラインにしていましたが、今300歩くらいしか歩いてないです。そもそも外に出てない。体重は明らかに増えています。この傾向は、全米ほとんどの人が感じているだと思います。日米の比較表で「肥満」を見ると、アメリカ人は BMI 25以上が全人口の男62.6%女72.1%です。これがコロナでさらに増え、間違いなく肥満が増えます。そして、糖尿病、高血糖、高血圧そして高脂血症、生活習慣病が増えます。

そして、失業すると医療保険に入れなくなります。コロナ前の段階で医療保険を持ってないアメリカ人は10%ですが、おそらくコロナ後には、20~30%ぐらいの無保険者が出てきます。無保険者になるととんでもない金額を請求されるので病院にかかることができません。「病気が病気を生む」状況になっていく可能性があります。先ほど言いました生活習慣病は、ある程度進行すると心筋梗塞、心不全、脳梗塞、脳出血に進行する。そして命を落とす、寝たきりになる、または透析になってしまう。そういうようなことが潜在的に進行しつつあると思いますもう一つ。朝から晩までモニターを見ていると、目が疲れます。眼科、眼鏡屋さんが閉まっているので、なかなか眼鏡を新調できず、それが、余計に目の疲れを助長します。そして、歯医者も閉まっているので虫歯や、歯肉炎が増えているのではないかと予測します。歯の疾患は動脈硬化の一つの原因というエビデンスがありますので、歯を健康に保つのは、特に高齢者には、重要なことですね。

さらにもう一つ、病院が一般的な診療をすべて中止しているので、例えばがんの患者さんで手術を予定した人たちが、手術を受けられないでいる可能性があるということです。
がんが治るわけではないので、徐々に進行して、このコロナ後、普段の病院に戻った時に2カ月前よりも進行してしまっている可能性があります。コロナ以外の病気が、この間治療を受けられないのは、問題となっています。それと同時に、病院の収入が間違いなく減っています。昨日の新聞では、スタンフォードは、レイオフはしないと言って下さったのですが、給料は間違いなくカットする、ということです。病院の収入がかなり減っているため当然ですが、診療、手術あらゆる意味であの病院の経営というものが非常に厳しいような状況になっています。あと、健康診断を受けたくても受けられないということ。

その間に不幸にも、もし、がんが発症し、来年まで持ち越して「1年前診に来ていれば助かっていたのに」って言うような人が出てくる可能性は、否定出来ません。そして、容易に想像できると思いますが、アルコールの消費量が増えている。アルコール中毒、依存症の患者さんが増えている可能性は否定できません。あと、さらに、ストレスによる鬱ですね。親戚がコロナで亡くなってしまう、というだけではなく、普段慣れないような状況下で生活していると、精神的に弱る方が増えます。コロナの最中だけでなく、コロナ後、精神科のカウンセリングがものすごく増えると予想している方もいます。お年寄りは家の中にずっといるとすぐ筋力が衰えてしまいます。外に出てないものですからやはり杖をつく方が増えてきていますね。そして、コロナ後に歩き始めたら転んで骨を折ってしまって、寝たきりになってしまうといったことが増えてくるんじゃないかなというふうに予想されます。これは、特に高齢化率が高い日本だと、非常に深刻な問題です。あと、1人暮らしの高齢者が,コミュニティーと関わる機会が減少し、認知症の進行、鬱状態、後、会話をしないことによる口の周りの筋肉の低下により誤嚥など、人間的な交流がなくなることによる弊害は、高齢者で顕著にでてくると思います。

■コロナによる不具合~医療供給~
PPE(医療従事者を保護するマスク、ガウン等)は、日本では、生産率が元々低く、ほとんどが安い中国産に依存しており、今、国内で不足しています。また、日本国内で生産して来なかったワクチン、そしていわゆる今回必要な侵襲的な人工呼吸器も9割以上が輸入に頼っています。医療従事者は、PPE、ワクチン、人工呼吸器がない、または、ほとんどない状況で今、コロナに立ち向かわなくてはならない。このあたりも、コロナ後に、いろんなディスカッションが出てくると思います。

■未来を予測~世界が繋がる
「未来を予測する最善の方法は未来を自ら作ることである」ということと「現状の課題分析そして未来にどんな未来をつくりたいのか」という、この両方の視点に基づいてやっていくことが重要だと思います。私たちは、今回、コロナによって世界が繋がるということを理解できたと思います。繋がるだけではなく、それによって問題を共有し、未来に向かって解決策を考えて行動に移していく、そのチャンスを神様が与えてくれたと思っております。(講演終わり)

ーーモデレーターとのディスカッションーー

■マクロ的な話 必要な医療関係の機器や物資などを調達しにくいこと
池野 中国が今回、PPEを生産して世界に提供していた。薄利多売なものなので高付加価値のものを作るより、高付加価値のものは先進国で作って、そうでない医療部材を新興国でつくるっていう縮図が成立していたわけです。そこに目を付けた米国は、中国でのPPEの生産を自国に引き上げた。自国内で生産し、豊富な物量を生かして、生産が足りない国々に輸出して稼ぐというような戦略に持ってくのではないかと思います。

■国際的な話~国々の繋がりは?
池野 実際に肩を触れ合って会うということはしばらくできないと思います。だからといって、バーチャルな付き合いだけで一度も会ったことがない人と、例えば50億円の契約を結べるかといったら、僕はちょっとビビってできないと思うんですよね。それを考えると、まずは自国のことを考えていると思うんです。自国を大切にしたい、助けたい。それで余裕ができたらよその国を助ける。やはり日本もそうです。少なくともここ2~3年は、なかなか他国のところまでは考えられないんじゃないかなと思っています

■コロナ後:「国と地域」について問題意識~連携・協力
曽山 ここ数週間で日本でもいろんな動きがありました。国が非常事態宣言を出したり、自治体が現場で直接、リーダーシップをとっていたり。やはり現場をわかっている人の方が早く危機対応の決定ができます。そしてPCR検査の件では、和歌山県だけでは能力が足りず、大阪府に協力を要請し、大阪は受けた、というように、連携が進んでいます。この様に、地方の時代がやってくると思いますし、これは国レベルにおいても、池野先生がお話ししたように、まずは自国の事をやらなくてはいけない。それも限界があるから、やはりいかに連携するかが大事だと思います。例えば日本で言えば、非常にクオリティの高い医療機器を作るスキルはあるので、国が投資をして、他国の分まで作る。それを輸出して、協力し合うようなスコープまで広げていかないと勝てないと思います。

池野 例えば、ワクチンの製造、治験等に関してサイエンティスト間ではすでに協力が始まっております。医療機器もそうですし、そういうような協力は、綿密になっていると思います。ただし国のトップとしてはまずは自国民を大切にするっていうのは当然のことだと思いますので、そこを担保するべきだと僕が個人的に思っております。
現状を見ると、やはり医療崩壊は刻々と、起こっていると思います。まずはそこをなんとかして、そのノウハウを、困っている国に提供するのが日本の真骨頂かなという感じがします。

■コロナ後:人の活動・スタイルの変化
池野 昔、遠距離恋愛をしていた際、電話が唯一の手段でした。アナログ世代の私たちには、会っている時間が非常に大切で、全精力を傾けて自分の思いを伝えたい、信頼を得たいと思っていた。もちろんズーム会議で100%お互いに、惹かれあって、一度も会わずに結婚したという人達が出てくれば、それは大したものだ、と思いますが。それでも、実際に会っていないと、どうしても「疑心暗鬼」になってしまう。そこをいかに「信頼」に置き換えていけるか。それには、何らかの「テクノロジーを使う」ことです。そうすると、未来は、毎日会わなくてもいいが、会っている時は、いかに自分を信頼してもらえるか、という努力します、というような感じになる。ビジネススタイルも同じようになっていくんじゃないかなと思っています

■リモートコミュニケーションとリアルコミュニケーション
本荘 リモートで、どこまで教えられるか?リアルで教える時にはどういう意味あることができるのか?コミュニケーションの仕方そのものが何か新しいスタイルに変わるという気がしています

池野 そうですね。特に、レクチャー形式で、先生が階段教室で教えるっていうのはリモートでもやれると思うし、その方がいいように思っています。ただしチームでやる作業は、まさに先生と生徒が混じり合いながら行うものだから、リモートは未だ難しい。ただ、そういうようなツールを考える人が絶対に出てくるし、そこにはビジネスチャンスがあると思います。

曽山 私も、グループワークを、リモートでやる前は、できるのかな、と思ったのですが、実際やってみると、意外とアウトプットが良かったりするんです。なぜか? 4~5人でグループワークをリアルでやると、声の大きい人等に引っ張られるんですけれども、リモートでやると、まずみんなで3分間考えよう、と言って書き出し、それをウェブ上で統合する。そうすると、ちょっと発言が遅い人の声も取り入れられて逆に良くなることもあります。リモートとリアルの、それぞれの良さ悪さがあるので、いかにうまくそれぞれの良さを組み合わせるかというのは知恵の出しどころかと思います

■アフターコロナで医療関係のイベントはどう変わる?
曽山 ウェブの良さは、イベント会場(例えば日本橋)に来られない多くの方々に参加いただけるということ。そして、Sli.doやチャットを使ってライブでご意見やご感想をいただけることです。でも、池野先生が仰っていたような50億円のビジネスは、やはり会わなきゃいけない。そこでどういう仕掛けを作ってやっていくか、が大切です。今日みたいに池野先生は距離の壁を超え、日本にいなくても十分コミュニケーションが成り立つし、逆に、そうであるからこそ、シリコンバレーに人々や企業が集積してコンテクストベース、フェイスtoフェイスのコミュニケーションをより重視するみたいな。表裏一体があるんでそこをいかにうまく組み合わせて作っていくか。

■距離を超える、テクノロジー
池野 時差はあるんですけども、一瞬で世界と繋がっているわけです。ほとんど違和感なく話ができる。やはりこれはテクノロジーの強みですね。僕も、物理的に参加しなくても日本の学会が発信するウェビナーディスカッションを毎晩のように楽しんでいます。とても情報量が増えて、逆にコロナで良かったことの一つではありますね。そして、「触覚や、空気、距離感がわかるズームカンファ」みたいなものができれば面白いなあと思っています。Necessity is the mother of invention(必要は発明の母)といいますが、誰しもがテレカンファレンスによって、これは足りないなっていうのをどうやって具現化して、ニーズベースでどのテクノロジーが必要なのか、を考えるのが重要になってくる。そう思っていると、必ず誰か考えています。与えられたものを賢く使うのも重要ですけども、「ないんだったら自分で作っていく」。そういうような考えで活動し、行動している人はこの周辺にいっぱいいますね。

■ヘルスケアの今後
池野 基本的にコロナウイルスが起ころうが起こるまいがいわゆる生活習慣病、糖尿病、高脂血症、心筋梗塞、脳梗塞、心不全、動脈硬化といった病気が、コロナが起こったから無くなったっていうことは絶対ない。むしろ患者数はものすごく増えているはずなんです。同様にコロナがあるから、がん患者がいなくなったってことは絶対なくて、手術ができない、早期発見ができない。間違いなく疾患を持つ患者さんは今後増えていきます。だから、医療関係に従事している産業の方、研究者そして医療従事者というのは、これからもっと社会に必要な職業になってくるのは間違いありませんし、そして医療関連の研究開発という分野もまた、非常にリスペクトされるべきだと思います。そして同時に、今度は「いかに病気にさせないか」っていうところ、または「いかに入院している時間を短くして、家で安全に安心に医療を受けることができるようにするか」ということに、シフトしていくと思います。

もちろん、コロナの前から、例えばイリノイ州のバーチャルホスピタルのように、退院患者をなるべく家でモニターして、異変が起こったらナースが家に行ってみるといった、「在宅で入院管理をする」試験的な病院はあります。医療っていうのはアーリーアダプターがいなくて、ほとんどが命に関わることですのでレイトマジョリティなんですよね、それが今回、コロナでそんなことは言っていられない状況になってきました。先ほどNecessity is the mother of invention(必要は発明の母)と言いましたが、mother of implementation、つまり以前、社会が拒否することによって浸透しなかった発明が、今回のコロナのパンデミックによって、「必要」だから、「使わざるを得ない」から、社会に普及していく。まさに遠隔診療はその一つの例だし、患者さんを病気にさせないための在宅での生活指導やバイタル管理、運動の指導、お年寄りを寝たきりにしないための筋力強化または管理などもです。当然のようになかなか普及せず、ビジネスにならなかったこれらが、このコロナを契機に一気に広がるというふうに思っています。

これまでも、様々なヘルスウエルネス系ベンチャーがありましたけど、その全てがマネタイズするのに苦戦しておりました。しかし、今回、コロナで、まさにそれらのデバイスがあるからこそ、在宅で患者さんの健康状態を保つことができる、また病気を管理できる、ということに、保険会社や医者も含め、多くが気づきました。そういう意味で一つのパラダイムシフトが起こる瞬間なのかなと感じております

<締めくくり 池野先生>
池野 私は、家にずっといてふと気づく時、たった一人なんじゃないかと思う時がありました。ただし今回このように、目に見えない形で皆さんと繋がっていることができるということを確信しました。
そして、コロナが、再来週ぐらいに落ち着いてくれればいいんですが、一応、最悪の事態を考えて2022年まで続くと思うと、留まっていてはダメだと思うんです。私たちは、少なくともテレカンファレンスシステムなどのテクノロジーを使って繋がることができる訳ですので。世界で繋がって、みんなでこの世の中を前向きに良くしていこう、と思えばできるはずです。

<締めくくり 本荘氏>
本荘 コロナ禍は、大きなチャレンジというのは衆目の一致するところです。誰か天才が現れて解決してくれるわけではない。ビルゲイツ氏が私財を投げ打ってワクチン開発をしていますが、それも一つのソリューションに過ぎない。いまこそ、みんなの英知を重ね合わせることで、次なる知恵が出て、という、循環を何回も繰り返していかないと結果は出ないと思います。このイベントは、ご覧いただいている方たちのアイディアもいただきたいです。こうしたらという提案や、自分はこういう貢献もできるという人がいたら手を挙げてください。

<最後の締めくくり 曽山より>
曽山 このイベントは、今後もシリーズ化してやっていきたいと思っています。池野先生に、米国のリアルな実態も踏まえつつ、グローバルな視点から俯瞰していただき、メッセージやアドバイスを頂戴したいと思っております。

それではこれで本セミナーを終了させていただきます。ありがとうございました。

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