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インタビュー・コラム

医師とエンジニアで起業。AIによる医療サービス「Dr.Ubie」「AI問診Ubie」

アクセラレーションプログラム「ZENTECH DOJO Nihonbashi」の第三期に入門され、活躍を続けているUbie(ユビー)の創業者お二人と、プログラムの主催者である株式会社インディージャパンの代表取締役テクニカルディレクターであり、LINK-Jサポーターの津田様にお話しを伺いました。

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Ubie株式会社
阿部 吉倫 様(共同代表取締役 医師)
久保 恒太 様(共同代表取締役 エンジニア)

株式会社インディージャパン
津田 真吾 様(代表取締役テクニカルディレクター)

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Ubie社は、個人向けサービスとして、症状から病気を推測するアプリ「Dr.Ubie」、また、病院で記入する紙の問診票をデジタル化しAIで効率化するサービス「AI問診Ubie」を開発、提供しています。

五万件以上の文献からデータ抽出

―――「Dr.Ubie」を開発された経緯をお伺いさせてください。

久保 大学院のときに、症状から病気を推察する一種の思考シミュレーションのようなものを研究テーマにしようとしたのですが、教授に断られたので、自分でプロトタイプをつくりはじめたことがきっかけです。高校が一緒だった阿部に頼んでテキストデータを作ってもらうことで、アルゴリズムをどんどん開発していきました。もともとビジネスをやりたいという気持ちもあって、ヘルスケアが日本でも唯一伸びるマーケットだなと思って、やろうと決めました。

―――ヘルスケアのマーケットに気づいたきっかけみたいなものはありましたか

久保 医療費を自分で払うようになって、風邪で2500円もかかったことがあって、驚きましたね。それだけ払って、ドラッグストアと同じ薬しかもらえないなんて、と感じたのがきっかけでビジネスモデルを発想していきました。

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左:久保 恒太 氏、右:阿部吉倫 氏

―――阿部さんは久保さんから声を掛けられたとき、どう思いましたか。

阿部 彼から「医師の思考をシュミレーションできないか?」と訊かれたとき、質問に答えていくと解が絞られていくというシミュレーターが既にあったので、医師の臨床推論においても適用できるだろう、と思ったので、一緒に製作し始めました。最初は質問の方向性によって予想外な疾患に分類されることもあったのですが、試行錯誤の末、良いアルゴリズムを見つけ、できると確信しました。

―――シミュレーションのもとにしているテキストデータというのはどのようなものですか。

阿部 従来、いろんなアプローチがありました。IBM社が電子カルテのテキストデータを使って、病気との相関を調べたことがあったのですが、うまくいかなかった。カルテをきちんと書く人と書かない人がいるので、データが不揃いになっている。そういうデータから確率を推測することは難しい。そこで、研究でまとまっている論文や書籍などから、疾患と症状の確率のデータを使うことにしました。4年間に及ぶ地道な作業の蓄積で、一個一個論文を読んで、これは使える、使えなかったと砂金拾いみたいなことをしました。書籍で10冊程度、論文だと5万件ほど読み、データを抽出していきました。

―――「Dr.Ubie」で予測された結果は、どのように使えばよいのでしょうか。

久保 病院に行くかどうかの判断というところで使っていただけたらと考えています。今後、アプリのユーザーが増えて普及が進むことで、データを病院に予め送っておくことで、医師がデータを持った状態で診察をスタートできますので、患者にとっても医師にとっても大きなメリットになります。

MISをきっかけに入門。国内外への普及を目指す。

―――ZENTECH DOJOに入門された経緯をお伺いします。

久保 今年の2月頃、津田さんが出られていたイベントがありまして。

津田 MIS(第4回日本橋Medical Innovators Summit, 1/24開催)。僕が登壇していた時に、目の前に一番いいところに座っていました。

久保 そのころ資金調達など悩んでいた頃で、津田さんがシードアクセラレーションされているということだったので登壇が終わった後に声をかけさせていただきました。こんな荒削りな状態でも面白そうだと思って下さったみたいで、第3期に入門しました。

―――入門前と入門後で、変化したこと、成果などを教えてください。

久保 最初はB to Cだけで展開しようとしていたのですが、ユーザーを急には増やせないし、差別化もしなければいけないということで、津田さんから「病院に導入しては?」、とアドバイスをいただきました。病院からデータを取得する仕組みがあることは差別化につながると考えて、阿部が診察する上で課題に思っていたことに対してアイデアを出し、「AI問診Ubie」が生まれました。また、津田さんにはビジネスを進めるうえで必要となってくる基本的なこと、例えば特許申請や秘密保持契約などの面についても助けていただいています。

―――「AI問診Ubie」の特長はどんなところにありますか。

阿部 例えば、外来の診察で、腹痛と吐き気がありますという患者さんが来た時に、追加で質問する内容は、あまり変わらなかったりするんですね。症状が決まってしまえば、聞くことがある程度決まるので、その解答次第で病気の確率が変わっていくわけです。そのアルゴリズムは「Dr.Ubie」を使い、「AI問診Ubie」で取ったデータを電子カルテに送ることで、一から入力する手間が省けるので、より患者さんに集中して身体診察や検査、手術の部分に注力できるようになるわけです。

―――AI問診Ubieは、電子カルテと連動しているんですか。

阿部 ベンダーさんによりますが、クラウド型の電子カルテを使用している場合は、ブラウザで閲覧できるようになっています。電子カルテのメニューの一環としてボタンの埋め込んでいただいているケースもあります。

―――病院で実際に使っていただいた感触、今後の課題などはありますか。

阿部 現在12か所のクリニックでお使いいただいています。現在は実証実験をするために大きな病院を探しています。患者側も全く問題なく運用ができ、医者側も非常に有用な、密な情報を得られる状態をつくり、業務効率の、効率化比率の検証をしたいと考えています。

 実際、使っていただいている医師からは、「病気の確率が出てくるのは便利」、「一人で診察しているときに相談相手として有効」、などの感想をいただいています。これから突拍子もない入力にも対応していきたいと考えています。患者さんはよくファジー、例えば「顔の周りが"もあもあ"する」のような、ことを伝えてきます。これは医者語に変換すると"めまい"なのですが、これらを全てカバーするようなものを作っていこうと思います。

―――津田様から見たお二人の印象を教えてください。

津田 優れた人の勘と経験に基づいた考え方を、誰の手にも届くようなアプリケーションでやろうとしている。かつ、それをやるために地道なデータの蓄積をしている。これは何か関わらせてもらいたいと思って声を掛けて、非常に良い経験をさせてもらっているなと思っています。

表面的には2人がすごく優秀な、東大卒のM3から来たエンジニアと東大病院のお医者さんみたいな部分がハイライトされるとは思うんですけれども、本当に勝ち負けを決めるのは、それまでの想いやこれまでの蓄積だと思うので、応援したいなという気持ちでいっぱいですね。

コンテストで勝つということだけでなく、ビジネス面、世界を変えるようなものを一緒に支援していきたいと思っています。

―――今後の展望についてお聞かせください。

久保 国内でサービスを固め、早期に国外へ進出していくことを視野に入れています。

阿部 海外の同じようなサービスとの差別化については、精度や使いやすさを高めるといったところで決着がつくと思っています。我々の利点は圧倒的に使いやすいユーザーインターフェイスだと思っています。ウィナーテークスオールになるでしょうし、2位じゃ意味がないと思っています。

津田 直近では海外展開です。こういったデータや学習結果、アルゴリズムが役に立つのは、国内だけじゃないので、能動的に自分たちが動いて広げていければと考えています。

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久保様.png 久保 恒太 氏   Ubie株式会社 共同代表取締役 エンジニア
東京大学大学院工学系研究科卒。エムスリー株式会社で約3年、医師Q&AサービスなどのBtoCヘルスケア領域の ソフトウェア開発および、Webマーケティングに従事。 学生時代にはビジネスコンテストでの優勝経験の他、インターンとして医療ベンチャー企業、医療機器開発企業でのソフトウェア開発を経験。 2013年東大在籍時に医師の病名予測をシミュレーションするソフトウェア及びアルゴリズムの研究/開発を開始。

阿部様.png 阿部 吉倫 氏   Ubie株式会社 共同代表取締役 医師
東京大学医学部医学科卒。 東京大学医学部付属病院、健康長寿医療センターで初期研修を修了。 最先端医療と高齢者医療の最前線を経験。血便を放置し48歳でこの世を去った患者との出会いをきっかけに、 医療に貢献する方法は病院で患者を治療する事に限らないと確信し、未病検出の為の人工知能の開発に傾倒。 医師として勤務すると同時に、確率・統計モデルや機械学習の知識を活かして、病名予測アルゴリズムを開発。

津田様.png 津田 真吾 氏   株式会社インディージャパン 代表取締役テクニカルディレクター
早稲田大学理工学部卒業。日本アイ・ビー・エム株式会社でハードディスクの研究開発に関与。世界最小のマイクロドライブ、廉価型サーバーHDDなど革新的なプロジェクトを数多く手がけ、技術的にも多くの特許を取得。保有特許は17件。R&Dのコンサルティング企業を経て、2011年に株式会社INDEE Japanを設立。シードアクセラレーターZENTECH DOJO Nihonbashi ならびに企業向け新規事業立ち上げ支援を手がける。現在は同社代表取締役テクニカルディレクター。

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