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インタビュー・コラム

アカデミア発ライフサイエンスイノベーター発掘プログラム2023 大阪大学推薦 Cool Flash

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メドテック領域で事業化を検討中の研究者/または事業化したばかりの研究者を支援するプログラム「アカデミア発ライフサイエンスイノベーター発掘プログラム」。その締め括りを飾る成果発表会が、2024年3月26日、日本橋ライフサイエンスビルディング大会議室で開催されました。発表会場には、産学を代表する関係者が多数来場し、独創性あふれる成果報告(ピッチ)に耳を傾けました。そこで今回は、本プログラムに挑戦した研究者チームの皆様に、いま事業化に挑戦している研究内容、本プログラムに参加してみた感想、将来の展望などについてお聞きしました。 ※ピッチコンテスト全体についてお知りになりたい方はこちら

シリーズ: アカデミア発ライフサイエンスイノベーター発掘プログラム2023 Demo Day出場チームに話を聞く

   東北大学推薦 アイラト株式会社 
   ・大阪大学推薦 大阪大学 Cool Flash
   ・名古屋大学MIU推薦 名古屋大学 人間拡張・手の外科学
   ・名古屋大学MIU推薦 株式会社BeLiebe
   ・慶應義塾大学推薦 株式会社Gifts
   ・国立がん研究センター東病院推薦 PALATOROID
(登壇順)

第3回は、大阪大学が推薦する「Cool Flash」を紹介します。

金田恵理さん(代表者)

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――挑戦中の事業内容について教えてください。

金田 ホットフラッシュ症状(予期できない突然ののぼせ)を軽減する医療デバイスの開発に挑戦しています。ホットフラッシュとは、エストロゲン(女性ホルモン)の減少に伴う各種症状であり、更年期やがん治療の際に実施されることのあるホルモン療法の過程などでよく見られます。主な症状として、38度に迫るほてり・大量発汗・動悸・夜間不眠が挙げられます。軽症のケースを含めると、閉経女性の約6割が経験している症状ですが、発症後数分間で治まるため、軽視されがちです。実際には、多汗など外見上の問題や不眠などを理由に、就労を諦めざるを得なくなる女性も少なくありません。

ホットフラッシュは、女性ホルモンの不足が引き金となり、脳内の体温調整を司る機能が異常をきたし、僅かな体温変化にも過剰反応するために生じる現象です。その結果、熱を逃すために血管が拡張する反応が起こり、ほてり・大量発汗などの症状が出現します。従来のホットフラッシュ治療法の一つは、エストロゲンを薬剤で補充する「ホルモン補充療法」が中心です。これに対して、私が開発中のデバイスは、ニューロモジュレーション技術の応用によってホットフラッシュの発症機序に介入することで、症状軽減・発症抑制を目指すものです。体の一部を冷やすことにより症状を緩和する対症療法的なデバイスでないことも大きな特徴となると思います。

――事業化を考えたきっかけについて

金田  もともと私は獣医師として働いていましたが、飼い猫の心臓病をきっかけに、再生医療研究に挑戦してみたいと考えるようになりました。そこで、大阪大学大学院医学系研究科の心臓血管外科学に入学したのが、医療機器開発に出会ったきっかけです。弊科は、医療機器イノベーションを牽引する人材育成プログラム「ジャパンバイオデザインプログラム」に注力しており、そこで更年期女性のニーズに気付かされたことがプロジェクトの始まりでした。私の母にも協力してもらい、まず10名ほどの女性に取材をしました。そこで更年期女性がもつ大きなペインを知り、とても衝撃が走りました。患者団体さまへのインタビューも重ね、自分ごととして、新たな解決方法を見出す必要があると強く感じるに至りました。

――起業についてはどのように考えていますか?

金田  既に女性獣医師として起業をしており、起業自体を特別なこととは捉えていません。出産や子育てといった理由で、一旦現場を離れた女性獣医師が職場復帰を目指す際の能力活用の場となることを理念の一つとして起業しました。会社運営を経験する過程で、アイデアが行き詰った時に頭をひねるのが「とても面白い!」と感じており、今は「経営者として自身を成長させていきたい」というモチベーションがあります。「クールフラッシュ」というプロジェクト名は、「ホットフラッシュ」の逆の意味です。本プロジェクトの起業については、概念実証後にタイミングを見て決断したいと考えています。

――現在の課題について教えてください。

金田  最近、アメリカで閉経に伴う血管運動神経症状(ホットフラッシュ)の治療薬の販売が開始され、効果が期待されています。アメリカでインタビューをさせて頂いた女性の中には、薬を飲むことで治療したくないという方々もいらっしゃったため,デバイスが広まる市場が必ずあると考えています。ただ、医薬品との棲み分けについてはより一層現実的に考えていく必要があると思っています。 

研究費については、これまでは助成制度などを利用して調達してきましたが、起業後も継続して事業資金を確保するために、どのように確保していくのが良いか検討しています。学内外のメンターの皆様へはもちろんですが、姉が個人事業主なので、彼女にも意見を求めることがよくあります。正解はひとつではないので、どの道を選択するにせよ自分なりの根拠を持ち、自信をもって進めたいですね。

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――イノベーター発掘プログラムについて、参加された感想を教えてください。

金田  本プログラムには、大阪大学の八木雅和先生のご紹介で参加しました。期間中に3回のメンタリングを実施頂きましたが、初回のAlivas社の田島知幸先生とのメンタリングは、今後の開発方針決定に当たり大変参考になりました。国立がん研究センターの先生方のご意見を伺う機会もあり、ニーズの確からしさに確信を持てたことも非常に大きかったです。

北米のヘルスケア業界に詳しい、Kicker Ventures社の清峰正志さんともお話をする機会があり、普段は聞けないお話や率直なご意見も拝聴できました。開発中のデバイスは、医療機器としての認証を受けるパターンと、ヘルスケアテック製品としての商品化の両方を検討中ですが、まずは後者を優先したいと考えており、日本より市場規模が大きい北米での展開も検討しています。そのため、自らの考えを整理する上で、清峰さんからは大変貴重なご意見を頂けたと考えています。今後も外部の有識者の皆様より、メンタリングして頂ける機会があると嬉しいです。

――成果発表会はいかがでしたか。

金田  ピッチの経験はありましたが、今回のようにライフサイエンス領域に特化した発表会へ参加したことは、これまでありませんでした。他の皆様の発表からは、多くを学ばせて頂きました。

――今後の展望について教えてください。

金田  ホットフラッシュに悩む女性は多く、「汗が酷いときは脇下にタオルを挟まなければ、とてもじゃないが通勤できない」、「のぼせが酷くてあれこれ対処法を試したが、一向に改善しない」といった話も耳にします。また、乳がん・婦人科がん・前立腺がん患者さんの中にもホルモン療法の副作用としてのホットフラッシュ経験者も多く、患者さんはがん本来の苦痛だけではなく、ホットフラッシュの辛さにも耐えています。社会復帰を妨げられているケースも少なくないかもしれません。これだけ生活の質に影響する症状であるにも関わらず、さまざまな要因から効果的な治療を受けられていない方もいらっしゃいます。今後は機器開発と並行して「ホットフラッシュは治療可能である」ことを啓発する活動も重要な使命になると考えています。

最近はライフサイエンス分野でも、フェムテック(女性の健康問題の解決に貢献する技術)領域が注目されており、また女性側の意識も変化して、自身の健康問題をより大切に考えるようになりました。将来的には、例えば更年期症状に悩む女性からの健康相談に対して、生活上の助言と実際の治療手段をセットで提案できれば、さらに有益かつ効果的なサービスが提供可能になると考えています。しばらくは、試作と実証実験の繰り返しの日々が続きそうですが、事業化に向けて引き続き開発を進めていきます。

出場チーム紹介 Cool Flash

Cool Flashは、獣医師の金田恵理さんの事業化チームです。女性ホルモンの減少に起因するホットフラッシュ(予期せぬ急なのぼせ)を軽減するデバイスの開発に挑戦しています。まだ起業前ですが、年内にはヒトによる実証実験を開始する予定で、これに成功すれば正式に事業化に向けて舵を切る予定です。

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