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イベントレポート

AI×Life Scienceシンポジウムを開催(5/17)

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LINK-J主催の「AI×LifeScience」シンポジウムを、5月17日(水)の午後、日本橋三井ホールにて開催いたしました。

当日は300名近い皆様にご来場いただき、盛況なシンポジウムとなりました。AI技術がライフサイエンスの分野に今後どう関わっていくのか、実際の医療現場での活用事例や現状の課題など、登壇者からは多岐に渡る報告がありました。

開会にあたり、慶應義塾大学医学部長でもありLINK-Jの代表を務める岡野栄之理事長から挨拶をさせていただき、その中でご来場者の皆様には、LINK-Jのプロモーションムービーをご覧いただきました。

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写真:岡野 栄之 氏(LINK-J理事長/慶應義塾大学 医学部長)

次に、来賓挨拶では日本学術振興会 理事長および人工知能技術戦略会議 議長の安西祐一郎氏から、大学と企業だけでなく、地域を巻き込んだベンチャー支援が大切であるとのメッセージをいただき、AI技術を取り込んだ研究開発の進展および産業界へエールが送られました。

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写真:安西 祐一郎 氏(日本学術振興会 理事長/人工知能技術戦略会議 議長)

基調講演では、「AIを活用したライフサイエンス・イノベーション」というテーマで、岡野栄之LINK-J
理事長を座長とし、3名の先生方にご講演いただきました。

はじめに、産業技術総合研究所 人工知能研究センターの辻井潤一センター長より、社会問題を解決するためのAI、人間と協力できる人工知能のあり方について述べられ、特に生命科学の分野では、実験データと知識をうまく融合することや、ロボットが実験を検証することができるようになったとご報告いただきました。また、医療分野においても、医師とより協力して次のステップにつなげることが大切であると述べられました。

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写真:辻井 潤一 氏(産業技術総合研究所 人工知能研究センター 研究センター長/東京大学 名誉教授/マンチェスター大学 教授)

次に、2016年の4月より日本橋一丁目三井ビルに拠点を設置された理化学研究所AIP(革新知能統合研究)センターの杉山将センター長から、AIPセンターでの取り組みについて紹介があり、機械学習における低コストかつ高精度の手法を研究し、応用研究はパートナーと提携しながら、実用化と新産業の創出へとつなげたいと話されました。

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写真:杉山 将 氏(理化学研究所 革新知能統合研究センター センター長/東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻 教授)

最後に、システム・バイオロジー研究機構(SBI)の北野宏明会長は、2050年までにAIが医学・生理学ノーベル賞を取るというグランド・チャレンジを提案したいと会場を沸かせ、研究者が人間かどうかは重要でなくなる時代が来るかもしれないと述べられました。医療データのイノベーションへつなげるためのプラットフォームGARUDAの開発では人工知能システムの統合、さらにはロボティクス分野にも取り組んでいくと強調されました。

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写真:北野 宏明 氏(システム・バイオロジー研究機構 会長(LINK-Jサポーター))

講演では、前半を「AIの医療での実践」、後半を「AIとライフサイエンスの今後の展望」というテーマで、東京大学政策ビジョン研究センターの渡部俊也教授を座長として各先生方にご講演いただきました。

前半の「AIの医療での実践」については、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターの山口類准教授が、Precision Medicineへの注目が高まってきている中で、大量データ解析やアルゴリズムの開発、膨大な論文データの解析に取り組み、ゲノムシークエンスデータを医療に活かしていきたいと述べられました。Watson for Genomicsを利用した研究では、疾患における変異遺伝子と化合物との紐づけなど、AIが非常に有用な道具であることが報告されました。

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写真:山口 類 氏(東京大学医科学研究所 ヒトゲノム解析センター DNA情報分析分野 准教授)

また、慶應義塾大学 慶應メディカルAIセンター(K-MAIC)の洪繁准教授は、健康長寿社会を目指すことを掲げられ、医学部の中で診療データを活用し、診断や治療に役立つような知見を見つけていきたいと話されました。医療へのAI活用例として、眼底画像の解析例を示され、ビッグデータでなくとも医療での実用的なレベルに達していると解説されました。

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写真:洪 繁 氏(慶應義塾大学 慶應メディカルAIセンター(K-MAIC)/慶應義塾大学医学部 坂口記念システム医学講座 准教授)

そして、ディープラーニングをIoTへ応用している企業であるPFN America社(Preferred Networks America, Inc)の大田信行最高執行責任者は、バイオにはAIが必須だとし、国立がん研究センターとの共同研究で血液1滴でのがん診断を目指す研究に取り組んでいることを発表されました。一方で、人材不足の問題やディープラーニングによる解析の過程がブラックボックスになることで薬事法上の規制にかかる恐れがあるといった課題も指摘されました。

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写真:大田 信行 氏(PFN America 最高執行責任者)

最後に、東京大学発ベンチャーであるエルピクセル株式会社 代表取締役の島原佑基氏は、画像解析を専門とするシステム開発を目指し、医療をはじめ製薬や農業など、あらゆる画像について積極的に解析を進めていると説明されました。中でも医療画像診断支援システムの紹介では、医師が日常の診療をしながら学習データを蓄積できる仕組みを構築していることなど、現場での活用例を示されました。

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写真:島原 佑基 氏(エルピクセル株式会社 代表取締役)

続いて後半の「AIとライフサイエンスの今後の展望」については、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センターの渡辺恭良センター長が、「Precision Health個別健康の最大化」というタイトルで講演されました。新規計測器の開発やビッグデータの解析など統合的な研究により、健康診断で健康の度合いを測定し、健康科学の促進、増進を進めていきたいと強調されました。

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写真:渡辺 恭良 氏(理化学研究所 ライフサイエンス技術基盤研究センター センター長)

つづいて、京都大学 大学院医学研究科の奥野恭史教授は、2016年11月に設立された、製薬やIT企業、大学など70機関からなる産学連携のライフインテリジェンスコンソーシアム LINC(Life Intelligence Consortium)に関して解説されました。LINCでは、医薬品創薬研究から市販後の副作用に至るまでの全域でテーマを募集し、150集まったテーマのうち29テーマについて、6月から研究プロジェクトを開始すると進捗を報告されました。

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写真:奥野 恭史 氏(京都大学大学院医学研究科 人間健康科学系専攻 ビッグデータ医科学分野 教授)

最後に、東京大学 政策ビジョン研究センターの渡部俊也教授は、今後、産業の中でイノベーションを起こしていくためにはAI、ビッグデータ、著作権法、特許、不正競争防止法、個人情報保護法などあらゆる問題を解いていかなければいけないとし、特にデータは世界の天然資源の一つだと発言され、産業化のための基盤づくりが必要だと述べられました。

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写真:渡部 俊也 氏(東京大学 政策ビジョン研究センター 教授(LINK-J運営諮問委員))

パネルディスカッションでは、渡部俊也教授がモデレーターを務められ、ライフサイエンス分野でAIを活用したビジネスの課題に焦点を当てて議論がなされました。
登壇者であるパネリストの7名の先生方からは、AI分野における人材不足の声が多数寄せられ、他分野を巻き込んだ人材育成の必要性も問われました。また、データの収集方法、活用方法を含めた基盤づくり、すでに蓄積されているデータの利活用などもディスカッションのテーマとなりました。

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写真:左から、奥野 恭史 氏、渡辺 恭良 氏、島原 佑基 氏、大田 信行 氏、洪 繁 氏、山口 類 氏、北野 宏明 氏、渡部 俊也 氏

第二部の懇親会は、岡野栄之LINK-J理事長の乾杯の挨拶で幕を開け、多くの皆様にご参加いただき、ネットワーキングが活発に行われました。最後はLINK-J理事も務める、三井不動産株式会社 常務執行役員の植田俊氏による中締めにて幕を閉じました。

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左上:岡野 栄之 氏(LINK-J理事長/慶応義塾大学医学部長)
右下:植田 俊 氏(LINK-J理事/三井不動産株式会社 常務執行役員)

最後にはなりましたが、ご参加いただきました皆様、ご登壇者様、関係者様には厚く御礼申し上げます。

次回のLINK-J主催のイベントは、7月3日、日本橋ライフサイエンスビルディングにて、LINK-JサポーターのMedVenture Partners 株式会社 代表取締役社長の大下 創 氏をお迎えして、第8回LINK-J ネットワーキングナイト~with supporters~「医療機器界における日本のエコシステムについて~Biomedical SolutionsのExit事例をもとに~」(仮題)を予定しております。詳細につきましてはホームページ等で近日公開を予定しております。皆様のご参加お待ちしております。

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