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インタビュー・コラム

感染症×再生医療でブレイクスルーを。 血球細胞の研究開発を手掛けるマイキャン・テクノロジーズ

起業家支援プログラム「ZENTECH DOJO Nihonbashi」の第一期に入門し、次のステージに向けて研究を続けているMiCAN Technologies Inc.(マイキャン・テクノロジーズ株式会社)の創業者である宮﨑和雄氏と、プログラムの主催者である株式会社インディージャパンの代表取締役テクニカルディレクターであり、LINK-Jサポーターの津田真吾氏にお話しを伺いました。

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マイキャン・テクノロジーズ株式会社
宮﨑 和雄 様(代表取締役CEO)

株式会社インディージャパン
津田 真吾 様(代表取締役テクニカルディレクター)

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マイキャン・テクノロジーズ株式会社は、三日熱マラリアの原虫培養のために再生医療技術を利用し、血球細胞(MPV細胞)の開発や販売を行っています。

未成熟な細胞の大量培養で商業化

―――マラリアに対する治療の現状について教えてください。

宮﨑 マラリア感染者に対する薬は1940年代、つまり第二次世界大戦ごろから同じ薬が使われて進化していない状況です。一度感染すると、原虫は肝臓内で生き続けるため、沈静化することができても、根治することができません。また、特定の遺伝子疾患がある方には、副作用のために投与が困難という現状があります。マラリアに効果的な医薬品開発のためには、原虫を培養することが必須であり、我々はその培養ツールを販売しています。特に再生医療技術を用いて、未成熟な細胞をコントロールするところに独自技術があります。

―――御社の製品についてお伺いします。

宮﨑 マラリアは蚊を媒介として原虫が体内に入ることでヒトに感染します。我々がターゲットとしている三日熱マラリアでは、赤血球になる前の網状赤血球に特異的に寄生するため、原虫を体外に出すと、1日程度で死んでしまいます。マラリア原虫を研究に利用するためには、網状赤血球である分化途中の血液細胞を培養する必要があります。そこで、再生医療技術を用いて未成熟のままの血球細胞(MPV細胞)を開発しました。この細胞を使えば、2週間ほど未成熟な状態を維持することができます。

―――研究開発において苦労された点についてお伺いします。

宮﨑 苦労はしっぱなしです(笑)。感染症研究の先生方は、通常、輸血パックを使います。原料は無尽蔵にあると思われているため、商品を試してみてほしいというと、細胞を10億個持ってきてほしいと言われる。研究室で細胞をつくるとなると100万個レベルですが、その千倍の量が必要となるので、大量生産をするために、高密度に培養できるよう試行錯誤をしました。

製薬企業にいながら起業家プログラムに応募

―――起業しようとしたきっかけについて教えてください。

宮﨑 製薬会社の研究員としてずっと研究畑にいたのですが、プロジェクトの失敗をきっかけに、別の視点がないといけないと感じ、社会人大学院のMBAコースを受講していました。転機だったのは、2013年にインドで研究をする機会があったことです。インドでは薬の作り方がローテク、つまり、設備面や環境もあまり良いものではありませんでした。私は再生医療の研究をしていたので、再生医療技術を使えばよりよい薬がつくれるのではと思い、帰国してから取り掛かろうと決意しました。

―――マラリアをターゲットとしようとしたきっかけはありましたか?

宮﨑 インドにいたときに、同僚が何人も熱帯病にかかり、マラリア感染者を目の当たりにしたことですね。調べてみると、グローバルで重要な課題であるのに、アプローチしている企業があまりない。これは大きな社会課題だと感じ、自らが関与することで解決の道筋をつけていきたいと思いました。

―――インドから帰国してから起業された?

宮﨑 すぐに研究は始めたのですが、起業し、会社をやめるまでが長かった。感染症に対して再生医療と組み合わせることでブレイクスルーが起こると考え、会社に直談判をしてやらせてもらえないかと頼みました。しかし、勤め先では感染症の研究には消極的で、再生医療も不確実な領域だとみなされました。再三交渉した結果、個人の責任でやる分には構わないといわれ、研究をスタートしました。

―――製薬会社の中で感染症の研究を始められた?

宮﨑 業務時間は使えず、会社の施設も一切使えませんでした。そこで、経済産業省の起業家育成事業や研究開発型ベンチャーとして新事業に挑戦する起業家候補支援するNEDOの事業、スタートアップイノベーター「SUI」に応募しました。グラントをもらったことをきっかけに、まずは感染症の研究ができるところを探し、京都大学、長崎大学と共同研究を始めました。それが2015年ごろのことです。資金も底をついた頃、CFOの若山が経営していたインキュベーション施設を使わせてもらえることになり、2016年に起業しました。感染症分野で再生医療を活用しようとしている人がいなかったからこそ、起業しようと決意しました。

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マイキャン・テクノロジーズ株式会社 宮﨑 和雄 様(代表取締役CEO)

再生医療の新しいビジネスモデルとして

―――ZENTECH DOJO に入門された経緯をお伺いします。

宮﨑 NEDOのSUIに応募し、二次審査を通過したとき、メンターであるインディージャパンの津嶋辰郎氏に出会いました。

津田 その時期が、ちょうどZENTECH DOJOを立ち上げるタイミングと同じだったので、一期生として入門してもらいました。

宮﨑 会社を立ち上げたばかりのころは、座学で学んだことが役立てると思っていましたが、経営しようとすると全く違うことに気がつきました。

―――津田さんから見た印象はどうでしたか?

津田 大企業を辞めて起業するのはよっぽどのことだと思いましたね。素直に応援したいと。何より、再生医療の画一的なビジョンとは違うと感じました。再生医療のビジネスを手掛けている人たちの多くは30年後に成功する絵は描いているが、それまでの具体性に欠けていた。日本はブロックバスターモデルしかないような雰囲気がある中で、マイキャンの製品は人に投与するわけではなく、再生医療の技術で「ツール」つくるということで、一つのモデルになると直感しました。

―――ZENTECH DOJOに入られて変化や成果はありましたか?

宮﨑 入門するまでは、かなりドメスティックな視点しか持っていませんでした。マーケットが日本にないにも関わらず、あまり海外を見ていなかった。津田さんや津嶋さんに会ったことで、マインドセットも変わりました。また、津田さん、津嶋さんがもつネットワークのおかげで、海外にアクセスしやすくなりました。

津田 一緒にタイやシンガポール、先日のLINK-Jさんが企画した南仏ビジネスツアーにも行きました。すごくよかったですね。

宮﨑 アフリカの西側にはフランス領の影響やフランスの医療システムがあり、日本では触れることができない部分を経験できました。

ニッチなプレーヤーを目指して

―――今後の提供先やマーケットはどのようにお考えですか?

津田 アフリカと東南アジアと南米です。市場が小さいと思われがちですが、東南アジアは経済成長していますし、南米も人口が増加している。より重要なマーケットになると思っています。

宮﨑 これまでとは違ったツールを提供することで、研究の考え方が変わっていくはず。ワクチンや医薬品開発などに携わっている提供先と一緒に共同研究できればと考えています。

―――分化途中の細胞をコントロールするという技術が他の可能性へ広がりそうですね。

宮﨑 血液系の遺伝疾患にも応用できます。従来血液細胞の供給は献血しかなかったため、これまで手が出しにくかった他分野の研究者の方にも使っていただけると思います。

津田 マラリア研究用の血球細胞をつくれるという話をすると、この遺伝子を変えてくれないか、ノックアウトしてほしいなど要望がでてきている。これに対応できるようになると、広がりがでてくる。マラリアは昔からある病気というイメージが強いので、スタートアップ的に目立たないところがありますが、最近はデング熱とかジカ熱など、脅威になるような熱帯病が増えていて、引き合いが増えています。

―――今後の展望についてお聞かせください。

宮﨑 直近の課題としては資金調達です。感染症に関して日本では認識してもらいづらいところがあります。ただ、それは自社の製品を販売していき、実績を作って見せていければと考えています。感染症をきっかけに、この再生医療技術が商業ベースに乗ること。再生医療への発展に貢献できればと思っています。

津田 日本が切り開いた再生医療技術という領域から売れるもの、実際ニーズのあるものを提供する会社になってくれればと思っています。

宮﨑 こんな細胞をつくってほしいなど要望があれば、対応していきたいです。

MiCAN_2.jpg

Miyazaki_MiCAN.pngのサムネイル画像宮﨑 和雄 氏   マイキャン・テクノロジーズ株式会社 代表取締役CEO
東京理科大学理学研究科卒業。専門は、有機合成化学および再生医療。約20年間製薬会社で新薬の探索研究を行う。インドでのマラリア・デング熱など感染症との出会いを契機に2016年マイキャン・テクノロジーズ株式会社設立。再生医療技術を活用した特殊な血球感染症の課題解決を目指す。現在は、同社代表取締役CEO。


津田様.png 津田 真吾 氏   株式会社インディージャパン 代表取締役テクニカルディレクター
早稲田大学理工学部卒業。日本アイ・ビー・エム株式会社でハードディスクの研究開発に関与。世界最小のマイクロドライブ、廉価型サーバーHDDなど革新的なプロジェクトを数多く手がけ、技術的にも多くの特許を取得。保有特許は17件。R&Dのコンサルティング企業を経て、2011年に株式会社INDEE Japanを設立。シードアクセラレーターZENTECH DOJO Nihonbashi ならびに企業向け新規事業立ち上げ支援を手がける。現在は同社代表取締役テクニカルディレクター。

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