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イベントレポート

未来を切り拓く創薬DX:多角的な視点から探る最新トレンド(6/28)

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2024年6月28日(金)に日本橋ライフサイエンスビルディング201大会議室と10Fラウンジにて「未来を切り拓く創薬DX:多角的な視点から探る最新トレンド」を開催いたしました。
本イベントは、タイアップイベントの第7弾となります。(主催:LINK-J、メルク株式会社)

登壇者
Christopher Thomas 氏(メルク株式会社 メルクグループ日本総代表 代表取締役)
小松 寛 氏(メルク株式会社 ライフサイエンス コマーシャルマーケティングマネージャー)
牧口 大旭 氏(株式会社ゼウレカ Chief Technology Officer)
玉木 聡志 氏(株式会社MOLCURE 代表取締役CEO/CSO)
成田 周平 氏(株式会社FRONTEO カスタマーサクセス統括部 AIコンサルチーム 担当部長)

オープニング

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Christopher Thomas 氏
メルク株式会社 メルクグループ日本総代表 代表取締役

はじめに、メルク株式会社の概要と本日のトピックの位置づけについてお話いただきました。
350年続く世界的サイエンステクノロジー企業であり、中心となる3領域(ヘルスケア・ライフサインエンス・エレクトロニクス)の中でも、特にライフサイエンスの分野においてはバイオテクノロジー研究と製造のためのツールを提供し、研究から臨床、社会生活といった幅広いフィールドでサスティナブルな未来の創造に貢献しています。またAI・デジタル技術を用いた創薬にも近年力を入れており、自社ラボにて独自の開発できるよう開発促進しているとのことです。

講演

"データ駆動型低分子創薬の未来~デジタルツールが拓く創薬DXの可能性~"

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小松 寛 氏
メルク株式会社 ライフサイエンス コマーシャルマーケティングマネージャー

1つ目の講演としてメルク株式会社 小松様より「"データ駆動型低分子創薬の未来~デジタルツールが拓く創薬DXの可能性~"」についてご講演いただきました。
デジタル駆動型の創薬DXの市場規模は2024年現在300億円規模、8年後には2000億円を超えてくる大きなマーケットと言われ、研究開発にかかるコストと時間の膨大さの省略のため2030年にはAIを用いた創薬は全体の50%になる見込みもあります。一方AIを用いた創薬には現実とのギャップの解消が課題となっていますが、メルク社は20年以上の創薬実績からバリゲートされた回答を出すことが可能で、そのことがギャップの解消につながっています。AIDDISON®は低分子創薬のスクリーニングをバーチャルで行うツールで、生成AIによって生み出された化合物の探索に加え化学の知見から得られたバーチャル上の化合物も合わせて相互に検索がスムーズにできるのが特徴です。SYNTHIA®は、候補化合物が出てきた段階で、どう薬の形にするか、作りたい薬の理想形があればその作り方を教えてくれるソフトです。薬のもととなる原料のデータは約1000万化合物データが入っており、論文を検索して作るのではなく、反応のルールを決めるため、全く新規の化合物でも導き出すことができます。

AIとHPCで加速する創薬研究―ゼウレカでの活用事例とTokyo-1の紹介―

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牧口 大旭 氏
株式会社ゼウレカ Chief Technology Officer

次に、株式会社ゼウレカの牧口様に「AIとHPCで加速する創薬研究―ゼウレカでの活用事例と Tokyo-1の紹介―」と題して講演いただきました。
ゼウレカ社は、最先端のAIやシミュレーション等の最新コンピューター技術を駆使し、創薬研究 における大幅な効率化と成功率の改善を実現して、病気に苦しむ患者様に良い薬を安く、迅速に 提供することに貢献することを目標に、国内製薬企業様への支援、共創を推進しています。
たんぱく質構造予測や、シミュレーションまたは機械学習による大規模スクリーニングを行う化 合物の探索(ヒット同定)から、AI&Simulationによる分子設計に至るリード探索・最適化領域 でサービスを提供しており、数十億超の化合物ライブラリーに対して、リガンドベースと ストラクチャーベースを組み合わせながらスクリーニングの実施が可能です。その一例としてヒト Aryl hydro carbon receptor(AhR)antagonist活性を有する新規化合物の探索について紹介 しました。また、海外の開発動向や投資状況と比較し日本の現状を打開すべく、親会社の三井物 産、NVIDIA社と連携し、創薬のデジタルイノベーションハブを目指す「Tokyo-1」を今年2月にサービスローンチしま した。最先端のGPUスパコン(NVIDIA DGXH100)を個々のコミュニティメンバーで占有できる形で提供し、ゼウレカ社はじめAI開発サービス事業を行うパートナー企業が 最先端の創薬DXソリューションの提供・紹介を行いながら、先端論文の検証や共通の課題などにコミュニティメンバー共同で取りくみます。月2回の会合の他、個別のタスクにおける会合、経営層へ向けた会合を通じ、交流やマインドの向上を図りイノベー ションを加速する取り組みです。この取組を通じて創薬研究の期間を10分の1に短縮し、創薬研 究後の成功率を10倍向上させ、100倍効果の実現を果たすのがTokyo-1の目指す将来像になる、 とお話しました。

抗体デザインにおける進化分子工学と大規模言語モデルの活用 

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玉木 聡志 氏
株式会社MOLCURE 代表取締役CEO/CSO

続いて、株式会社MOLCUREの玉木様に「抗体デザインにおける進化分子工学と大規模言語モデルの活用」について講演いただきました。
近年、大規模言語モデルに代表される人工知能を用いたアプローチは、効率的な抗体創薬を行う上で大きく注目を集めています。MOLCURE社では進化分子工学とNGS(次世代シーケンサー)を融合したプラットフォームを開発し、効率的に大量の実験データを取得することでオリジナリティのあるAI開発に取り組んでいます。ターゲット発見後の候補物質の選択や最適化がMOLCURE社のプラットフォームの場であり、中/高分子のペプチド・抗体がメインの領域になります。R&D研究開発拠点としてHQ新川崎・創造のもり内、Biolab(山形県鶴岡市)鶴岡サイエンスパーク内(同エリア内に慶應義塾大学先端生命科学研究所が隣接)、AI/Robo東京工業大学地球生命研究所内と3拠点あり、アカデミアの最先端の情報を入手しながらビジネスを進めることができています。特にAI/Roboチーム拠点である、東京工業大学ではスパコン「TSUMABE4.0」も用いています。ウェットなラボでの実証とAIの組み合わせが可能となり、ウェットラボにおけるデータの効率的な収集と分子の検証によるAI学習サイクルが実現できています。
「AIとは、確率的に正解を出す装置。人が素早く検証し、次の予想に生かすというサイクルの設計の中にいかにAIを入れていくか。AIの特性を理解し、そのAIに対する最適な環境を用意する。」これが創薬におけるDXであると玉木様は語ります。
MOLCURE社のAIの特徴として、オリジナルの言語モデルと既存大規模言語モデルのfine―tuningを併用している点、特異性、免疫性、安定性など創薬に必須の複数の要素ごとにAIを開発している点が挙げられます。これらによって多目的最適化がなされた創薬候補の分子を絞り出すことが可能となりました。例えば、AIの学習において、"SARS-CoV-2関連の情報を一切加えず 、いかにRBDタンパク質(SARS-CoV-2)に対して適切なVHH抗体がディスカバリーできるか"というケースでは、MOLCUREでは12種の厳選した候補を導きだした。候補分子は多様な配列を有しており、83%の確率で結合力のある抗体を獲得することに成功した、とのことです。「AIのツールの導入だけではなく、どうエコシステムを設計するのか、が肝心」と講演を終えられました。

パネルディスカッション

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パネルディスカッションでは、株式会社FRONTEOの成田様がモデレーターとなり進行しました。「AI創薬のデータとして何が重要なのか」「データ資源をどう活用すべきか」「創薬研究者のDXへの関わり方」「創薬DXが進む中で創薬医療に携わる人々にどのような未来が描けるのか」について各登壇者より興味深い意見が出されました。会場からは「アカデミアやベンチャーが創薬し、成功したらメガファーマが受け継ぐ現状の流れに対し、AI創薬の仕組みが進んだらエコシステムがどう変わるか、またアカデミアへの期待は?」といった質問も上がり、参加者と一体となり創薬DXへの理解を深める時間となりました。

名刺交換会・登壇企業ブース

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今回はリアル会場とオンライン視聴のハイブリッド開催に加え、メルク株式会社がもつYoutubeチャンネルでの配信となりました。
リアル会場では10Fラウンジに会場を移し、華やかな料理と共に、参加者と登壇関係者の情報交換や登壇企業の紹介ブースなどの貴重な機会に熱心にご参加いただきました。
両会場合わせて200名以上の方にご参加いただきました。

イベントにご参加の皆様、ご登壇者の皆様、誠にありがとうございました。

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