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イベントレポート

LINK-J×鶴岡サイエンスパーク『鶴岡発ベンチャーが創るタンパク質素材革命』を開催(7/2)

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日本橋ライフサイエンスビルディングにてLINK-J×鶴岡サイエンスパークシリーズの第三回目となる「鶴岡発ベンチャーが創る タンパク質素材革命」を開催しました。

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クモの糸をはじめとした「構造タンパク質素材」を大規模に普及させるため、どのような研究開発・事業を行われているのか、Spiber社の最前線について関山代表よりご講演いただき、冨田先生の司会のもとディスカッションを行いました。

挨拶:佐藤光治氏(鶴岡市企画部 次長(兼)政策企画課長)
座長:冨田 勝氏(慶應義塾大学先端生命科学研究所 所長)
登壇者:関山和秀(Spiber 株式会社 取締役兼代表執行役)

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佐藤光治氏(鶴岡市企画部 次長(兼)政策企画課長)

山形県鶴岡市より、企画部次長兼政策企画課長の佐藤光治氏からご挨拶いただきました。鶴岡市は世界をリードする研究活動の促進を積極的に推進し、新たな産業や地域活性化に活かす取り組みをしています。佐藤氏は、慶應義塾大学生命科学研究所を誘致された、元市長の故・富塚陽一氏の言葉をご紹介され、Spiber社の関山様に期待の言葉を贈られました。

タンパク質素材の時代を目指して

関山代表は、まず自己紹介として、冨田先生との出会いからSpiber社の成り立ちについてお話いただきました。2004年に始めた研究は、3年後に会社設立、そして11年の時を経て大きく成長しました。174億円の調達を達成し、社員も約200人に拡大。官・民合わせたプロジェクトでは、世界のトップレベルの方が集まり、新しいタンパク質素材を創ることを目指した研究開発に携わっていると説明されました。

「事業へのモチベーションは、地球規模の課題を解決することにあります。人類がかかえる問題の一つに、石油の消費が挙げられます。石油由来の繊維の消費量は年間9千トンです。これまでは石油化学の時代でしたが、次はタンパク質を使いこなす時代が必ず来ると考えています」

同社が注目している分野は主に「アパレル」と「自動車」だと紹介されました。どちらもCO2消費量が高い分野ですが、技術、コスト面などで産業化が難しいと考えられており、この問題を解決できれば、社会に大きく貢献できることは間違いありません。

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関山和秀(Spiber 株式会社 取締役兼代表執行役)

「クモの糸は分子量3000個のアミノ酸から成り、アミノ酸の種類は20種類であるため、20の3千乗もの組み合わせが考えられます。この無限ともいえる組み合わせに対して、タンパク質のデザインと、低コスト化について研究開発を続けています。自然界では2億年かけてすごい素材として進化させてきたクモの糸を人工的に作り出すことが目的です。

自然界にいるクモの種類は登録されているもので5万種もあり、野生のクモの糸をサンプリングし、タンパク質分子配列解析を行い、クモの糸特有の性質を持った分子配列を探索し、その遺伝子を人工合成し微生物に組み込み、タンパク質を生成しています。」と解説されました。

素材となるタンパク質は、バイオテクノロジーと高分子化学技術を使って創り出されているのです。

「問題は低コスト化です。多層の技術が絡み合うため、コストパフォーマンスを上げるために、設計から加工までのすべての段階において低コスト化を実現する必要があります」

そのため、Spiber社では、インハウスですべての技術を一から構築してきました。内製化することで、フィードバックのスピードを上げたことは競争力の根源的な力であると、関山氏は力説しました。

今後の展望として、タンパク質は繊維だけでなく、樹脂化、ゲル化など使い道も多様で、クモの糸以外のタンパク質の研究開発も進めているそうで、自動車部材については、複合材料の開発も進んでおり、他の輸送機器にも応用が期待されています。

関山氏は最後に、「今後のプロダクトに期待していただければと思います。この分野は、再生可能な循環社会にとって必要なものと考えています。近いうちに、皆さまのもとへ製品を届けたいです」と締めくくられました。

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人も企業も失敗してこそ成長する

後半は会場から質問を受け、関山氏と冨田先生による質疑応答が行われました。

――これまでの失敗をどのように乗り越えてきましたか?

関山氏:失敗がありすぎて取り上げることが難しいくらいです。実験では失敗ばかりでしたが、事業は続けられているので、「大失敗」という意味ではないかもしれません。スタート時に、失敗して学んでいることが、私たちの競争力になっています。スピード感は大事にしています。

――世界で初めてのことを成し遂げた原動力はどこにありますか?

関山氏:取り組んでいる事業が「社会にとって確実に重要である」と信じ続けることです。常に疑いながらも、毎回、その疑いに対して検証を繰り返しています。そこは強い確信があります。楽しいので、つらいとは思わないです。楽しみながら仕事をしています。

――パートナー企業を選定された理由を教えてください。

関山氏:一つ目の企業は、実用化を目指すなら、「生産技術を持っている会社と一緒にやらなければだめだよ」とアドバイスをいただいたことがきっかけで、生産技術開発をしている会社を紹介してもらいました。もう一つの会社は、その企業のビジョンや考え方の相性が合うと感じ、一緒にモノづくりをしたいと感じたことです。

冨田先生:社長や担当役員など意思決定権のある人が、本気で「やりたい」と思っているかどうかで、スピードが格段に違うと思います。

――田先生のパワーや秘密を教えてください。

関山氏:とにかく冨田先生は熱いです。学生がやりたいと言ったことを否定しませんので、成功も失敗もその学生次第ですね。やりたいことがある人に機会を与えてくれますし、仮に失敗したとしても失敗から学びます。そして、みんな、冨田先生のことが好きです。鶴岡のベンチャー企業は、冨田先生をハブにした強い連帯感があります。

冨田先生:教授が学生に研究テーマを分け与えてしまうと、研究は順調に進み業績はできるかもしれませんが、意外と学ぶものは少ないです。それは無理だろうというようなテーマでも本人がどうしてもやりたいなら納得行くまでやって、仮に失敗してもそれは成長につながると考えています。人は失敗で学ぶのです。スポーツでもそうですが、負け試合にこそ学ぶものが多いわけで、弱い相手とだけ試合して勝っているうちは、学ぶものは少ない。だから強い相手にどんどん挑んで負けるべき。日本人のマインドはそこが足りていないと思います。

講演後は10階ラウンジにて懇親会が行われました。当日は約70名の方にご参加いただき、賑やかな会となりました。

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鶴岡シリーズの締めくくりとして、冨田所長と周る「鶴岡現地ツアー」を9月14日、15日(土)に1泊2日で予定しています。2018年夏にオープンする「SUIDEN TERRASSE」(ヤマガタデザイン株式会社)に宿泊し、サイエンスパークの見学&ディスカッションを行います。詳しくはこちらのページをご確認の上、お早めにお申込みください(申し込み締め切り:7月末)。

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