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イベントレポート

TECH for LIFE CHALLENGE DAYを開催(5/24)

5月24日(金)、日本橋ライフサイエンスビルディングにてTECH for LIFE CHALLENGE DAYを開催いたしました(主催:INDEE Japan 共催:LINK-J)。
TECH for LIFE は、テクノロジーを通じてLIFE(命、生活)の向上にチャレンジする起業家やスタートアップを応援する総合支援プログラムです。今回のCHALLENGE DAYと対になるSOLUTION DAY(9月6日開催、優勝賞金100万円)とで、デジタルヘルス領域でのスタートアップの事業化を加速していきます。

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TECH for LIFE CHALLENGE DAYでは、医療従事者、ヘルスケア関連企業、VCから行政までの各プレイヤーが登壇し、さまざまな視点で医療・ヘルスケアの課題がシェアされました。後半に行くほど発表は熱を増し、パネルディスカッションではこの場でしか聞けない様なトークも飛び出しました。尽きない議論はその後の懇親会へと続きました。

また、シンポジウムの前にはスタートアップとして、ヘルスケアの課題解決に取り組みたい起業家向けにスタートアップチャレンジを開催いたしました。18人の起業家、シード期のスタートアップが参加し、投資家との面談を行いました。最優秀となった1人は、その場でZENTECH DOJO Nihonbashi のアクセラレーションプログラムの入門と最低300万円のエンジェル投資の権利を獲得しました。

基調講演
TECH FOR LIFE : UCサンディエゴの視点

DSC_0071.JPGAlbert P. Pisano(University of California, San Diego)

ピサノ氏の講演はUCサンディエゴ自慢から始まり、アメリカでスタートアップを生み出しているのはスタンフォードだけじゃない!と認識を新たにさせられました。イノベーションエコシステムにはアカデミア、インダストリー、ビジネスの3つが必要との主張の下、UC サンディエゴの実績が紹介されました。米国の公立大学の中で産業界支援の研究額が第2位、大学発スタートアップ数が第4位というトラックレコードの他、工学部と経営大学院の連携によりエンジニアを起業リーダーにするアントレプレナー教育16年の実績等の興味深い取り組みが紹介されました。
最後に今回のテーマであるデジタルヘルスケアに関しては、グローバルアントレプレナー機構のメドテック・アクセラレーターの取組みからの学びとして4つのポイントが示されました。

  1. 多元的なパートナーシップの必要性
    医学研究者、臨床医、エンジニア、ビジネス、投資家
  2. データおよびデータ・アナリティクスの重要性
    既存データの整理と分析、スナップショットではなくデータストリームの開発、モバイルストリームへの移行、診断だけでなく治療後のフォローアップへの適用
  3. 新しい人材ニーズを満たすための新規の教育プログラム
    医学、工学、ビジネスを連携させ、大学を離れた後の実践家をも支援するプログラム
  4. 起業家カルチャーを促す仕組みの整備と維持発展
    産学連携、スタートアップ支援、ビジネスニーズを明確にするプロセスの確立、国際的な協働

Session1:健康・医療分野における課題の共有(司会: 瀬尾 亨氏)
わが国の政治的視点における健康・医療分野での課題の共有

基調講演後の「Session1:健康・医療分野における課題の共有」では、ファイザーの瀬尾 亨氏の司会により、行政、医療従事者、ヘルスケア関連企業、VCから6人の登壇者による課題の共有が行われました。

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甘利 明氏(自由民主党選挙対策委員長 衆議院議員)   
西川 和見氏(経済産業省商務・サービスグループ ヘルスケア産業課長)

トップバッターの甘利 明氏からは、エコシステムへの思いとデータ活用に関するヒントが語られました。

「基礎研究が社会に普及するためのイノベーションのエコシステムを作りたい、日本には素晴らしいシーズはあるが、日の目を浴びないまま、宝の持ち腐れになってしまっており、それを大学予算の削減のせいにされている。解決策の1つとして誰が何を研究しているかをデータベース化する必要がある。日本は国民皆保険の国で医療データは世界で一番揃っている、医療も介護もデータ蓄積は世界一。大学が持つシーズをデータベース化する事で医療や介護のデータとともに活用する。相互作用が可能なエコシステムを作れば、イノベーションを起こせる。」

続く西川 和見氏からは、「生涯現役社会の実現に向けて」と題し、超高齢化社会に向かい非常に強いニーズを持つ日本の現状と、予防・進行抑制・共生型の新たな健康・医療システムを確立に関して語られました。

「生涯現役社会を実現するには、老化や生活習慣病による疾患への対処が必要になる。これには、誰にでも同じ標準治療を提供するのではなく、患者の性質や状態に応じて異なる治療方針が必要になる。個別対応の医療を実現するには、数百億かけて特定疾患の治療薬を作るのではなく、個人の状態の把握、状態に合わせた服用や健康への意識づけ、患者自身が自分の主治医になるような一方的に提供される医療ではなく、相互に支えあう共生型の医療システムが必要となる。」

医療従事者視点における健康・医療で分野の課題の共有

DSC_0098.JPG鶴嶋 英夫氏(筑波大学 脳神経外科専門医 准教授 大学病院未来医工融合研究センター長)

行政に続いて医療従事者の鶴嶋英夫氏からは、「医療従事者視点における健康・医療で分野の課題の共有」と題して、具体的な研究事例に基づき、研究資金の調達や、データを扱える人材の不足、医療か医療サービスかによるビジネスモデルの違い、モノしか提供していない企業にはサービスの提供はハードルが高い等、医工連携での事業開発の難しさ等、多くの問題点が語られました。

「1社2千万円で2億円集めて研究している、200TBのドライブシュミレーターの情報を2千万円で提供できれば破格の値段になる。スタンフォードの実証実験には企業はこの100倍は払っているだろう。この200TBのデータは世界でも唯一の貴重なものだが、それがコンソーシアムメンバーの企業できちんと活用されるかも懸念している。」

ヘルスケア関連企業視点における健康・医療分野での課題の共有

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八十木 康仁氏(帝人ファーマ株式会社)
瀬尾 亨氏(ファイザー株式会社)

企業からの1人目、帝人ファーマの八十木 康仁氏からは、成熟産業が抱える共通の課題として、成長率鈍化、研究開発日の増大、既存製品との差別化困難の3つを挙げ、デジタル化への期待について語られました。また、デジタル化への危機感としてポケモンGoはたった19日間で5,000万ユーザーを獲得したという事例等を挙げながら、伝統的な製薬企業がこのスピードについていけるかという懸念を述べました。

「製薬企業はデジタル化への危機感を持っていて何とか参入したいと思っている。アンメットメディカルニーズに対して時間をかけて完成度の高いものを提供するという企業体質に縛られて、MVPで市場を確認するリーンスタートアップ型に対応できてない。やりたい事とこれまでやってきた事とのギャップに苦しんでいる。」

企業からの2人目、ファイザーの瀬尾 亨氏からは、デジタルヘルスの市場予測とともに先行しているアップルウォッチの事例が語られました。米国では5人に1人がウエアラブル・デバイスを使用し、実用化が遅い日本は大きく先を越されてしまっている。ウエアラブル・デバイスによるデータ収集を前提とした慢性疾患、高齢化への対処のために、これからの医療は患者中心主義と障害調整生命年の改善が重要になることを訴えました。

「高齢化に向けてはテレメディスンが良い、実績もある。高齢になると代謝や筋肉の衰えで、誰でも飲めた薬が飲めなくなる、これは裏を返せば個別化治療になるということ。また、患者のAwarenessも重要、癌になれば積極的に薬を飲むと思うが、循環器系の疾患はサイレントキラーなので患者のコンプライアンスは非常に悪い。ウエアラブルには、遠隔モニター可能、患者のAwarenessの向上、低価格等のメリットがある。5Gの到来により、データをクラウドに吸い上げることも可能。実現への課題は、患者として、医療従事者として、医療機器・製薬企業として、データの権利やアーキテクチャのオープン性を担保したシステムをどう組み上げるかにある。」

VCからの健康・医療で分野の課題の共有

DSC_0113.JPG栗原 哲也氏(新生キャピタルパートナーズ)

Session1の最後はVCの立場からとして、新生キャピタルパートナーズの栗原 哲也氏から、デジタルヘルス市場を俯瞰して、"ウォーリーを探せ"状態になっていて投資家から見つけられ難くなっているベンチャーの実態と、ヘルスケア関連ベンチャーの課題を整理しました。
「健康にお金を払う人は少ない、ヘルスケア関連ビジネスのマネタイズは難しい。では、どこ向けのサービスを考えるか?製薬企業や医療機関のビジネスモデルを理解してターゲットを絞る必要がある。そのためには、医療とITの両方の知識が不可欠となる。」

Session2:パネルディスカッション(モデレーター:津嶋 辰郎氏)

休憩を挟んでのSession2では、INDEE Japan津嶋 辰郎氏のモデレーターにより「患者視点における健康・医療分野での課題について」というテーマでパネルディスカッションが行われました。

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パネラー
樋原 伸彦氏(早稲田大学ビジネススクール)
栗原 哲也(新生キャピタルパートナーズ)
鶴嶋 英夫氏(筑波大学 脳神経外科専門医 准教授 大学病院未来医工融合研究センター長)
八十木 康仁氏(帝人ファーマ株式会社)

モデレーターの津嶋氏からの本音のぶっちゃけトークを期待しますとの問いかけを受けて、本セッションから参加の早稲田大学ビジネススクールの樋原 伸彦氏が口火を切りました。

IMG_8414.JPG樋原 「私の感じているパースペクティブはスタートアップでも企業でもお金の金額が小さいということ。研究開発の投資額は、アメリカでは10兆円を超えてきた。中国はここ数年凄まじいのびをしていて3, 4兆円、それに対して日本は2000億円で横ばい。鶴嶋先生もスタンフォードなら100倍は集まると言っていた。スタートアップが人を取れないのも大企業の報酬の8割すらも払ってないから、そして、それはVCがスタートアップに払ってくれないから、バーンレート気にしちゃっている。AI人材人が足りないを自然現象の様に言っているけどあれは間違い、メルカリはインドから取ってきた。こんな状態では、患者のニーズに応えられるものを出せない。日本は小さくまとまろうとしていて、世界規模のマーケットを狙おうという気概がない。」

ーー鶴嶋先生、やりやすくなってる?資金は潤沢になっている?変化を感じられている?

IMG_8420.JPG鶴嶋 「非常に厳しいというのが印象、ロボットスーツHALの治験でAMEDから2億もらったけど、ランダム化比較試験RCTは無理、不可能。大学職員はほとんど持ち出しで働いている状態で、これでは大学以外では実行不可能。僕がもらったのはAMEDの第1号だったが、公的資金は2,3年目でどんどん減らされていくので、同時期に受けたほとんどの企業は資金が枯渇して開発ストップしている。あれだけ注目されているHALでもこんな状態」
「海外はサポートがしっかりしている。ストックホルムでは大学側の組織が治験をサポートしてくれて、研究者は研究に専念できる。」

ーー企業での実際のパートナーリングや投資は?

IMG_8423.JPG八十木「製薬企業はデジタルヘルスの会社との提携に際して、相対的にみて医薬より安いだろうという感覚を持っている。」「少額で済むという感じを持っている?」「そうです。医療機関向けの高度な専門サービスを扱うグループ会社のインフォコムがあるが、まだ引き継げていない。」

ーーVCの観点では?

IMG_8425.JPG栗原 「バイオ薬品で、ドイツ本社で投資をやっていた頃、日本に投資を引っ張ろうとしましたが、9割はアメリカ、残りはチャイナ、ヨーロッパでした。日本は投資金額ではアメリカには負けるが、ノーベル賞も多い科学立国大国であるので土壌はあると思う。
日本には製薬ビジネスが聖域視されていて、お金を稼ぐとは何事だ!という風潮がある。デジタルヘルスで20−30代、バイオで30−40代の企業が増えてきて意識は変わりつつある。資金調達額はITかバイオかで違うが、一発で50億を調達する企業も出てきている。20−30億を調達する会社は結構ある。」

ーー日本人が注目しやすい、調達として注目されやすいのはありますか?

栗原 「健康にはお金を払わないという風潮がある。一方で技術力は高い。ロボットをテーマにしたものや、介護の人材難を救うもの等が目立つ。もう一つは規制を受けているもの、それが外れた途端に大きくなることもあるので着目される。」

IMG_8426.JPG瀬尾 ファイザーは別にトップダウンということはない、利益の還元という意味ではこれまでは10-20年を見ていたが、IRRの観点から2-3年で2,3億でもいいというのも出てきた。根治させることは出来ない疾患に関しては、病気のコントロールも必要になる。薬とデジタル技術で状態監視とコントロールを行うソリューションが儲からないということはない。

ーー「患者視点における健康・医療分野での課題について」というテーマでしたが、患者視点というよりは、それぞれの立場における課題の共有が深まったと思います。改めて患者視点でのコメントはありますでしょうか?

会場 デジタルメディスンは、今後劇的に進むべきエリアだと思う。米国ではローコストで効果的なものを作れるというエビデンスも出ている。デジタルメディスンに低分子薬が抜かれる時に製薬会社が抵抗勢力にならないこと、治験で儲けてきたところが邪魔しないことを願っています。

八十木 「製薬企業以外が入ってくることを一番の危機と感じています。」

鶴嶋 「本当にやりたいのは、世界中の病院の電子カルテをセキュリティ高いまま抽出するシステムを作ること。リアルタイム・リアルワールドでいくつかの治験をスキップしたい。」

栗原 「患者中心は副作用、アドヒアランス向上ぐらいしかない、新しいベンチャー育てることで患者に取って良いものが生まれてくる。」

樋原 「経産省の西川さんが示したAIでの短縮、もう一つは個別診療、高齢化が進めば個別のバラエティへの対応が出てくる。時短とバラエティへの対応で患者中心が進んでくる。全部サービスにした方が、満足度は上がると考えている。」

"患者視点における課題"がテーマでしたが、各立場での課題が明らかになることで、各ステークホルダーの課題の共有が進み、それぞれの課題解決のために歯車が噛み合うことが重要だということが示されたパネルディスカッションでした。

TECH FOR LIFEは、これからも様々なステークホルダーとの共有を進め社会に役立つデジタルヘルスの普及を推進していきます。次回のSOLUTION DAY(9月6日開催)にもご期待ください。

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