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イベントレポート

第40回LINK-Jネットワーキング・ナイト「ナノ」「分子」「睡眠」「免疫」で生命科学を革新する ― 世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)― を開催(12/3)

12月3日(火)、日本橋ライフサイエンスビルディングにおいて「第40回LINK-Jネットワーキング・ナイト『ナノ』『分子』『睡眠』『免疫』で生命科学を革新する―世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)―」を開催いたしました(主催:LINK-J、共催:独立行政法人日本学術振興会世界トップレベル拠点形成推進センター)。

本イベントでは、医療・創薬・環境・食糧問題など、現代社会における喫緊の社会的・科学的課題への取り組みの最前線をお伝えすることを目的に、文部科学省が推進する世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)の13研究拠点のうち、ライフサイエンスに関わる4拠点の活動概要と研究内容をご紹介しました。

【講演者】
宇川 彰氏(世界トップレベル拠点形成推進センター プログラム・ディレクター)
福間 剛士氏(金沢大学ナノ生命科学研究所 (WPI-NanoLSI)所長)
東山 哲也氏 (名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 (WPI-ITbM)副拠点長)
柳沢 正史氏(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)機構長)
竹田 潔氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター(WPI-IFReC)拠点長)

WPI概要紹介

はじめに、世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)のプログラム・ディレクター宇川 彰氏より、世界から第一線の研究者が集まる「目に見える研究拠点」を形成し、日本の科学技術の水準を維持・向上させるため果敢な挑戦を続けているプログラムの概要をお話し頂きました。

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宇川 彰氏(日本学術振興会世界トップレベル 拠点形成推進センター長、WPI プログラム・ディレクター)

世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)は、2007年に文部科学省が開始した補助金支援事業で、世界から第一線の研究者が集まる、優れた研究環境と高い研究水準を誇る国際研究拠点の形成を目指しています。
事業スキームとしては、全国の大学や研究機関から申請されたプロジェクト構想案から、大きな成果が期待されるものをWPI研究拠点として採択し、国が国際研究拠点形成の資金支援を行うものです(年間約7~14億円/拠点、詳細はhttps://www.jsps.go.jp/j-toplevel/)。
WPIは自然科学の分野で基礎研究に特化したプログラムです。世界的に著名な研究機関としてドイツのマックス・プランク研究所がありますが、その名言のひとつに「真のイノベーションは基礎研究から生まれる Insight must precede application」があります。WPIもそうした成果を出すべく、4つのミッション①世界トップレベルの基礎研究、②異なる科学の領域の融合、③研究組織の国際化、④研究組織・事務組織の改革、のもと研究活動を展開しています。

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革新的バイオSPM技術による生命科学における未踏ナノ領域の開拓

福間 剛士氏(金沢大学 ナノ生命科学研究所 所長/教授)より、「革新的バイオSPM技術による生命科学における未踏ナノ領域の開拓」と題して、金沢大学ナノ生命科学研究所(WPI-NanoLSI)で行われている取り組みについてご講演いただきました。

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福間 剛士氏(金沢大学ナノ生命科学研究所 所長/教授)

同研究所は、生命科学分野に残された「未踏ナノ領域」を探索するツール開発およびそれを用いた生命現象の根本的な理解を目標として、文部科学省の世界トップレベル研究拠点プログラム(WPI)に採択され、2017年10月に設立されました。
超解像原子間力顕微鏡(AFM)、高速AFM、走査型イオン伝導顕微鏡等、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の世界トップレベルの研究者を集めたナノ計測学と、生命科学、超分子化学、数理計算科学の研究者による融合研究が進められています。
本講演では、生きた細胞の内部を直接動画で観る「ナノ内視鏡」開発へ向けた最近の成果や、融合研究プロジェクトによる試みが紹介されました。
最後に、WPI-NanoLSIの最先端のバイオSPMを利用できる共同研究プログラムへ、参加の呼びかけが行われました。

動植物を操る新分子

東山 哲也氏(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 副拠点長/教授)から、トランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)での化学と生物学の融合研究とその成果についてご講演いただきました。

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東山 哲也氏(名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所 副拠点長/教授、名古屋大学大学院理学研究科 教授、東京大学大学院理学系研究科 教授)

新しい学際的な研究領域を拓くに当たり、名古屋大学の自由闊達な研究教育環境は国際的にも極めて高いアドバンテージを持っています。そのような研究風土の中、2012年に名古屋大学で産声をあげたトランスフォーマティブ生命分子研究所(WPI-ITbM)では、化学研究者と生物学研究者が日常の研究生活を共するミックスオフィス、ミックスラボで、「分子」を起点としてストライガ、植物ケミカルバイオロジー、化学時間生物学、化学駆動型ライブイメージングといった新たな学際研究領域を切り開いてきました。
ストライガ研究は、化学者と生物学者との融合が最もうまく機能した成功例の一つです(Science, 2015, 2018)。見出された分子「SPL7」は、琵琶湖にティースプーンたった1杯加えただけでストライガの種子を発芽、枯死させることができます。アフリカで猛威を振るい貧困の原因と言われる寄生植物ストライガを撲滅に追いやる可能性が大きく期待され、ケニアでのフィールド試験が始まっています。また、本年8月の第7回アフリカ開発会議でも取り上げられました。このほか、時差ぼけの薬として期待される分子、ミトコンドリアの超解像イメージングを可能にした蛍光分子、東山氏が中心となって進める植物生殖を操る分子(Nature 2016)など、世界で初めて見出された分子が次々に紹介されました。また、WPI-ITbMの誇る4つの解析センター、企業コンソーシアム、今年度から開始した卓越大学院プログラム、WPI-ITbM発ベンチャーを紹介したのち、産業界との連携について言及しました。
世界屈指のWPI-ITbMの融合研究環境から生まれる分子の発見、展開によって、今後、医農薬、化学産業との連携と社会実装への期待を強く感じさせられる講演となりました。

睡眠覚醒の謎に挑む

柳沢 正史氏(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 機構長/教授)から、国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)のご紹介と最新の研究成果についてご講演いただきました。

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柳沢 正史氏(筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構 機構長/教授、株式会社S'UIMIN 代表取締役CEO)

「脳を持つ動物は全て眠る」―私達にとって、非常に身近な現象であるにも関わらず、未だ多くの謎に包まれている睡眠。「なぜ眠るのか」「眠気の正体とは何か」といったごく基本的な問いにすら、現代の科学では答えることができません。
この大きな謎に挑むべく、筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構(WPI-IIIS)では、分子遺伝学・神経科学、ヒト睡眠生理学、創薬科学の3領域からなる「睡眠医科学」を確立し、14の研究室がそれぞれのアプローチで研究を進めています。
一例として、柳沢氏らは人為的にランダムな遺伝子変異を起こしたマウスを一匹一匹解析する「フォワードジェネティクス」という方法で、睡眠覚醒制御に関わる遺伝子を探索。1万匹を超えるマウスの睡眠を解析した結果、2016年には眠気の調節に関わる新規遺伝子を発見し(Funato et al, Nature)、それを土台に2018年には眠気の生化学的な実体の解明に迫る重要な成果を発表しました(Wang et al. Nature)。
基礎研究以外にも、WPI-IIISのビジネスセクターである「株式会社S'UIMIN」や、柳沢氏がプログラムコーディネーターを務める卓越大学院プログラム「ヒューマニクス学位プログラム」の設立など、新たな取り組みが続々と始まっています。睡眠覚醒の謎を解き明かし、人々が健やかに眠れる社会の実現を目指して、WPI-IIISの挑戦はこれからも続きます。

疾患克服を実現する免疫学研究拠点の形成

竹田 潔氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター 拠点長/教授)より、免疫学フロンティア研究センター(WPI- IFReC)の理念と近年の研究成果の一端についてご講演いただきました。

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竹田 潔氏(大阪大学免疫学フロンティア研究センター 拠点長/粘膜免疫学 教授、大阪大学大学院医学系研究科免疫制御学 教授)

WPI-IFReCは世界トップレベル研究拠点形成プログラム (WPI) の一期として2007年に誕生しました。大阪大学は医学、特に感染症・免疫学の分野で業績をあげてきた大学です。WPI-IFReCはこうした伝統的な免疫学研究にイメージング(画像化技術)、インフォマティクス(情報学)の手法を取り入れることにより、免疫学の基礎研究を高度に展開させてきました。その研究分野は多岐に渡っています。
竹田氏の研究室のご専門は消化管における免疫の研究であり、今回は同研究室における炎症性腸疾患の最新研究を紹介しました。この病気は腸内の粘膜免疫の異常と腸内細菌などの腸内環境因子が複雑に絡み合うもので、先進国で多く発症することが確認されています。竹田氏の研究室は大腸の粘膜層に注目し、大腸上皮に発現し腸管腔に分泌されるLypd8というタンパク質の役割を解明しました。そして Lypd8 が腸内細菌の鞭毛に結合しその運動性を弱め上皮層への侵入を防止することで腸管の恒常性維持に大きな役割を果たすことを明らかにしました(科学誌 Natureに掲載)。これ以外にも、世界的に猛威を振るうマラリア感染症、骨粗鬆症や関節リウマチの原因となる免疫細胞の異常などWPI-IFReCからの研究成果が紹介されました。
竹田氏は、WPI-IFReCが日本国内で初めてとなる基礎研究段階からの産学連携契約を結んだ組織であることに言及しました。政府の科学研究にかける予算が十分といえない中で、学問の自由を守りながら基礎研究維持を図るこの画期的なシステムを全国に展開させたらいかがかという会場からの意見も得られました。

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セミナー後は10階ラウンジにて懇談会を開催しました。
各講演者の前には長蛇の列ができ、積極的に参加者との情報交換が行われるなど熱気あふれる懇談会となりました。 当日は民間企業、大学関係者など、65名の方にご参加いただき、参加者の皆様からは、「イノベーティブでユニークなアイディアと内容で非常に興味深かった。」「優れた技術が開発されていて見事」「他の研究内容も聴きたかった。」など多数のご意見を頂きました。

お越し頂いた皆様、ありがとうございました。

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