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イベントレポート

「再生医療事業の推進における課題と対応~安確法/品質トレーサビリティ/ステークホルダー間情報連携~」を開催(11/30)

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2022年11月30日(水)に日本橋ライフサイエンスハブとオンラインにて「『再生医療事業の推進における課題と対応~安確法/品質トレーサビリティ/ステークホルダー間情報連携~』LINK-J×LINK-J会員のタイアップイベント」を開催いたしました。

本イベントは、タイアップイベントの第3弾となります。
株式会社日立製作所と共催し、再生医療を用いた治療を予定するバイオベンチャー企業を主な対象として、事業化において課題となり得る大量生産、法規制対応、システム導入等に関する講演を行いました。
(主催:LINK-J、共催:株式会社日立製作所)

登壇者
飛田 護邦 氏(Gaudi Clinical株式会社 CEO)
中濵 数理 氏(由風BIOメディカル株式会社 代表取締役社長・CTO、博士(工学))
舟津 敏弘 氏(日立グローバルライフソリューションズ株式会社 CPC事業推進グループ 部長代理)
篠原 正典 氏(株式会社日立製作所 トータルシームレスソリューション統括本部 スマート医薬部 主任技師)

開会挨拶

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はじめに、株式会社日立製作所 産業・流通営業統括本部 第三営業本部 医薬システム営業部 部長代理である本田明氏による開会挨拶を行い、再生医療のトップランナーである登壇者の皆様を紹介しました。

講演

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飛田 護邦 氏
(Gaudi Clinical株式会社 CEO)

「安確法下の再生医療を支援するプラットフォーム事業」

続いて、Gaudi Clinical社の飛田氏より会社紹介、国内における再生医療の法規制の現状、事業紹介および取り組みの将来展望についてお話しいただきました。同社は順天堂大学発ベンチャーであり、再生医療の普及支援及び実用化促進等の事業を行っています。
まず、再生医療の法規制の現状について説明されました。過去に法規制が存在しなかった時期には、再生医療の輝かしい成果が生まれる反面、自由診療下での治療によるトラブルも生じていました。そのような状況を踏まえ、再生医療を実用化するための道筋として、自由診療・臨床研究を対象とする「再生医療等安全性確保法(安確法)」および、企業の製造販売を対象とする「医薬品医療機器法(薬機法)」が整備されました。
その後はそれぞれの法規制に基づいて治療法の開発・治療が行われ、薬機法下では難病や希少疾患などを対象とした再生医療等製品の開発が飛躍的に加速し、安確法下では歯科・整形外科・美容領域のQOL向上を目指した再生医療が多く提供されています。
再生医療の実用化の出口戦略に関して言うと、本来は薬機法に基づいて治験を行い、安全性と有効性を確認し、薬事承認を経て製品化を目指すのが理想であるものの、製品化が全ての再生医療技術の実用化出口にはなり得ないかもしれないと述べます。一方で、科学的妥当性を適切に評価した再生医療が、安確法下の治療として普及する道筋もあり得るかもしれないと述べました。
しかしながら安確法の課題として、
・治療として提供される再生医療の科学的妥当性の担保
・治療データ等を収集するシステム構築
・細胞培養加工施設の質担保等が盤石な状態ではないことや、クリニックなどの医療機関が再生医療による治療を行いたい場合でも、再生医療の提供に係る煩雑な諸業務・調整が重荷になることが挙げられます。
このような課題を解決するため、同社は下記の取り組みを行っています。

1.医療機関の近傍に、再生医療アウトソーシング窓口業務を担うキオスク型調製室を設置し、再生医療流通網の起点を整備
2.地域ごとに細胞培養加工施設(CPC)を整備し、スケールアウト型細胞製造の受託事業を実施
3.治療データ、患者評価及び細胞製造情報の再生医療データを収集支援
これらの実現に向け、アカデミアや株式会社日立製作所をはじめとした再生医療周辺企業と共創し、再生医療の情報・流通プラットフォームを構築することを目指して活動しています。

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中濵 数理 氏
(由風BIOメディカル株式会社 代表取締役社長・CTO、博士(工学))

「オキナワ型再生医療エコシステム実現への取組み」

続いて、由風BIOメディカル社の中濵氏より事業紹介、再生医療エコシステム、エコシステムの実現に向けた課題と同社の取り組みについてお話しいただきました。
同社は沖縄に拠点を置き、医薬品原料開発や再生医療CMO/CDMO事業を行っている企業です。沖縄県では、2022年度から10年間のバイオ関連産業振興計画に「健康・医療分野(特再生医療を含む)の推進」が盛り込まれている中で、同社は「令和4年度バイオ関連産業事業化促進事業」に採択され、民間主導での再生医療関連のインフラ整備や事業性検証、対外発信(沖縄再生医療のブランド化)等に取り組んでいます。
再生医療エコシステムの理想像として、利益・知見の大きな還元により、新たな再生医療研究に次々チャレンジできる好循環を実現し、再生医療が産業として自発的に発展していく状態を達成したいと述べられました。
加えて、産業振興施策や地域制度を活用した社会実証の場を形成し、民間事業者なども巻き込みながら再生医療エコシステム実現に向けた土壌を醸成することを目指しています。

再生医療の課題として、患者・医療機関・製薬企業それぞれの資金面での問題によりエコシステムが成り立たず、再生医療が衰退してしまう可能性や、品質/安心面での懸念が挙げられます。

資金課題に対する施策として、同社は沖縄の地域性と制度を活用して事業を推進しようとしています。具体的には、行政や観光リゾート業者、民間保険会社などとの相互連携を企画・促進していくことによって、「医療機関固有の集客力に依存しない施策の実施」「地域共生社会としての再生医療提供体制の構築」に挑戦しています。

品質/安心感に対する施策として、内部統制としての品質マネジメントはもちろんのこと、九州/沖縄地方最大級かつ安確法下で唯一、日立GLS製次世代モジュールCPC(最新型細胞工場)を採用し、ハード面から標準以上での管理を行っていることを対外発信していくことによって、一般消費者に対してもわかりやすい形で「見える化」しようとしています。
また、さらなる「見える化」施策として、薬機法領域において実績のある再生医療等製品バリューチェーン統合管理プラットフォーム(HVCT RM)を安確法下ではじめて適用する新たなシステムを構築し、医薬品同等の管理体制(=細胞薬等のトレーサビリティ担保)とステークホルダーのシームレスな連携を実現するプロジェクトを進めています。
これらの取り組みを通して、消費者に対して安心感を与えたいと述べました。

最後に、同社は再生医療CMOとして県外からの加工培養依頼も受託していることと、以下のような沖縄県の再生医療の強みをPRし講演をまとめられました。

1.沖縄に行けば「品質面でも安心感のある再生医療技術を享受できる」と思ってい頂ける環境と体制が整いつつある。
2.心身ともにケアできる温暖で自然に囲まれた環境は、再生医療施術後のダウンタイムを過ごすに適している。
3.再生医療を民間保険が適用される将来を構想中である。
4.「多くの再生医療技術の中からご自身にあったものを適切に選んでいただける」。このような体制が沖縄県で準備されようとしている。
5.沖縄県は、規模(人口・面積など)面、立地面(アジアの玄関口)、そしてそのヒストリーから、認知度向上にも社会実験に適した地域であり、是非、新しい再生医療技術を沖縄県から投入していってほしい。

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舟津 敏弘 氏
(日立グローバルライフソリューションズ株式会社 CPC事業推進グループ 部長代理)

「安確法下における細胞培養加工施設の課題と対応」

続いて、日立グローバルライフソリューションズ社の舟津氏より下記についてご講演いただきました。

・会社概要
・安確法下における細胞培養加工施設の課題
・日立次世代モジュール型CPCの紹介
・由風BIOメディカル社への納入例
・日立グローバルライフソリューションズの取り組み
・同社再生医療イノベーションセンタの紹介

同社は、空調を起点にクリーンルームで養った技術をCPC構築へ応用する事業を展開しています。具体的には、設計/構築から運用・持続まで対応した次世代型モジュールCPCやワンストップインテグレーションなどトータルでソリューションを提供しています。
安確法下での医療機関併設CPCでは、厚生労働省の許可が不要で届出制のため、CPCの科学的妥当性が担保されておらず質に大きなばらつきがある事が指摘されており、同社はその解決策として既存の医療機関併設CPCの改善・対策についても取り組んでいます。
同社は産業化とグローバル展開に対応すべく、安確法下では最も質が高いCPCとして考えられる由風BIOメディカル株式会社の施設事例も紹介されました。
GCTP省令対応や定期バリデーションなど管理にも対応しており、CPC導入だけでなく計画保守から日々の運用までお客様に寄り添ったサポートを提供いたします。

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篠原 正典氏
(株式会社日立製作所 トータルシームレスソリューション統括本部 スマート医薬部 主任技師)

「再生医療のバトンをつなぐセルジャーニーの実現~より多くの患者様に安心・安全な再生医療を!~」

続いて、日立製作所の篠原氏が講演を行いました。
生きた細胞を原料とする再生医療薬流通は、細胞採取・製造・輸送・投与まで多岐にわたり、多くのステークホルダーが関わりを持ちます。製造工程では、個々の検体の徹底した管理、入荷・培養における予定調整、製造記録、逸脱管理など再生医療分野ならではの対応が必要です。また、バリューチェーン全体では迅速かつ密な情報連携や徹底した温度管理などのより厳格な流通体制が必要です。
これらの製造工程やバリューチェーンをサポートするサービス「製造管理システム:HITPHAMS for RM」および「再生医療等製品バリューチェーン統合管理プラットフォーム:HVCT RM」についてご紹介いただきました。

HVCT RMは、より多くの患者様に安心・安全な再生医療を確実に届けるためのサービスであり、薬機法/安確法、さらには自家/他家由来の細胞のサプライチェーンにも対応しています。「トレーサビリティの担保」「スムーズで安全な情報連携」「治療スケジュール立案・共有」といった価値を提供します。実際の導入にあたっては、日立が考える標準業務フローを基にFIT&GAPを実施し、スピーディーかつ初期コストを抑えた導入を実現します。

HITPHAMSは、製造管理システムMES/品質管理システムLIMSを融合するとともに、再生医療薬製造業務における特長的な機能を実装しました。MES-LIMS一体化という特長により、「シームレスな情報共有」「イニシャルコストの削減」「管理工数の削減」に寄与します。具体的な機能としては、「検体管理機能」「工程変更機能、実績入力インターフェース機能」「特例出荷機能」などを実装しています。
同サービスもHVCT RMと同様にスピーディーで初期コストを抑えた導入が可能です。

また、最後にIT化を進めたいけれどもどこから着手してよいか分からない企業様を対象とした、再生医療に関わる業務のIT化に向けたグランドデザイン策定サービスについてご案内がありました。

閉会挨拶

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最後に、株式会社日立製作所 エンタープライズ ソリューション事業部 医薬システム本部 システムエンジニアリング部 主任技師の真野敦美氏より講演の統括と、今後の期待を述べたご挨拶をいただきました。

名刺交換会・HVCT RMおよびHITPHAMS for RMデモンストレーション

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今回はリアル会場とオンライン視聴のハイブリッド開催となり、リアル会場では、参加者と登壇関係者の情報交換やデモンストレーションの貴重な機会に熱心にご参加いただきました。
両会場合わせて300名近い方にご参加いただきました。
イベントにご参加の皆様、ご登壇者の皆様、誠にありがとうございました。

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