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イベントレポート

LINK-J×鶴岡サイエンスパーク『脱優等生が創るニッポンの未来』を開催(3/13)

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3月13日(火)、日本橋ライフサイエンスビルディングにてLINK-J×鶴岡サイエンスパークシリーズ第一回として「LINK-J ネットワーキング・ナイト WITH Dr.TOMITA」を開催しました。テーマは「脱優等生が創るニッポンの未来」。前半は冨田氏よりご講演いただき、後半はBeyond Next Ventures 株式会社の伊藤氏をモデレーターに迎えディスカッションを行いました。

「がん医療の最前線」「唾液一滴からがんを見つける」を切り口に、多くのテレビ番組やメディアで取り上げられるようになった鶴岡市。その取り組みの中心となっているのは、「メタボローム解析」を用いた研究です。現代の医療を変える技術となりうる研究はどうやって生まれたのか、冨田氏のこれまでと鶴岡の「今」について、熱く語られました。


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スペースインベーダーから人工知能の分野へ

医学と工学、両方の分野に進むきっかけとなったのが「スペースインベーダー」。途方もない時間とお金を費やしていたというスペースインベーダーへの熱意は、慶應義塾大学の代表選手としてテレビ番組の大会に出場するほどの腕前だったそうです。そのうち独学でプログラミングを勉強し、マイコンショップに自作のゲームを売るまでに。「コンピューター将棋」のプログラム制作などを通して人工知能の世界に入っていきました。カーネギーメロン大学に進み、患者の症状を自動音声翻訳する研究を紹介されました。転機となったのは、「ヒトゲノム計画」との出会い。たった1ギガバイトの情報で、どうやって複雑な生命を作り出しているのか?その謎を解き明かす研究に飛び込んでいきます。

鶴岡にしかない研究を

日本に戻り、大学より任命されたのが、鶴岡の先端生命科学研究所の所長でした。「一軍は東京にいる。地方にあるうちは絶対にうまくいかない」と周囲は冷ややかな反応でしたが、当時、分析機器メーカーに勤めていた曽我朋義氏をスカウトし、「鶴岡にしかないような研究をしよう」と熱心に説得しました。そして、熱意に動かされた曽我氏と一緒に世界で唯一の研究にチャレンジすることを決意します。細胞内の代謝物質を網羅的に一斉に測定するメタボローム解析技術を開発し、2002年に特許を取得しました。

2011年には、健康な人の血液と肝臓疾患の人の血液を比較し、代謝物の濃度に違いが出ることを発見。濃度の差から、9種類の肝臓疾患を識別できることに成功しました。

市民の9割が協力する健康調査

「鶴岡みらい健康調査」は、市民1万人の血液や尿を25年に渡りメタボローム解析するプロジェクトです。このプロジェクトは健康診断に来た人から血液を16ml余計に採取する必要があります。そこで、検査の内容をきちんと説明するとともに、「この調査に協力することであなた自身に得られるメリットはありませんが、この研究成果は子や孫の世代の未来の健康に役立ちます」と具体的にその意義を伝えたところ、市民の9割から同意が得られたそうです。

「コホート研究は6-7割が協力してくれたら大成功です。医師会、病院、市と市民がみな参加しています」と、産学官連携の一面を紹介されました。

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鶴岡発ベンチャーの先進的な活躍

本イベントの第2回以降にご登壇いただく鶴岡発ベンチャーもご紹介いただきました。

ヒューマン・メタボローム・テクノロジーズ株式会社は、2013年に東証マザーズ上場を果たしました。事業の柱はメタボローム解析。2016年にうつ病の判定をPEAの濃度測定で簡便にできる研究用キットを開発しました。世界中で特許を申請しており、メンタルヘルスを自分で管理できる時代が来ると紹介されました。

株式会社メタジェンは便の中の遺伝子や代謝物質を網羅的に解析して腸内細菌のバランスを調べ、健康な腸内細菌のバランスに近づけるような食品やサプリメント、創薬に関する研究開発をしています。特に食品会社の方に多く関心を頂いています。

株式会社メトセラは再生医療についての研究をユニークな視点から進めています。株式会社MOLCUREは、「バイオ医薬品界のGoogle」を目標に、有効な薬が見つかっていない疾患領域に対し有用な抗体を見つけ出すプラットフォームを作っています。

また、今回の鶴岡シリーズには登壇しませんが、株式会社WAKAZEという企業はマーケットを海外とし、洋食に合わせた日本酒造りに取り組んでいます。

第3回に登壇するSpiber株式会社は人工蜘蛛糸を大量生産できる素材の研究を進めています。当時NASAや米軍も進めているこの研究を始めたいと関山和秀氏(Spiber株式会社 取締役兼代表執行役)が言った時、誰もが反対しましたが冨田氏だけが背中を押したそうです。衣類だけでなく、輸送機器の部品や伸縮性のあるプラスティックの代わりになることで、本当に社会を変える可能性があると強調されました。

冨田氏にとって「普通は0点」。人がやらないことをリスクを取って実行することが大切だと述べました。人と違うことをする勇気を持つこと、その人たちを応援する勇気を持つこと、そして例え失敗しても「ナイストライ」と周りから拍手されるような社会になるべきだと訴えました。

みんな鶴岡に巻き込まれている ~パネルディスカッション~

続いて行われたパネルディスカッションでは、伊藤 毅氏(Beyond Next Ventures 株式会社 代表取締役 マネージングパートナー)をモデレーターとし、「人と違うことをする人をどう育てるのか?」という質問からスタートしました。

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「そもそも人を教育することはできないと思っています。本当の意味での教育とは本人が成長することを『邪魔をしないこと』。夢は大きく、失敗してもいいから思いっきりチャレンジできる環境を整えることが大切。」と述べました。

「普通ではないことを実践していくには何が必要なのか?」という伊藤氏からの問いに、冨田氏は、

「イノベーションを起こすにはどうしたらいいか?という相談を経営者の方から受けました。もちろん簡単ではないですし、時間がかかります。リーダーになりそうな人材を選抜し『環境』を用意し信頼して自由にやってもらうこと。そう勧めたところ、すぐに新規部署を作り、鶴岡に社員2人送り込んできましたよ。このスピード感と腹の座り方が大事ですね。」と述べました。

「そうやって、みんな鶴岡に巻き込まれていくんですね」と伊藤氏が会場を沸かせました。

投資についても「確実に黒字にさせて回収しようという投資家が多い。捨て銭のつもりで投資しないとイノベーションは起こらない。多くの人は利益を得ることが目的でそのための手段としてベンチャーがある。そして株式上場をEXIT(出口)と言うが、私たちはそれは違うと思っています。自分たちの革新的技術を実社会に持続的に実装していくためには利益を出す必要がある。利益を得ることはあくまでも手段なのです。」と主張されました。

講演の後は10階ラウンジにてネットワーキングタイム。賑やかな交流の場となりました。

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次回の鶴岡シリーズ第2回は5/21(月)に開催いたします。第3回は7/2(月)、そして9月には2018年夏にオープン予定の「SUIDEN TERRASSE」(ヤマガタデザイン株式会社)に宿泊する鶴岡実査ツアーを予定しています。

第12回 LINK-J ネットワーキング・ナイト WITH SUPPORTERSは、「ドクターとAI の協力がもたらす医療現場の革新」を4/20(金)に開催いたします。いずれも奮ってご参加ください。

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