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イベントレポート

第22回 LINK-Jネットワーキング・ナイト「革新的なワクチンを開発する VLP Therapeutics - 米国での起業、マラリア、デング熱、がんワクチンへの挑戦-」を開催(11/14)

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11月14日、日本橋ライフサイエンスビルディング10階会議室にて、第22回目となるLINK-Jネットワーキング・ナイト「革新的なワクチンを開発する VLP Therapeutics-米国での起業、マラリア、デング熱、がんワクチンへの挑戦-」を開催しました。

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本イベントは、VLP Therapeutics社の出資者でありLINK-Jサポーターでもある鎌田富久氏をモデレーターとし、同社の創業者である赤畑渉博士に米国でのワクチンの開発についてご講演いただきました。

【講演】赤畑渉氏(VLP Therapeutics CEO)
【モデレーター】鎌田富久(TomyK Ltd.代表、株式会社ACCESS共同創業者)

アルファウイルスを用いたワクチン開発  米国ベンチャーの立ち上げから開発へ

赤畑氏は、2002年から10年間、NIH(National Institutes of Health)のワクチン研究センターにて、HIVなどのワクチンを研究開発に携われていました。その際に、VLP(Virus-Like Particle)を使ったチクングニヤウイルス(Chikungunya virus)のワクチンをはじめ、三つの馬脳炎(ベネズエラ、東部、西部)を含め、全部で4つのVLPワクチンを開発され、2013年にVLPを使った新規性の高いワクチン開発のため、メリーランド州にVLP Therapeutics社を設立されました。

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VLPとは、ゲノムを持たないウイルスと同じ構造をもったカプシド(殻)のことです。これまでにB型肝炎ワクチンや、子宮頸がんワクチンなどに応用されてきました。同社はこのVLPを作る技術を活用し、感染症(マラリア、デング熱など)やがんに対するワクチン開発、およびレプリコンシステムとして、遺伝子治療への応用を目指しています。

基盤技術の「i-α-VLP Platform」は、VLPの表面に2種類の抗原を高密度に配置することが可能で、その対称性の美しさと、抗体への反応性の良さが特長となっています。対称性の高い抗原を提示することで、既存製品よりも強い反応性を示すことが確認されています。また、このプラットフォームを利用することで、新規の抗原を挿入し、あらゆる疾患へのワクチン開発への可能性が紹介されました。

がんワクチンの開発

また、赤畑博士は、免疫チェックポイント分子をVLP上に発現させることにより、より効果的ながん免疫療法の開発にも着手されています。通常のがん免疫療法と比べ、がんワクチンでは、反応時間、コスト面でメリットがあるといいます。VLP上にPD-1、PD-L1を発現させて、VLPワクチンによる乳がんモデル・マウスでの実験結果などが示されました。「事業では、新規ターゲットによるがんワクチンを作り、がん治療の一つの手段として確立していきたい」と述べられました。

遺伝子導入技術への応用

VLPに遺伝子を導入することで、遺伝子治療としての可能性も示されました。がんの微小空間に入り込む免疫細胞にはマクロファージが多いことから、VLPをマクロファージに感染させ、M2マクロファージからM1マクロファージに戻すことでがんを治療するという方法が紹介されました。

感染症ワクチンの開発

デング熱患者は世界的に増加傾向にあり、マーケットは非常に大きいと考えられています。デング熱の既存ワクチンでは、中和するのに不十分な抗体が引き起こすADE(Antibody Dependent Enhancement)の問題や、現在の開発された生ワクチンの対象が9~45歳に限られているという問題があり、VLPワクチンによる新しい解決方法が示されました。

赤畑氏は、「安全なVLPワクチンによって、9歳以下の患者を対象に、既存製品と差別化していきたい」と述べ、長崎大学、国立感染症研究所と共同で、開発を進められており、2019年にマラリアワクチン、2020年にデングワクチンの臨床試験開始を目指しています。

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質疑応答では、まずモデレーターの鎌田氏より、「起業しようと思ったきっかけ」「米国で起業することの利点」について、質問が投げかけられました。赤畑氏からは、「1年ほど悩んだけれども、周囲の後押しや勇気によって起業を決意したこと」、「現在、会社のメンバーは6人だが、米国にはCMC(品質管理の規格基準)対応でかつ格安で委託できるCMO(製造受託機関)が数多くあるため、製造のアウトソースできる部分は全て外注し、自社は集中したい部分に注力できることがメリットがある」などをお話いただきました。

会場からも感染症研究に関心のある参加者より、多数質問が上がり、技術の詳細や製造上の課題、日本においてビジネスをする際の問題点などが議論されました。

講演後は10階コミュニケーションラウンジにて、ネットワーキングが行われました。当日は、約50名の方にご参加いただき、参加者からは「ワクチン開発の最前線のリアルな経験が聞けて感銘を受けた」、「イノベーティブかつ野心的な話を拝聴できてモチベーションが上がった」、「画期的(安全面、効果、コストetc)なワクチンということが伝わり、とてもワクワクする内容だった」などのご意見をいただきました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

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