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イベントレポート

「第29回 LINK-Jネットワーキング・ナイト WITH SUPPORTERS 東京大学発スタートアップの勢いがスゴい!」を開催(4/9)

4月9日(火)、日本橋ライフサイエンスビルディングにて「第29回 LINK-Jネットワーキング・ナイト WITH SUPPORTERS 東京大学発スタートアップの勢いがスゴい!」を開催いたしました(主催:LINK-J)。
本イベントでは、国内大学最多のベンチャー創出数を誇る東京大学による、スタートアップ創出の取組みをご紹介しました。
はじめに、鎌田 富久 氏(TomyK Ltd. 代表 / 株式会社ACCESS 共同創業者 / LINK-Jサポーター)より、開会のご挨拶と本日のイベント概要をご説明頂きました。

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~ 世界に東大チームを送り込む Todai To Texas ~

「TTT 概要、SXSW2019 速報」
下川 俊成 氏 (Co-Founder / Organizer of Todai To Texas)から、今年3月にアメリカテキサス州で開催されたサウスバイ・サウス・ウエスト(SXSW)2019でのTodai To Texas (TTT) の概要速報をご紹介頂きました。
TTTは、東京大学関連の技術系スタートアップやチームをSXSWに送り出し、世界デビューさせることを目的としたプログラムです。大学内で開催されるコンペティション(TTT Demo Day)を勝ち抜いたチームがSXSWに出展します。過去、このイベントへの出展をきっかけに、TV放送や資金援助を得るなどのチャンスをつかんでいます。2019年は、7チームがTrade Show(見本市)に出展し、ピッチセッションにも登壇しており、チームの概要をご紹介頂きました。

「ロボティック義足の事業化」
孫 小軍 氏(BionicM 株式会社 CEO & Founder。2017年TTT参加)より、昨年12月に起業されたBionicM 株式会社で開発中のロボティック義足についてご紹介頂きました。
孫氏は、自らも義足ユーザーであり、ロボティクスの技術を組み込んだ義足の開発に取り組んでいます。開発中の高機能義足は、筋肉の動きを模倣するアクチュエーターを搭載し、自然な動きを実現するとともに、ファッション性を備えています。昨年、東京大学エッジキャピタルから資金を得て、現在は商品化に向けた開発を進められています。

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「片耳難聴者のためのメガネ型デバイス asEars」
高木 健 氏(asEars リーダー / 東京大学大学院 情報理工学系研究科 修士1年。2018年TTT参加)より、開発中の片耳難聴者のためのメガネ型デバイスasEarsをご紹介頂きました。

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片耳難聴の症状を持つ人は国内に500万人ほどいると考えられますが、補聴器は難聴者の2割未満しか使っていません。そこに課題を見出し、聞こえる側の耳に、骨伝導スピーカーを介して伝えることで、片耳の機能を拡張するメガネ型の聴覚拡張デバイス(asEars)の開発に取り組んでいます。

「GRA&GREEN」
本多 正俊志 氏(GRA&GREEN Inc., 共同創業者 & COO。2019年TTT参加)より、不可能とされてきた別種(異科)の植物を組み合わせる、GRA&GREEN社の革新的接ぎ木技術をご紹介頂きました。
GRA&GREEN社は「タバコを介すれば、あらゆる種をつなぎ合わせることができる。」という発見と、最新のゲノム編集技術を組み合わせて、さまざまな分野で応用可能な革新的接ぎ木技術を開発しました。世界で30以上の特許を取得し、事業を進められています。食糧問題解決や新薬開発などに貢献する、新たな技術として注目が集まっています。

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「LevioPole」
佐々木 智也 氏(東京大学 先端科学技術研究センター。2019年TTT参加)は、「魔法の杖を作る」という目標をかかげ、容易に持ち運べて様々な触覚体験を実現する棒(ロッド状のデバイス)LevioPoleの開発に取り組まれています。LevioPoleは、棒の両端に小型のドローンが取り付けられた構造をしており、空中で2機を並進させて動かしたり、2機の速度を変えて回転方向の力を提示したりすることも可能です。また、VR技術とLevioPoleを組み合わせ、実体験に近い触覚も再現できます。

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「jellysurf」
江川 主民 氏(東京大学 学際情報学府 博士2年。2019年TTT参加)より、サーフィンのやり方を光って教えてくれるサーフボード、jellysurf をご紹介頂きました。
jellysurfはセンサーとLED、通信モジュールを備えた光るサーフボードです。発する光の色やパターンで、サーフボードの状態を可視化できます。開発の目的は"サーフィンを科学的に解明し、技能共有や表現の拡張をすること"です。現在、エンターテインメント性を高めるパフォーマンス用ツールとして、そして、コーチングアプリケーションを搭載したトレーニング用ツールとして開発が進められています。

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~パネルディスカッション~

下川氏をモデレーターに、孫氏、高木氏、本多氏、佐々木氏、江川氏にご登壇いただき、パネルディスカッションを行うとともに、会場からのご質問にお答えいただきました。

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会場:魔法の杖やサーフボードは、リハビリにもポテンシャルがある製品では?介護や福祉への領域でアプローチしていく可能性はありますか。

江川氏:企業から、そういった話は頂くが、私自身は「プロがスポーツだけで食べていけない」ところに問題を見出しています。その問題を解決するため、サーフィンを科学的に解明したい。その中で、人間の能力について明らかになり、リハビリ等への応用ができればと思います。

佐々木氏: 僕自身は、「魔法の杖を作る」という楽しい目標を達成することがモチベーションになっており、今はそのモチベーションを大切にしたいです。「魔法の杖」ができれば、いずれは介護やリハビリも含め、産業用として応用も可能になると考えています。

会場:話を聞き、ニーズドリブンで始まったプロジェクトが多いと感じます。しかし、一度シーズを手に入れると、これをどう使うかシーズドリブンに変わってしまいます。これにより、クリエイティビティが失われてしまう恐れはないのでしょうか。起業すれば、会社を維持しなければならないというプレッシャーもある中、どうバランスをとりますか。

孫氏:会社として生き残るためにどうすべきかを考えるとイノベーティブになれない部分も確かにあります。しかし、googleなどの大企業の例を見ても、企業が大きくなれば、新しいことができる環境が生まれてくるので、今はできなくてもいずれはという思いです。

鎌田氏:大学発スタートアップの場合は、課題が目の前にあることは珍しく、技術ドリブンの場合が圧倒的に多いです。面白い技術があるが、どう使っていいかわからない。だから、ニーズやマーケットを見つけに行く必要があります。そういう意味で、SXSWは格好の場所。SXSWでどんなニーズがあるか、どんな使い道があるか、教えてもらえます。

このほか、会場から、SXSWに出展して良かった点、起業のモチベーション等の質問が出ました。

~ 東大発スタートアップ・エコシステム拡大中 ~

「東京大学のスタートアップ創出の取り組み」
菅原 岳人 氏(東京大学 産学協創推進本部 イノベーション推進部 ディレクター(インキュベーション / アントレプレナーシップ教育))より、東京大学のスタートアップ・エコシステム創出の取組みをご紹介頂きました。

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東京大学では、エコシステムとして、資金調達(東大IPC、UTEC)、技術移転(東京大学TLO)、エンジェル等のネットワーク支援の他、インキュベーション施設の運営を行っています。インキュベーション施設は急拡大しているところで、2018 年 10 月開所の新施設「東京大学アントレプレナーラボ」では、シェアラボ(実験ベンチやバイオ系の実験機器をシェアできる)も設置し、環境安全に関するレギュレーションも大学の制度を転用して、東大の技術を活用しているライフサイエンス系スタートアップの入居を募集しています。

また、アイディア作りの段階から支援するプログラム、Found Xでは、対象を学生限から卒業生にも拡大しました。現役学生には、プロダクト開発支援の「本郷テックガレージ」もあり、プロダクトとプロジェクトを沢山作ろうとしています。教育系プログラムでは、アントレプレナー道場を2005年から運営し、受講生が卒業して社会人経験後、起業することも含めてスタートアップに参加するなど、長期的なイノベーション人材排出の役割も担っています。さらに、グローバルの観点では、海外に派遣する例も増えています。

教育系プログラムの参加者には、起業することではなく、プロジェクトを始めて顧客や市場と対話することを促しています。東大周辺で生まれるプロジェクトの母数が拡大することにより、結果的に事業化されてスタートアップになる数が増加して質も上がるという仮説のもとで、エコシステム創出に向けた支援を行っています。

~ 対談 菅原氏×鎌田氏 ~

菅原氏と鎌田 富久 氏(TomyK Ltd. 代表 / 株式会社ACCESS 共同創業者 / LINK-Jサポーター)にご登壇いただき、東大発スタートアップに関する内容でご対談頂きました。


鎌田氏:今年のSXSWは日本からの来場、出展者が増えました。

菅原氏:無名の会社がSXSW後に注目されて大きくなり、商機をつかんでいます。大企業のオープンイノベーションについても、プロトタイプ段階でユーザーからの反応を見るのであれば、SXSW は良いのではないでしょうか。欧米では市場を見て開発の継続を判断します。日本の展示会の多くは、プロト段階で市場からの反応を得る場としてはあまり活用されていませんでしたが、最近はそうした動きが出てきたかもしれないですね。

鎌田氏:大学は教育と研究の役割のほか、今は社会実装も大きなミッションになっています。キーポイントとしては、東大では失敗できる環境を作り、経験が将来生きればよいという考え方で、最初はビジネスになるかは問わない。まずやってみることを勧めていますね。

菅原氏:ユーザーがいるかは確認しますが、ともかくプロジェクトを立ち上げています。大成功するわけではなくとも3回程経験すると、質の良いものになります。

鎌田氏:夏休みや春休みを中心に、テックガレージで学生プロジェクトの支援のお手伝いをしていますが、案件として進めるか迷うものもありますが、まず、やらせてみようとなることが多いです。それくらいの柔らかさでチャレンジしてもらうのが、エコシステムの創出としてはよいでしょうね。

菅原氏:ビジネスサイドの許容度が広いことは強みです。また、参加した学生も、スタートアップの人材としてエコシステムの中でどこかの会社で働き、他に移るというのは自然に発生しています。業務の拡大に合わず、他に移る等の例もあって、それはキャリアの失敗でもなく、セーフティネットになっています。

鎌田氏:人のつながりやマッチングについては、東大生に限らず、芸大生のデザイナーが参加するなど面白い展開もあります。ただ同じ言葉を話していても全然通じていないことなどありますね(笑い)。

菅原氏:TTTも東大IPCの起業支援プログラム「1st round」も、コアメンバーの中に東大出身の人が一人でもいればサポート対象となります。そうした起業は、苦労も多いが応援しがいがあります。

鎌田氏:ラボができて、ウェット系メディカル系も起業支援できる体制になっています。

菅原氏:海外を見ると、ボストンなどにはスタートアップが気軽にウェット系の実験を開始できる支援環境があります。利用料は安くないが、スピード感があって。東大はライフサイエンスでのスタートアップも多く出ており、サポートしていきたい。

鎌田氏:スタートアップをやる人は、従来IT関係やエンジニアリング系が多かったが、医学部、薬学部、農学部等からライフサイエンスのチームに入ってくるようになりました。ラボが出てきて、勢いがつく気がしますね。

菅原氏:医学部学生が簡単に起業するようになり、医療の道とどちらの方が良いかというのもあるが、医学のバックグラウンドがある人が起業する例も出ています。

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会場:エコシステムについて今後の支援策や取組の展望をどのように見ますか?

菅原氏:今後は人材分野に力を入れたいです。サイエンスがわかる経営者は圧倒的に不足しています。一方、優秀な人材は、既存の大企業にいますので、そこをうまくパス回しする仕組みを考えています。卒業生を受け入れる窓口を作ったので、人材プールを蓄積していきたいです。

鎌田氏:支援してほしい企業やプレーヤーの方はいますか。

菅原氏:大企業の理解をいただくことです。今後、同じ会社で長く働き続けることはないので、優秀な社員がスタートアップで働けるよう、会社内に応援する場を作ってほしいです。そうした人の流動性の仕組みが構築できないと、日本の産業競争力は落ちると思います。

鎌田氏:テクノロジーの進化が早いので、20代で学んだことだけでは一生やって行けないので、リカレント教育もセットにして起業を支援するのは良いかもしれないです。その上で、次にやりたいことは、出てきたスタートアップを大きく育てること。資金調達もしやすくなりましたが、大きくはばたくのはチャレンジングです。大企業の資金を回してもらい、大きな社会課題を解決できると良いと思います。日本が先駆けてイノベーションを起こせたらと思います。

会場:日本の中で、東大エコシステムのすごさをどのように捉えていますか。また、海外でチャレンジする際、東大や日本チームが目指すべきもので感じるところはありますか。

菅原氏:東大の中で技術面、人材面での質は高いと感じています。しかし、ビジネスにつなげるためのサイクルが円滑に回せてはいませんでしたが、ロールモデルとなるスタートアップや研究者は出てきており、後輩に伝授するようにはなりました。IT 系は4サイクル、LS は1サイクル程度回ってきたところです。これらをうまく活用できるようにエコシステムを構築してきたのです。

鎌田氏:海外に関して、シリコンバレーや中国等でのスタートアップは強く、ネットの世界、AIの世界では強力だと感じます。一方、メカニクスやAIとサービスが組み合わさった、リアル社会の課題を解決する分野になってくると、日本が有利かもしれないです。日本ではきめ細かく質が高いものを作れるので、そこにAIなどのソフトウェア技術が組み合わさると強みを発揮できるのではないでしょうか。起業のテーマも社会へのインパクトになって、社会課題の解決にやりがいを感じる起業家が出てきており、若者たちが立ち上がってきたのは期待できるポイントです。

セミナー後は、10階ラウンジにて懇親会を開催しました。

当日は、大学関係者や企業の方々など約100名の方にご参加いただき、誠にありがとうございました。

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