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イベントレポート

第16回 LINK-Jオンライン・ネットワーキング・トーク「アフリカでのヘルスケア分野におけるイノベーション最前線」を開催(8/27)

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2021年8月27日(金)、LINK-Jは「第16回 LINK-Jオンライン・ネットワーキング・トーク アフリカでのヘルスケア分野におけるイノベーション最前線」をオンラインにて開催しました。
今回はJETRO元ナイロビ所長で、現ビジネス展開・人材支援部 海外サプライチェーン多元化等支援事業支援事務局 主幹を務める直江 敦彦氏に、日本とアフリカのビジネスの現状についてお話しいただき、続いて、アジア・アフリカ・インベストメント&コンサルティング(AAIC)創業者、代表パートナーを務める椿 進氏に、アフリカにおけるメディカル・ヘルスケアビジネスの俯瞰と総括についてご紹介いただきました。
実際にリップフロッグ・イノベーションを体現しているアフリカのメディカル・スタートアップ企業二社の取り組みについてお話を伺いました。
本イベントは421名の方に視聴のお申し込みをいただき、ご好評いただきました。

(※画像をクリックすると動画がご覧いただけます)

登壇者
直江 敦彦 氏(JETRO ビジネス展開・人材支援部 海外サプライチェーン多元化等支援事業支援事務局 主幹)
椿 進 氏(アジア・アフリカ・インベストメント&コンサルティング(AAIC)代表パートナー)
Ms. Ifeoluwa Olokode(Head, Partnership of Helium Health)
Dr. Adham Yehia(Co-founder and Co-CEO of DrugStoc)
Dr. Chibuzo Opara (Co-founder and Co-CEO of DrugStoc))

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アフリカビジネス概況.pdf

「日本とアフリカのビジネス現状」
直江 敦彦 氏(JETRO ビジネス展開・人材支援部 海外サプライチェーン多元化等支援事業支援事務局 主幹)

アフリカでこれから事業を興そうと考えている方に向け、アフリカの基本情報からアフリカ経済の概況、またナイロビ事務所長時代に日系企業のアフリカ進出支援に携わられたご経験を元にリアルなお話まで幅広いテーマでお話を伺うことができました。
直江様より、視聴者の方へ投影資料をご共有いただきましたので、合わせてご活用いただけますと幸いです。成長が著しいアフリカ市場でのビジネスを検討する際にはJETROにお声がけいただけると支援が出来るのでご相談いただきたいとご案内いただき講演を終えられました。

スクリーンショット (533).png「アフリカにおけるメディカル・ヘルスケアビジネスの俯瞰と総括」
椿 進 氏(アジア・アフリカ・インベストメント&コンサルティング(AAIC)代表パートナー)

椿氏は、日系企業がアフリカにおいてメディカル・ヘルスケアビジネスを展開するにあたり、
3つのポイントに注目する必要があると述べられました。

1. アフリカ諸国の課題は感染症(CD)から非感染症疾患(NCD)へ変化
直江氏の講演にもありましたが、過去において、三大感染症(HIV/AIDS、マラリア、結核)による死亡者が多いことはアフリカ全体で大きな課題でしたが、教育や援助、薬の普及により、大幅に死亡率が低下、感染症対策では一定の効果が出ていると説明いただきました。
その一方で、近年は非感染症疾病(慢性疾患や現代病)による死亡が増えていると直江氏、椿氏両氏は指摘します。
また、慢性疾患による死亡には検診制度がないこと、貧弱な国民健康保険制度が影響しているとご説明いただきました。例えばケニアでは、年間3万人のがん患者がいるが、自覚症状が出てから受診するため、9割の人が受診の段階でステージ4という状況にあることや、国民健康保険制度の普及率については、ケニアでは20%、タンザニアで10%、ナイジェリアでは3%程度に留まっている現実に触れられました。

2. リープフロッグイノベーション(蛙飛びイノベーション)
レガシーや既得権益者が少ないことから、先端技術・ビジネスモデルを使ったメディカル・ヘルスケアビジネスが次々と生まれていると指摘されました。特にスマートフォンを活用したヘルスケアビジネスが盛んであると述べられました。

3. タイムマシン・モデル
かつての日本に起きたことが、今現在のアフリカで起きているということから、タイムマシンに乗って50年前の日本に戻ったような感覚で、今のアフリカを見ることが出来るとご発表いただきました。
例えば、日本で一人当たりのGDPが3000ドルを超えたのは1972年でしたが、2021年現在、アフリカの主要国の多くは一人あたりGDPが2000から3000ドルを推移していることを例に挙げられました。

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"Helium Health Company Overview"
Ms. Ifeoluwa Olokode(Head, Partnership of Helium Health)

Helium Healthは、ナイジェリア発で当地No.1の電子医療記録※1(Electronic Medical Record、以下EMRと記載)/電子健康記録※2(Electronic Health Record、以下EHRと記載)を提供するヘルステック企業です。
同社はナイジェリアを中心に現在300超の医療機関に展開しており、ケニアや他地域へのサービス拡大を現在推進しています。
※1電子医療記録(EMR)・・・電子カルテシステムを中心とした医療機関内部の情報システムに蓄積された診療情報を指す。
※2電子健康記録(EHR)・・・個人のあらゆる医療情報、診療情報を電子媒体に記録・管理、その情報を各医療機関の間で共有・活用する仕組みを指す。

Olokode氏は冒頭、アフリカ諸国の課題として下記を挙げられました。
多くの病院が旧態依然な診療情報の管理方式を取っています。具体的には、患者さんの診療情報を紙ベースで管理しますが、ボイラー室を管理場所として使用、患者さんの診療情報の紙を積み上げて集積させている状況であり、診察時、医師に渡すためその書類を一枚一枚探している現状があると述べられました。(写真1)

スクリーンショット (574).pngのサムネイル画像 そのようなデジタル化とは程遠い管理方法は、適切であるとは言えず、患者さんからすると本当に自身の診療情報を医師が参照しながら診察を受けられているのか確証が持てないとし、信頼性の低いデータを使用した医療体制となっていると指摘されました。
このような管理体制は、アフリカ諸国の医療システムを機能不全に陥らせている原因となっていると強調します。同社はこの課題を解決するために、下記サービスを提供しています。

1. 受診から決済までオンライン上で完結出来るプラットフォームの構築
(サービス内容)
・遠隔医療サービス
・個人のあらゆる医療情報、診療情報を視覚的に分かりやすく、直感的に使用可能な医療カルテシステム
・医療費のオンライン決済システム

2. AIを活用した融資プラットフォームの構築
・病院、薬局、研究所に対し、無担保で即座に融資が可能

3. 公衆衛生向上のソリューション
・公衆衛生上の緊急事態にはEMRで集積されたヘルスケアデータに元に、エビデンスに基づいた政策策定が可能

4. Heliumデータネットワーク
 ・Helium Healthのクラウドに集積されたビッグデータへのアクセスにより、研究や政策立案、市場参入などのための情報をヘルスケア関係者(政府、研究機関、アカデミアなど)にデジタルインフラとなる一連のソリューションを提供可能。

最後に、投資や研究、アフリカ市場への参入・拡大を検討している日本の企業や団体と協業していきたいという発言で講演を終えられました。

ご連絡先:ifeoluwa@heliumhealth.com

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"DrugStoc Company Overview"
Dr. Adham Yehia(Co-founder and Co-CEO of DrugStoc)
Dr. Chibuzo Opara (Co-founder and Co-CEO of DrugStoc)

DrugStocはナイジェリアのEC(電子商取引、以下ECと記載)専業医薬品卸企業です。同社は医薬品卸をDX化(デジタルトランスフォーメーション)し、24時間受付・ECでの製品販売・自社倉庫からの直配送を実現しています。医療機関・薬局と卸を繋ぎ、7,000以上の医薬品、医療消耗品を取り扱います。
ラゴス市内の医療機関・薬局から注⽂が⼊り次第、24時間以内にデリバリーを⾏っており、現在70の病院、300の薬局と取引を行なっています。

ナイジェリアで製造元が販売している正規の医薬品を購入するには、世界の平均的な市場価格の2~64倍を支払わないと手に入らないとAdham氏は指摘します。
その理由として、製造元と市場の間に中間業者が関与していることが挙げられます。
例えばファイザー商品を購入するにも、200もの中間業者が存在、市場に出回っている医薬品の価格設定は非常に高く、同一商品であるのに値段は業者により異なり、買い手側に交渉スキルがないと割引を得られない、また偽造品や品質に疑義のある商品が流通しているため、医療従事者や一般の人がその悪影響を受けることになると説明されました。
製造元は中間業者に代わるプロフェッショナルなチャネルがないことから、医薬品の販売に際し、中間業者を利用するしかない事情がありました。
両氏は患者さんが安心・安全に医薬品を使用することを最重要視、医薬品の価格設定の透明性を追求し、正規品を正当な価格で得られる仕組みを作りたいという理由から2016年に創業しました。
ナイジェリアの医療機関や医師、看護師などのライセンス所持者、薬局のみがDrugStocにアクセスできる仕組みで、ヘルスケア領域にいる人が必要とする商品を取り扱っています。
また、取り扱うすべての商品が追跡可能で、製造元の倉庫から手元に届くまでトレースすることで、正規品であることを証明、品質を保証しています。

最後に、日本は新興国のヘルスケア市場を変えることが出来る相手であり、ヘルスケア領域において重要な貢献を果たしていると述べられました。
日本のバイオメディカル企業、製薬企業で、アフリカ市場へ進出しシェアを拡大したいと考えている企業にとって、DrugStocはコラボレーションのパートナーとして最適であると述べられ、協業先や投資先など様々な形でのパートナー候補として検討していただき、将来的にコラボレーションしていきたいというお言葉で講演を終えられました。

ご連絡先:a.yehia@drugstoc.com / c.opara@drugstoc.com

スクリーンショット (617).png

講演の後には活発なディスカッションが行われました。
イベントにご参加の皆様、ご登壇者の皆様、誠にありがとうございました。
なお、今回のウェビナーについては、LINK-JのYouTubeチャンネルにて公開いたします。
是非ご覧ください。ぜひYouTubeチャンネルへのご登録もお願いいたします。

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