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イベントレポート

「慶應義塾大学発 医療系ベンチャー創出に向けて 2020」を開催(7/13)

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7月13日、オンラインにて、「慶應義塾大学発 医療系ベンチャー創出に向けて 2020」を開催しました。

前半は、坪田一男氏と中村雅也氏により、ベンチャー創出の取り組みや医療系ベンチャーを取り巻く現状、最新情報をご紹介いただき、後半は日本初の医学部主催ビジネスコンテスト「健康医療ベンチャー大賞」の出場者からプレゼンテーションが行われました。

【講演】
坪田 一男 氏(慶應義塾大学医学部眼科学教室 教授/日本抗加齢医学会理事/慶應義塾大学医学部発ベンチャー協議会代表)
中村 雅也 氏(慶應義塾大学医学部・学部長補佐(産学連携・広報担当)/慶應義塾大学医学部整形外科学教室 教授/日本整形外科学会代議員/日本再生医療学会理事)

【プレゼンテーション】
1)中島 大輔 氏 株式会社グレース イメージング 代表取締役
  第3回慶應義塾大学医学部 健康医療ベンチャー大賞 社会人部門優勝

2)平岡 悠 氏 株式会社GramEye 代表取締役
  第3回慶應義塾大学医学部 健康医療ベンチャー大賞 学生部門優勝、LINK-J×慶應義塾大学賞受賞

3)清水 映輔 氏(株式会社OUI 代表取締役/慶應義塾大学医学部眼科教室 特任講師)
  矢津 啓之 氏(株式会社OUI 取締役/鶴見大学歯学部附属病院 眼科 専任講師)
  中山 慎太郎 氏(株式会社OUI海外戦略部 部長)
  逆瀬川 光人 氏(株式会社OUI 経営戦略室長)
  第2回慶應義塾大学医学部 健康医療ベンチャー大賞 優勝・オーディエンス賞受賞

健康医療ベンチャーのごきげん事業戦略

坪田一男先生は、慶應義塾大学医学部発ベンチャーとして、株式会社坪田ラボ2015年に設立されました。株式会社坪田ラボは、「イノベーションで、世界をごきげんに、健康にする」を合言葉に、バイオレットライトで世界を健康にすることを使命とし、新しい世界価値を模索しています。

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坪田先生は起業するにあたっては「ごきげん事業戦略」が重要であると述べられています。
ごきげん事業戦略とは、以下の3つの戦略を指します。
1)会社がごきげん
2)働く人がごきげん
3)社会もごきげん

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第一に「会社がごきげん」とは、経営が黒字であることです。
開発型ベンチャーは、開発に時間も費用もかかるので、赤字に陥りやすいのですが、ごきげんベンチャー戦略の場合は、成長はゆるやかですが、常に黒字という状態を指します。例えば、株式会社坪田ラボでは、コンサルティング事業、めがねやサプリメントなどの5製品の販売等も合わせ、利益を作り出しています。同時に、将来ロイヤリティーを得るために、パートナー企業との共同開発・開発契約を行っています。

第二に、「働く人がごきげん」とは、まさしく働く人がごきげんでいることです。
ごきげんとパフォーマンスの関係は深く、幸福感の高い社員の創造性は3倍、生産性は31%、売り上げは37%高く、人生満足度が高い従業員が働いている小売店の店舗面積利益は他店のそれよりも21ドル高いという調査結果もあります。(前野隆司先生講義より。ハーバードビジネスレビュー20125月号)
そのため、株式会社坪田ラボでは、コロナ禍でもオンラインパーティを開催したり、会議の際には、会社のビジョンを共有する時間を設けたりと、コミュニケーションを密にしています。さらに、能力とチャレンジのバランスが取れた事業を行っています。その結果、株式会社坪田ラボでは、コロナ禍においても事務所移転、新しい人材の確保を行い、国際営業をするなど、安定した成果を得ています。

第三に、「社会もごきげん」とは、Creating Shared ValueCSV)経営です。このCSVとは、ハーバードのマイケル・E・ポーター教授が提唱された概念で、利益をあげながら社会の課題を解決するという概念です。坪田先生は最初からCSVを狙って起業されました。
坪井先生は、ベンチャー企業について、社会課題の解決を通じて事業の価値を高めることができ、なおかつ人々から応援してもらえる存在になることが出来る稀有な存在であると述べられました。

最後に、会社をごきげんにするために、みんなのアイディアを集めて、黒字化を真剣に考え、働く人がごきげんになるために、会社の存在意義やビジョンを共有し、CSV経営をし、社会にも貢献できることこそがベンチャーが目指す方向性であると強調されました。

慶應が目指す次世代メディカル・ヘルスケア

中村雅也先生は、慶應義塾大学という組織としてのイノベーションの取り組みを紹介されました。

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慶應義塾大学では、以下の4つの事業を実施しています。

1)オープンイノベーション整備事業
2)JSR-Keioイノベーションセンター
3)AIホスピタル事業
4)ポストリサーチコンプレックス事業

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1)オープンイノベーション整備事業

慶應義塾大学は、「人生100年時代の健康長寿を支えるスマート社会の創成」という慶應イノベーションのビジョンをかかげ、産学連携大型共同研究を行い、高付加価値型の、安心・安全な商品やサービスの開発と普及を通じて、SDGsの目標の一つでもある「全ての世代の人々が、健やかで幸せに生きる社会の実現」を目指しています。
このビジョンの達成のために、慶應義塾大学病院と企業が共同研究コンソーシアムを立ち上げ、創薬、再生医療、AI、ロボティックスなどの領域の研究を実施しています。さらに、学際総合研究の社会実装に向けた強力なマネジメント体制を築くために、「慶應義塾大学イノベーション推進本部」を立ち上げ、スマート社会領域およびメディカル・ヘルスケア領域を対象にし、大企業との共同研究を進めています。また、事業化に当たっては、慶應発ベンチャーキャピタルである株式会社慶應イノベーション・イニシアティブとも協力しており、慶應タウンキャンパス(鶴岡、殿町、新川崎)や自治体とも連携し、エビデンスに基づいた安心・安全な商品普及やグローバル展開を目指しています。
これらの連携を通じて重要なことは、収益をしっかり出し、その収益がアカデミアに返ってきて、研究・教育活動が加速するエコシステムの構築です。

2)JSR-Keioイノベーションセンター(JKic)

慶應義塾大学病院は、臨床研究中核病院機能など、全国でも有数の機能をもつ病院です。そのような病院だからこそできる事業を展開していくために、JSR-Keioイノベーションセンター(JKic)が出来ました。JKic共同研究は、主に2つあり、ひとつは、1)精密医療、2)幹細胞生物学・細胞医療(リーダー LINK-J理事長 岡野栄之教授)、3)腸内細菌、4)先端医療機器(リーダー 中村雅也教授)という4つの領域の「戦略プロジェクト」。もうひとつは、次世代に向けた先端医療技術の創出を目指した挑戦的萌芽研究で、これまでの学術研究の体系や方向を大きく変革させることを志向し、飛躍的に発展する可能性を持っているものを対象としている「学術開発プロジェクト」です。

3)AIホスピタル事業

こういった様々なシーズを検証し、実装する場としてのAIホスピタル事業を行っています。
これは、医療機器やIoT機器を活用して患者情報の網羅的収集、ビッグデータ化に加え、AI分析技術を活用して「AIホスピタル」の開発・構築・実装化を図り、医療現場での診断補助・教育やコミュニケーション支援を行う事業です。慶應義塾大学病院の他に大阪大学病院、成育医療センター、がん研有明病院のみが採択されています。
具体的には、患者からウェアラブルデバイスなどを用いて、患者の療育環境・バイタルデザインなどのリアルタイムモニタリングを行います。その情報が集められ、大規模医療データベースの構築とAIによる解析が行なわれ、医療スタッフはそこで得られた情報を活用し、患者病態の正確な把握に努めることが可能になります。
こうして大量の医療情報を治療に有効に活用することが可能となり、先進的かつ最適化された医療サービスの提供体制の整備を目指すことが可能になります。
その結果、超高齢社会における医療の質の確保、医療増加の抑制、医療分野での国際的競争力の向上、医療現場での負担経軽減が可能となります。
部門別の具体例としては、外来・病棟部門におけるAIによる口述カルテ記録やAIによる外来待合混雑緩和、検査部門ではAI解析やAIによる放射線画像、病理組織診断、内視鏡画像診断システム開発、薬剤部門では拡張型電子お薬手帳(MeDaCa)の活用、さらに、新型コロナウイルス流行前から実施していた遠隔診療では、慶應義塾大学病院と関連病院及び患者・ドクターを相互つなぎ、患者が中心にいるネットワークを構築しています。

4)ポストリサーチコンプレックス事業

慶應義塾大学は、昨年度までの5年間で、川崎市殿町地区において、周辺の研究機関・産官学との連携の下、エコシステムを構築してきました。慶應義塾大学は主に、再生医療、ロボティックス、AI・ビッグデータに注力し、これらを通して、近未来医療・ヘルスケアを創出するグローバル拠点として機能することを目指しています。殿町には、現在合計約70の研究機関と企業が拠点を置いており、再生細胞医療バリューチェーンの構築を目指して共同研究をしています。
中村先生自身も、再生細胞医療・サイバニクスの融合による脊髄損傷の治療に取り組んでおり、iPS細胞由来神経幹細胞移植やHAL(サイバーダイン社)を用いた機能再生治療との併用も行っています。
慶應全体では、こういった各種の連携と社会貢献を通じて、人生100年時代の健康長寿を支えるスマート社会の創成を、アカデミア自体が収益を上げながら、目指しています。



健康医療ベンチャー大賞で受賞された3社のベンチャーによるプレゼンテーション

慶應義塾大学医学部主催の健康医療ベンチャー大賞にて受賞された3社から、受賞後の活動の進捗などについてそれぞれプレゼンテーションが行われました。

汗中乳酸ウェアラブルセンサを用いた運動負荷可視化の試み
中島 大輔 氏 株式会社グレース イメージング 代表取締役

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グレースイメージングは「世界初の疲れを見える化するサービス」を開発し、20187月に登記した慶應義塾大学医学部整形外科からスピンアウトした大学発スタートアップです。疲労関連物質:汗乳酸旧酸を汗から連続センシングできるウェアラブルデバイス(特許出願済み)を開発しました。これまで「疲労」は主観的なものでしたが、それを見える化し、管理しようとしています。この「疲労の可視化」は医療、スポーツの分野労働管理、生活・健康領域での需要が見込め、まずは医療領域での取り組みを始めています。

具体的には、心臓リハビリに関して、運動負荷の定量化が困難であるリハビリのための検査がしにくいという課題に着目し、気軽に運動負荷を計測できる改善していこうとしています検査を広く普及させようと考えています。従来心臓リハビリには、呼気ガス分析を伴う心肺運動負荷検査(CPX検査)という大型かつ高価な呼気ガス分析の自転車のような機械を使用し、非常に計測が煩雑な呼気ガス中のCO2を測定することで、適切な運動負荷検査を計測していますが、この検査は、スペース、医療従事者コスト、患者の不快感、所要時間の問題等で普及率が低いことが課題でした。しかし、グレースイメージングの開発したウェアラブルデバイスを使用することにより、検査が容易になり、リハビリへの道のりが短縮されました。

菌種推定法グラム染色の自動化
平岡 悠 氏 株式会社GramEye 代表取締役

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GramEyeは「グラム染色自動化で抗菌薬の適切利用を」を合言葉に、薬剤耐性菌問題に取り組んでいます。

抗菌薬の不適切使用により、耐性菌が出来てしまうという問題があり、この問題に対し、グラム染色により菌の形を見える化し、AIによって解析することで解決していきます。

耐性菌の問題は、世界的にも大きな問題で、2002年には、WHOによる「次の10年で緊急に取り組むべき13の課題」の一つにも選ばれています。また2050年には薬剤耐性菌によって世界で1000万人もの人が命を落とすと言われています。

実は、平岡さん自身、昨年のLINK-Jイベント「慶應義塾大学発ベンチャー創出の最前線」(2019821日開催)に参加し、感銘を受け、第3回健康医療ベンチャー大賞に応募した経緯があります。

また、これからプロジェクトを始める学生さんへのメッセージとして、信頼できる仲間を見つけることが大切だと語りました。一般的なスタートアップの失敗の一つとして、チーム構成が不適切であったという事があるため、大学内など信頼できる仲間と始めるのが良いと話しました。さらに、現状に疑問を持って深堀し、大きな課題に挑戦することが重要であると話し、起業を目指す学生へのアドバイスも行いました。

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慶應義塾大学医学部発ベンチャーのプログレス
清水 映輔 氏(株式会社OUI 代表取締役/慶應義塾大学医学部眼科教室 特任講師)
矢津 啓之 氏(株式会社OUI 取締役/鶴見大学歯学部附属病院 眼科 専任講師)
中山 慎太郎 氏(株式会社OUI海外戦略部 部長)
逆瀬川 光人 氏(株式会社OUI 経営戦略室長)

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株式会社OUIOUI Inc.(ウイインク)は、昨年のLINK-Jのイベント「慶應義塾大学発 医療系ベンチャー創出の最前線」登壇後の進捗を中心に話されました。
株式会社OUI20167月に、医師の職責である臨床・研究・教育・産業創成を全うするために3人の眼科医で起業し、眼科診察ができるスマートフォンアタッチメント型の医療機器Smart Eye Camera(特許取得済み)を開発しました。診療だけでなく、患者さんへの説明のほか、教育でも活用しています。
開発途上国では、十分な医療機器がない一方で、スマートフォン(スマホ)は普及しています。そのため、比較的入手しやすいスマホを使った医療機器にこだわって開発を行いました。というのは、眼科的な画像が撮影できれば、スマホには通信機能を使った遠隔診療ができること、そして収集画像から開発したAI診断が可能、という二つの特徴があるからです。これらの特性を活かすことで、ICU・病棟の眼科院内コンサルテーション業務を効率化することができ、年間約250時間の眼科医の業務改善が見込まれています。
現在、世界では3600万人が失明していると言われており、そのうちの半分以上は、白内障などの予防可能な失明です。
途上国でも入手しやすいスマホとSmart Eye Cameraを使用することにより、治療可能な病気を確実に治すことを目指しています。既に、ベトナム、モンゴル、ザンビア、マラウイなどで実証実験済みで、停電時も診療可能であり、患者説明が簡便にできる、トレーニングに最適などの感想があがっています。
今年の3月には、WHOとも連携している国際的な団体(IAPB:失明予防のための国際機関 The international Agency for the Prevention of Blindness)のThe IAPB Essential List Smart Phone Technology に選ばれました。また、世界銀行グループのIFCが行っているTech emerge Health East Africa finalist(東アフリカ地域のヘルスケアコンテスト、50か国以上が参加)においても415候補中の最終の50社に選出され、より一層海外展開も期待できる状況となりました。
2025年までに世界の失明を50%減らすというビジョンを実現するために日々活動を続けています。

【質疑応答】

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Q1.グレースイメージング様やGramEye様も海外展開を目指されていまか。

A1.グレースイメージング 中島氏:心臓リハビリに着目しており、まずは日本でしっかり治験を行い、その後、治験がしやすいと言われているオーストラリアでの海外展開を考えています。メドテックイノベーターへの出場経験もあり、将来的に米国での展開も検討しています。また、競走馬への展開も検討中です。

A1.GramEye 平岡氏:東南アジアなどでは、薬局で医師の診断がなく抗菌薬が売られ、日本よりも耐性菌が増えている。その耐性化した菌が日本にも入ってきているため、海外展開も必要だと考えています。グラム染色は、臨床検査技師が取り扱いますが、技師が不足していることもあり、海外展開を前提として考えています。


Q2. 医療従事者で起業後、ビジネスサイドのメンバーを採用するのは、どういうタイミングですか。

A2. OUI清水氏:医療機器申請をとったタイミングで、気心しれた仲間と一緒に働くのが良いと思います。

A2. OUI逆瀬川氏:ビジネス担当者として、専門性のある方の言葉をくみ取り、医師の言葉をくみ取って実装できる人が大事だと感じています。
中村先生:ベンチャーはフェーズによって、どんどん形が変わってくるため、規模間・状況と一人が何役出来るかによって、変わると思います。

サイエンティストも、ビジネス面に関して無知でいいわけではなく、ビジネスの言語を理解し、ファイナンスなども理解することが必要です。

その他多くの質問がありました。

講演後のアンケートでは、参加者からは、「現場でのニーズ・課題から、それに対する解決策の実装化が一番強みで付加価値も大きいと感じました。専門性、プロフェッショナルであることも必須と感じました。」「スマホやAIなど最先端技術と医療がコラボしていることや、医療現場と大学、ビジネスのかかわり方を理解できて、とても興味深かったです。」といったご意見をいただきました。

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