2024年7月18日(木)、 LINK-J は『LINK-J×BCG Biopharma R&D Seminar 製薬R&Dを巡るトレンドと生産性向上への取組み vol.2「組織・ガバナンス』』を日本橋ライフサイエンスハブにて開催しました。
当日は103名の方に参加頂きました。
【登壇者(登壇順)】
中村 健 氏(ボストン・コンサルティング・グループ マネージング・ディレクター&パートナー)
石川 資子 氏(ボストン コンサルティング グループ パートナー)
志鷹 義嗣 氏(アステラス製薬株式会社 専務担当役員 研究担当)
武田 俊彦 氏(内閣官房 健康・医療戦略室政策参与)
柳本 岳史 氏(ボストン コンサルティング マネージング・ディレクター&パートナー)
冒頭、LINK-J曽山よりご挨拶させて頂き、ボストン・コンサルティング・グループ中村氏より本イベントの概要についてご説明頂きました。
講演「製薬R&Dの生産性向上に向けた組織・ガバナンスのトレンド」
石川 資子 氏(ボストン コンサルティング グループ パートナー)
講演「アジャイル型組織体制の構築と成果」
志鷹 義嗣 氏(アステラス製薬株式会社 専務担当役員 研究担当)
【志鷹氏講演要旨】
アステラス製薬の研究部門は、バイオベンチャー様のアジャイル型の組織体制を採用している。
ここでは、製品創出ユニットが目的別に設置され、各ユニットが迅速な意思決定を行い自律的に活動できるよう権限委譲している。多様な専門性をもつ人材が集まり、プログラムの特性に応じ、試行錯誤を繰り返しながらソリューションを磨き上げている。
また、バイオベンチャーのエコシステムを模した成長の仕組みを取り入れ、研究の進展にあわせて個々の製品創出ユニットが陣容や権限を拡大する体制としている。これにより、社内バイオベンチャーのメンバーが起業家精神と強いオーナーシップをもって製品創出に取り組むことを促している。
以前は機能別の組織で階層に依存した意思決定を行っていた。しかし、モダリティが多様化かつ高度化する中で、未知の課題に対し自律的な対応ができるよう、2021年に組織体制をアジャイル型に再構築した。実際に機能するには、ハード面だけではなく、研究員の意識・行動というソフト面の変容を促す必要があった。そのために組織文化の変革を促す活動を行い、組織論に関する座学、アジャイル型組織で求められる行動様式やケイパビリティを考えるワークショップ、研究員とリーダー層のダイアログ、業界を越えた他社との意見交換・交流等、様々な施策を行った。
本講演では、アジャイル型モデルを採用してからの取り組みとその成果を紹介する。
講演「我が国の創薬力強化に向けた取り組みについて」
武田 俊彦 氏(内閣官房 健康・医療戦略室政策参与)
【武田氏講演要旨】
現在、政府として創薬力の強化に取り組んでおり、そのため昨年9月に内閣官房健康・医療戦略室の政策参与に任命された。これは、昨年自民党のプロジェクトチームが提言し、昨年の骨太の方針に「政府全体の司令塔機能の下で、総合的な戦略を作成する」と書き込まれたことを受けての動きである。
私もかつて厚生労働省で医薬品産業の仕事をしていたが、古い知識を捨てて最新の世界の動向を知るべく創薬エコシステムの代表的な場所である米国ボストンに飛び、エコシステムを構成する様々な方々に最新の状況を聞いてきた。その上で内閣官房に新たな会議体である、「創薬力の向上により国民に最新の医療を迅速に届けるための構想会議」が設置された。この構想会議では、各委員から資料を出していただき、ヒアリングも行いながら、我が国が目指すべき戦略目標とそのための具体策を取りまとめることが出来た。
構想会議での意見をかいつまんで紹介すると、まず医薬品産業をめぐる状況はかつての半導体産業に似ていて、国際的な競争力が落ち込んでいる、しかし医薬品はまだ国際競争力を再度強化することができるギリギリのタイミングにあり、ここで国家戦略を出す意義は大きいという意見があった。また、創薬の「死の谷」は開発が新規モダリティにシフトしていることもあってかつてより深く広くなっており、特にそれを支援する企業であるCDMOが日本にないため臨床試験に進めないなどの問題があるとの指摘があった。また、欧米も中央政府や地方政府が支援を行っており、官民が協力する枠組みがあるという指摘、またスタートアップ企業が医薬品開発の主要グループになっているがこれらの企業にとっては最終的に大手製薬企業に臨床開発を手渡すことも多いため、出口から考えコスト削減と予見可能なインセンティブが重要だとの意見もあった。また官民協議会の設立が非常に重要だとの意見もあった。これらを踏まえて、中間とりまとめが行われたところであり、これが関係省庁から新規施策として打ち出されていくことになる。
なお、今後具体化が議論されると思われる「官民協議会」については、現時点ではっきり固まっているわけではないが、私見を申し上げれば、動きが速い国際的な創薬状況を迅速に日本の政策に反映させるためには海外のステークホールダー等民間の意見を反映させる仕組みが必要であるし、その際には、参加いただく方は日本の医薬品市場と日本発の新薬の国際展開にコミットするPlayerでなければならないと思う。また、官民が協議する機能を活かすためには、協議の場としての会議体と、その合意を実行に移していく組織が必要ではないかと思う。また、世界の創薬エコシステムの中心地と競争するには、スピードの問題は決定的に重要であるため、日本の政策も迅速な意思決定ができる仕組み、日本流の予算や年度に縛られない民間主体の仕組みが必要ではないかと思う。
パネルディスカッションでは、柳本氏がモデレーターとして加わりご登壇の皆様と熱い議論を交わしました。会場からも多くの質問が寄せられ非常に盛り上がりました。
講演後はホワイエにて登壇者および参加者間の交流を目的としたネットワーキングを行いました。 ネットワーキングでは、名刺交換や情報交換が積極的に行われました。
参加者からは「各分野のキーパーソンによる、密度の高いプレゼンテーションや示唆に富んだパネルディスカッションを視聴でき大変有意義でした」「製薬R&Dのトレンド、実例(実施例)をご教示いただき理解することが出来ました。」「組織作り、変革プロセス事例聞くことが出来て面白かった。」といった感想を頂きました。
ご参加頂いた皆様には心より御礼を申し上げます。