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イベントレポート

第15回LINK-Jオンライン・ネットワーキング・トーク「慶應義塾大学発 医療系ベンチャー創出に向けて 2021」を開催(8/18)

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2021年8月18日(水)、LINK-Jは「第15回LINK-Jオンライン・ネットワーキング・トーク 慶應義塾大学発 医療系ベンチャー創出に向けて 2021」を開催しました。

慶應義塾大学は医療系ベンチャー創出に強みを持っており、その中でも医学部は、日本初の医学部主催ビジネスコンテストである「健康医療ベンチャー大賞」を2016年より毎年主催しています。LINK-Jは本コンテストに協賛しております。
今回は、前半セッションにて坪田一男氏に、ベンチャー起業を通してどうやって最高にごきげんになっていくのかお話しいただきました。また中村雅也氏には、新たなメディカル・ヘルスケア・介護の社会システムの構築に向けた慶應義塾大学の取り組みをお話しいただきました。
後半セッションでは、健康医療ベンチャー大賞の概要紹介に続き、健康医療ベンチャー大賞で厳しい選考を勝ち抜いた3名よりご講演いただきました。

本ウェビナーの録画は下記よりご視聴いただけます。
なお、一部公開されていない講演がございますこと、一定期間経過後に非公開に変更する可能性がございますことを予めご了承ください。
https://www.youtube.com/c/LINKJ
ぜひYouTubeチャンネルへのご登録もお願いいたします。

【登壇者】
1)坪田 一男 氏(株式会社坪田ラボ CEO、慶應義塾大学 名誉教授、日本抗加齢医学会 理事、慶應義塾大学医学部発ベンチャー協議会 代表)

2)中村 雅也 氏(慶應義塾大学医学部・学部長補佐(産学連携・広報担当)、慶應義塾大学医学部・整形外科学教室教授、日本整形外科学会代議員、日本再生医療学会理事)

3)田澤 雄基 氏(慶應義塾大学イノベーション推進本部 特任講師、健康医療ベンチャー大賞実行委員長)

4)田邉 翼 氏(X-pain 代表、大阪大学医学部医学科4年)2020年学生部門優勝、LINK-J賞受賞、オーディエンス賞受賞

5)石北 直之 氏(STONY 代表、国立病院機構新潟病院医療機器イノベーション研究室長・内科医長)2020年社会人部門優勝

6)中島 大輔 氏(株式会社グレースイメージング 代表取締役)2019年社会人部門優勝、オーディエンス賞受賞

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ベンチャー起業とごきげんのサイエンス

坪田氏は、慶應義塾大学医学部発ベンチャーとして、株式会社坪田ラボを2015年に設立しました。同社は、「ごきげん」をキーワードに、世界の近視・ドライアイ・老眼問題を解決することを使命とし、革新的なイノベーションを起こしています。
同社の活動も踏まえて、ベンチャー起業と「ごきげん」の関係についてお話しいただきました。
坪田氏は始めに、個人にとってのごきげんと、企業にとってのごきげんの定義を説明されました。個人にとってのごきげんとは、①Hedonic Happiness(快楽主義的幸せ) ②Eudaimonic Happiness(社会貢献を通しての幸せ)を満たしていることです。②の一例はベンチャー起業を通して社会貢献することです。起業し、万が一苦労したとしてもごきげん度は上がります。なぜなら好きなことをやって失敗したからです。
一方で企業にとってのごきげんの定義は、①Hedonic Happiness(期待収益率の向上・黒字経営)②Eudaimonic Happiness(社会の課題解決への貢献)を追求することです。利益を上げながら社会課題を解決していくCSV経営(=ごきげん経営)が最も大事だと強調されました。
続いて大学発ベンチャーの特徴についてお話しされました。大学発ベンチャーには「サイエンス」「コマーシャリゼーション」の2軸があり、一般的にサイエンスに強くコマーシャリゼーションに弱い傾向にあります。
次に、ごきげんで寿命を長く経営するためのポイントとして両利き経営を説明されました。両利きとは、探索と深化のバランスであり、事業の競争優位性は長く保てるものではないので常に探索にも注力することが大切です。
最後に、スタートアップのIPOについても言及いただきました。今年開催される第6回健康医療ベンチャー大賞のテーマは「入口から入口まで」、つまり起業後のIPOはゴールではなく、さらにごきげんになるための入口であると述べ、IPOへの期待を膨らませて締めくくられました。

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私たちが目指すヘルスコモンズ共創社会とは

中村氏は、新たなメディカル・ヘルスケア・介護の社会システム構築に向けた取り組みを紹介しました。
近年、世界的な高齢化に伴い、寿命が延びる一方で様々な疾病や障害リスクが増加している現状があります。中村氏は、社会の現状と課題を後病という新たなキーワードに沿って説明されました。後病とは、医療機関で病気の治療を受け、完治・寛解した状態、もしくは病気やその後遺症とともに生活をする状態を指します。後病に焦点を当てることで、医療情報と治療後の転帰を関連付けてエビデンスレベルの高いシーズの開発が可能となります。
しかしながら、従来は医療情報と後病情報(生活・介護情報)の分断によってシーズ開発が阻まれていました。また、超高齢社会・都市化・介護リソース不足など様々な要因により、後病者が社会で孤立してしまう事が課題となっています。
これらの課題を解決するのがヘルスコモンズという考え方です。医療・介護・ヘルスケアをつなぐデジタル・テクノロジー・サイエンスを、社会を支えるヘルスコモンズとして整備し、様々なステークホルダーが一緒にこれを構築・維持管理し、あるべき未来社会を実現していくことを指します。
そのためには、サイエンスナレッジデータ基盤の整備が重要となります。様々なデバイスを介して蓄積したデータが解析され、サイバー空間における後病者サポートが実現するだけではなく、リアルな医療・ヘルスケア・介護サービスにつながることを目指します。
なおこれらの実現には、アカデミアのシーズの社会実装が不可欠であるため、慶應義塾大学ではイノベーションを加速する取り組みを行っており、健康医療ベンチャー大賞もその取り組みの1つです。
詳細はぜひ動画をご覧ください。

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田澤氏は、今年で第6回を迎える健康医療ベンチャー大賞について紹介しました。
同大賞は日本で初めての医学部主催ビジネスコンテストです。2016年の開始以来着実にスタートアップ応募数が増加しており、出場者の活躍も見られています。
例年、慶應義塾大学や日本橋の会場にて開催されておりますが、昨年はコロナ禍により初めてのフルオンラインで開催されました。今年も12月19日に決勝大会が開催される予定です。

健康医療ベンチャー大賞で受賞された3チームのスタートアップによるプレゼンテーション

健康医療ベンチャー大賞にて受賞された3チームから、受賞後の活動の進捗などについてそれぞれプレゼンテーションが行われました。

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癌患者に特化した在宅での治療プログラムの開発

健康医療ベンチャー大賞2020年学生部門で優勝したX-painは、「テクノロジーを用いて術後癌患者さんの再発率を低下させる」ことを使命として活動しています。同チーム代表の田邉氏は、祖母のがん術後再発・転移を経験し、術後のフォローによって再発を防ぐことができたのではないかという思いを抱いて活動を始めました。
現在は患者と医師が連携しながら用いる治療用アプリを開発しています。具体的には、患者が副作用を動画と音声で入力し、副作用の対策がAIにより提示されたり、患者が3週間分の副作用を外来にて医師に報告し、レジメンや治療計画の補正が行われたりする仕組となっています。今後も、テクノロジーを活用しながら癌と共生する社会を作りたいと述べられました。
最後に、田邉氏はこれから起業を志す方へエールを送りました。同氏は2年前に同イベントシリーズである「第33回 LINK-J ネットワーキング・ナイト 慶應義塾大学発 医療系ベンチャー創出の最前線」に参加し、いつか必ず健康医療ベンチャー大賞で優勝したいと決意し、実際に優勝を成し遂げました。「健康医療ベンチャー大賞は、これから起業する方にとって良いベンチマークになるのでぜひ挑戦してほしい」と、熱い想いを語りました。

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STONY

健康医療ベンチャー大賞2020年社会人部門で優勝したSTONYは、シンプルで低コストな革新的医療機器を開発し、社会実装することにより、世界の医療の質を向上させることを目指しています。代表の石北氏は、医師としての日常診療で感じた不便を解消するため、様々な医療機器を発明しています。2020年度には経済産業省の事業に採択されたことにより簡易人工呼吸器MicroVent®V3、?VENT®、付属品であるKeyWedge、SPUTA VACUUMER®を開発しました。
MicroVent®V3は、世界最小・最軽量で、安価に量産が可能な単回使用ガス式肺蘇生器(クラスⅢ)です。電気を用いず空気の力だけで精密な呼吸管理ができる特長があります。
SPUTA VACUUMER®は、低侵襲な喀痰等吸引チップ(クラスⅠ)です。従来は、吸引カテーテルを体内に挿入される苦痛がありましたが、同製品は体内に挿入せず肺に均等に陰圧を掛けることにより、低侵襲で短時間に吸引が可能です。
革新的な医療機器を世に出すためには、多岐にわたる業務が必要となります。そこで同氏はSTONYを起業し一部業務を担い、その他の業務は外部機関と連携して行うことでコストとリスクを抑えています。現在、国内および海外の薬事承認申請手続き、保険適用申請手続き、マーケティングの経験に長けたパートナーを募集しています。ご関心のある方はぜひお問い合わせください。

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汗乳酸ウェアラブルデバイスを用いた次世代リハビリテーション

健康医療ベンチャー大賞2019年社会人部門で優勝した株式会社グレースイメージングは、汗の中の乳酸を計測できるウェアラブルデバイスを用いた新しい次世代リハビリテーションを展開しています。
同社は慶應義塾大学医学部整形外科からスピンアウトした大学発スタートアップであり、AMED、東京都、AMDAPによる資金を利用して研究開発を進めています。
同社が着目する乳酸測定は、医療分野とスポーツ分野で大きなオポチュニティがあり、まずは心臓リハビリテーションという心疾病に対するリハビリテーションに関する開発を行っています。
近年、心不全患者が増加していますが、カテーテル治療後に運動すれば死亡者数は下がることが明らかになっています。しかしながら、急性心不全患者の7%しか運動リハビリテーションを実施できていない現状があります。また、従来の運動リハビリテーションで用いるCPX検査によって適切な運動負荷指標が分かりますが、日本での施行率は14%に留まっています。この検査を同社が開発する汗中乳酸(疲労物質)ウェアラブルセンサで置き換えると、簡便かつコストを抑えて運動負荷指数を計測することが可能になります。まずはCPX検査施行数を増やしたい心臓リハビリテーション施行施設に対して事業展開を行い、最終的には在宅でのリハビリまで展開したいとの展望を述べられ講演を締めくくりました。

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講演後に行われたパネルディスカッションでは、多くの視聴者から寄せられた質問について各登壇者にお答えいただきました。
また、健康医療ベンチャー大賞出場者に求める事というテーマに沿って、これから起業を目指す方の後押しとなるお話をいただき、講演と同様に熱のこもったディスカッションが行われました。

ご視聴いただいた皆様、誠にありがとうございました。
健康医療ベンチャー大賞では9月19日までビジネスプランを受け付けており、決勝大会は12月19日に開催されます。ご関心のある方は以下ウェブサイトをご覧ください。
https://www.keio-antre.com/

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