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イベントレポート

「LINK-J & UC San Diego Joint Webinar Series #8 with 慶應大学 "再生医療と計算神経科学における最新の展望 - Session 4: Stem Cells and Cancer"」を開催(10/6)

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◆次回のジョイントウェビナーシリーズ「培養組織に対する物理刺激による機能化 - Biophotonics」はこちらからお申し込みください。

2021年10月6日(水)、オンラインにて「LINK-J & UC San Diego Joint Webinar Series #8 with 慶應大学 再生医療と計算神経科学における最新の展望 - Session 4: Stem Cells and Cancer」を開催いたしました(主催:LINK-J、共催:UC San Diego)。

LINK-J & UCサンディエゴジョイントウェビナーシリーズの第8回目となる今回は、UCサンディエゴのTannishtha Reya先生と慶應義塾大学の佐谷秀行先生をお招きし、がんの発生・進行・治療抵抗性における幹細胞シグナルの働きや、がん幹細胞を標的とした新規治療戦略などについてお話しいただきました。
また、Andrew McCulloch先生(PhD, Distinguished Professor of Bioengineering and Medicine; Director, Institute of Engineering in Medicine, UC San Diego)と岡野栄之先生(慶應義塾大学医学部生理学教室 教授/LINK-J理事長)がモデレーターとなり、ディスカッションを行いました。

本ウェビナーの録画は下記よりご視聴いただけます。
一定期間経過後に非公開に変更させていただく可能性がございますことを予めご了承ください。
https://youtu.be/x821XrVcU0E
ぜひYouTubeチャンネルへのご登録もお願いいたします。

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冒頭、曽山明彦(LINK-J常務理事)、和賀三和子氏(UC San Diego国際アウトリーチディレクター)、Andrew McCulloch先生、岡野栄之先生より挨拶いたしました。

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"Stem Cell Signals in the Origin, Progression and Therapy Resistance of Cancers"
Dr. Tannishtha Reya(PhD, Professor, Department of Pharmacology; Director, Division of Cancer Biology; University of California San Diego, School of Medicine)

Reya先生は、幹細胞の自己再生を制御するシグナルの研究と、これらのシグナルががんの中でどのように異常をきたすかに焦点を当てた研究を行っています。具体的には、遺伝子モデルを用いて、Wnt、Hedgehog、Notchなどのシグナル経路が造血幹細胞の成長・再生にどのような役割を果たすか、白血病発症時にどのようにシグナルの調節異常が起きるかを研究しています。
さらに、リアルタイムイメージング法を用いて、造血幹細胞は対称分裂と非対称分裂の両方を行うこと、がん遺伝子がこの分裂様式の均衡を崩すことを明らかにしました。
細胞運命決定因子であるMusashiをはじめとしたこれらのプロセスの制御因子は、がんの進行に重要な役割を果たしており、診断や治療のターゲットとなり得る可能性があります。
現在の研究テーマは、薬剤送達後の治療抵抗性のメカニズムを解明することと、in vivoでの高解像度イメージング手法を開発することにより、生体内での正常な幹細胞の挙動と相互作用をマッピングし、これらががん形成時にどのように変化するかを明らかにすることです。

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"Novel strategies targeting cancer stem cells"
佐谷秀行 先生(慶應義塾大学医学部 先端医科学研究所 遺伝子制御研究部門 教授)

佐谷先生は、がん幹細胞を標的とした新規治療戦略についてお話しされました。
酸化ストレスは、過酸化脂質の異常蓄積によって引き起こされる鉄依存性細胞死(フェロトーシス)の誘導につながりますが、細胞内の主要な抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)は、がん幹細胞を酸化ストレスから保護しています。シスチン-グルタミン酸アンチポーターのサブユニットであるxCTが、細胞外シスチンの取り込みを媒介し、それによりGSHの合成を促進することが分かっています。そのため、xCT阻害剤が抗がん剤として有用であると期待されています。
一方で、がん幹細胞の酸化還元に影響を与える代謝リプログラミングによって、xCTを標的とした治療の効果が低下することが明らかになっています。そのため、xCT阻害剤との併用によりxCT標的療法への抵抗性を克服する薬剤を同定できれば、効果的ながん治療の基礎となる可能性がありました。
そこで、既存薬のスクリーニングを行った結果、血管拡張剤であるオキシフェドリン(OXY)が、xCT阻害剤であるスルファサラジン(SSZ)を含むGSH枯渇薬に対するがん細胞の感受性を高めることが明らかになりました。OXYには、アルデヒド脱水素酵素(ALDH)の共有結合性阻害薬として必要なモチーフが含まれているため、OXYとSSZの併用療法により、SSZ抵抗性のがん細胞において、細胞毒性アルデヒドである4-ヒドロキシノネナールの蓄積と細胞死が誘導されることが判明しました。さらに、OXYを介したALDH阻害は、in vitroでの放射線治療におけるGSH枯渇に対してもがん細胞の感受性を高めたことが分かりました。
このようにOXYは、GSH枯渇剤を用いたがん治療における増感剤として有効であることが示されました。

いずれの講演についても、詳細はYouTubeアーカイブをご覧ください。

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講演の後には活発な質疑応答とディスカッションが行われました。
今後もUC San Diegoとの共催ウェビナーを継続的に開催する予定です。
皆様ぜひご参加ください。

前回までのUCサンディエゴに関するイベントやレポートはこちらをご覧ください。

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