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イベントレポート

「LINK-J×東北大学ネットワーキング・ナイト 東北大学が推進するオープンイノベーションイニシアティブ」を開催(2/13)

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2月13日(水)、日本橋ライフサイエンスビルディングにて「LINK-J×東北大学ネットワーキング・ナイト 東北大学が推進するオープンイノベーションイニシアティブ」を開催いたしました。(主催:LINK-J)
本イベントは、昨年11月30日に開催された、LINK-J×東北大学ネットワーキング・ナイトの第2弾として、東北大学が推進するオープンイノベーションの取組みを紹介する事を目的に開催されました。

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はじめに、青木 孝文 氏 (東北大学 理事・副学長)より、東北大学発のオープンイノベーションの取組みの概要と、本イベントのご登壇者の皆さまをご紹介頂きました。

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東北大学は2017年に、東京大学、京都大学とともに指定国立大学法人の指定を受け、「創造と変革を先導する大学」を目指し、横断的な融合研究を組織的に推進しています。2018年には「東北大学オープンイノベーション戦略機構」を創設し、世界トップレベルを誇る「材料科学」「スピントロニクス」「未来型医療」「災害科学」の4領域を強化するとともに、新分野の育成にも注力してきました。
同機構では、異分野の多企業が参画するB-U-B(Business-University-Business)型産学連携モデルを構築し、医療・ヘルスケアや材料科学などの分野で共同開発を推進しています。また、ライフサイエンス分野のイノベーション推進を中核事業の一つに位置付け、東北大学東北メディカル・メガバンク機構、加齢医学研究所、東北大学病院、東北大学病院臨床研究推進センター等の研究、臨床拠点を集約し、国内最大級のアンダーワンルーフ開発体制を構築しています。さらに、2023年には、次世代放射光施設の運用開始を予定しており、創薬や高分子材料開発など、幅広い分野での応用が期待されています。
世界的に高いレベルの研究シーズを有する東北大学による、大規模なオープンイノベーションの取組みが、日本の橋渡し研究の推進力となることが期待されています。

「医工連携を基盤としたオープン・イノベーション・プラットフォーム構築」
下川 宏明 氏(東北大学病院臨床研究推進センター(CRIETO) センター長)より東北大学のオープン・イノベーション・プラットフォームについてご紹介いただきました。

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CRIETOは、厚生労働省より臨床研究中核病院に指定された他、AMEDより革新的医療技術創出拠点にも指定され、東北地域の橋渡し研究支援の中核を担っています。
CRIETOは、橋渡し研究支援を効率的に推進する為、「東北トランスレーショナル・リサーチ・プラットフォーム(TTRP)」を構築し、シーズ収集のパイプライン形成、人材育成プログラムの提供、産学連携の推進、臨床研究の推進といった取組みが、連動するシステムを構築しています。具体的には、CRIETOを中核に東北7大学と13の基幹病院からなるネットワーク「東北トランスレーショナルリサーチ拠点形成ネットワーク(TTN)」をパイプラインにシーズを収集し、企業開発人材の育成プログラム「アカデミック・サイエンス・ユニット(ASU)」を実施して、臨床現場の観察から新たな製品を生み出しています。また、一般社団法人東北臨床研究審査機構(ACTIVATO)では、559件の継続審査案件を抱えて臨床研究を推進しています。
このような取組みにより、シーズを次々に実用化する、東北大学発のオープンイノベーションに、全国の大学や企業から大きな注目が集まっています。

「オープンイノベーション2.0がもたらすエコシステムの可能性」
戸村 裕一 氏(アステラス製薬株式会社 キャンディデートディスカバリー研究所 所長)より、多層的共存連携によるオープンイノベーションの意義や、東北大学とアステラス製薬が共同で設立したTACT (Tohoku university and Astellas Collaboration Committee)の取組み等をご紹介いただきました。

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近年、創薬難易度の上昇や、収益性低下など製薬産業を取り巻く環境は大きく変化しています。個々の製薬企業によるクローズドイノベーションは限界を迎え、産学官民の共創によるオープンイノベーションが不可欠となっています。また、企業-アカデミア連携による、従来型のオープンイノベーションから、多対多による多層的共創連携型の「オープンイノベーション2.0」へ、その在り方も変化してきました。この「オープンイノベーション2.0」の成功には、「場の整備」、「関係者の強いコミットメント」、「つなぐエコシステム」の3要素が必要です。
アステラス製薬は、この3要素を備えた東北大学オープンイノベーション戦略機構をオープンイノベーションのハブとして活用し、継続的に患者様へ価値を提供していく拠点として、TACTを設立しました。東北大学オープンイノベーション戦略機構とTACTが、グローバルイノベーションの場となり発展していくことが期待されています。

「東北大学発バイオベンチャーの起業」
森口 茂樹 氏(東北大学薬学研究科 講師/ブレインイノベーション株式会社 取締役)より、ブレインイノベーション株式会社の事業内容と、起業までの経緯をご説明いただきました。

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アルツハイマー型認知症(AD)は、根本的な治療法が確立されておらず、周辺症状を緩和する専門薬も未開発です。一方で、AD患者数は15年で5倍に増加しており、世界中で深刻な社会問題となっています。
森口氏は、基礎研究の成果を基に、新たな作用機序をもつAD治療薬の開発を目指し、2018年8月に起業されました。起業されるまでには、各段階で、東北大学オープン・イノベーション・プラットフォームの支援があったそうです。2015年より、東北大学病院臨床研究推進センター(CRIETO)から支援を受け特許出願を実施、2017年にはベンチャー・キャピタルの支援を受けて、科学技術振興機構(JST)の大学発新産業創出プログラム(START)ヘ応募されました。残念ながら不採択となったものの、2018年には東北大学BIP(ビジネス・インキュベーション・プログラム)フェーズ1(育成)に採択され、起業準備を進めて参られました。また、東北大学Tech Open 2018で優勝されております。起業後は、ベルリンで開催された「FALLING WALLS VENTURE」にアジア代表として登壇された他、デュッセルドルフで開催された「MEDICA2018」にも登壇されるなど、世界中でご活躍されています。「世界の皆さまに脳の健康を届ける」と、新薬開発への意気込みを語られました。

内田 渡 氏(東北大学オープンイノベーション戦略機構 統括クリエイティブマネージャー)より、総括を頂きました。

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医薬品は生物製剤から、革新的医薬品へ変革期を迎えています。さらに、今後はAIや工学系技術との融合による医療ソリューションの時代へ、大きな転換が予想されます。そのような変革期の中で、アカデミアと複数異業種間の連携を促進し、生産性を向上させるオープンイノベーションが重要性を増してきました。東北大学オープンイノベーション戦略機構は、東北大学を核とするオープンイノベーションエコシステムを構築し、効率的な創薬プラットフォームを提供しています。
5月には、東北大学視察ツアーをLINK-J主催で企画しており、是非、皆様にご参加いただきたいとご紹介頂きました。

講演後は、内田氏を座長に、下川氏、戸村氏、森口氏が会場からの質問に答えました。

Q:他大学ではうまくいっていない産学連携が、東北大学ではなぜうまくいっているのでしょうか。
下川氏:
アカデミック・サイエンス・ユニット(ASU)に関しては、2年間かけて、顧問弁護士の指導の下、個人情報保護等の内規を整備した点は大きかったと思います。また、部局を超えた連携が密なのは、本学の特徴です。適度に都会で、適度に田舎という環境と風土が、良い影響を及ぼしているのかもしれません。

Q: 東北大学ではシーズをどうやって集めてきているのでしょうか。
下川氏:
東北大学では、基礎研究の研究者が実用化を見据えて研究ができる支援体制が整っています。具体的には、ライフサイエンスに関連した16部局全てが参加して「メディカルサイエンス実用化推進委員会」の活動を行い、萌芽的シーズを拾い上げるような仕組みができています。また、大学院2年生と指導教授を対象に広くシーズ登録を推奨しています。さらに、ASU活動や東北トランスレーショナルリサーチ拠点形成ネットワーク(TTN)活動を通して、シーズの収集・開発を行っています。

Q:多様な技術を実用化し人々に健康を提供する為に、製薬業界はどのような努力をしているのでしょうか。
戸村氏:
新たなテクノロジーやモダリティに対して、長期的な視点で投資を行い、アカデミアやベンチャー企業との共創を進めています。一つの企業で入口から出口まで研究開発を担っていくには限界がある場合もあり、産学官民が一体となったオールジャパンの取組みが重要だと考えています。

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セミナー後は、10階ラウンジにて懇親会を開催しました。
当日は、大学関係者や企業の方々など約100名の方にご参加いただき、誠にありがとうございました。参加者の皆さまからは「オープンイノベーションを促進する各々の立場から、様々な活動や意見が聞けて良かった」「東北大学発のオープンイノベーションを知る事ができてとてもためになった」など多数のご意見を頂きました。
LINK-J×東北大学の第3弾として、5月17日(金)に東北大学現地を訪問する、連携視察ツアーを予定しております。皆様、奮ってご参加ください。

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