スタートアップ支援プログラム「UNIKORN」第二期参加企業(UNIKORNファミリー)に聞く④
メンタリングや展示会参加支援、プロモーション支援などを通じて、国内スタートアップの英国/欧州市場進出を手助けするプログラム「UNIKORN(ユニコーン)」。第二期となる今期も、前回に引き続き、多数のご応募を頂き、厳正な審査と選考を経て、4社のライフサイエンス系スタートアップが選出されました。本企画では、新たにUNIKORN第二期ファミリーとなる皆様に、現在の事業内容や今後の展望などをお聞きしました。
UNIKORNに関する詳しい情報はこちらから。
今回お話を伺ったのは、SyntheticGestalt株式会社の諸橋大介氏(AI事業部長)です。
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諸橋大介氏(AI事業部長・左)、古屋直希氏(人事広報部長・右)
 
| 【企業紹介】SyntheticGestalt株式会社 SyntheticGestalt株式会社は、分子情報に特化したAI技術を開発する企業です。従来の分子関連AIが抱えていた精度の課題を解決するために、100億件の学習データの活用と、4次元データ(化合物の立体構造×変化しうる複数の化合物の構造)の組み合わせによって、従来型の新規化合物探索用AIの課題解決に挑戦します。 | 
製薬企業の創薬研究などを独自のAIで支援
――まずは諸橋様の自己紹介からお願いいたします。
AI事業部を担当する諸橋と申します。学生時代はオーストラリア・メルボルン大学で物理学とソフトウェアエンジニアリングを学んだ後、卒業後は医療業界で人材紹介や人事コンサルなどの仕事をしていました。過去に勤めたリクルート社ではスタートアップ育成も担当し、そこでスタートアップのいろはを勉強しました。その経験を活かして、後にAI系スタートアップで営業部門の設立などを担当しました。化学や生物学などの領域はほぼ門外漢ですが、当社には過去のスタートアップの経験が活かせると考えて、昨年入社しました。
――御社の概要についてもお聞かせ頂けますか。
当社は、主に製薬企業の創薬研究などに利用可能なAIを開発して、お客様の課題を解決する手助けをしています。当社の強みは、分子構造に特化した世界最大クラスの基盤モデル技術を独自開発して、様々な用途に応用できる点にあります。最近では、製薬業界だけでなく化学品業界や食品業界などからもご相談を受けるケースが増えています。また数学から生物学まで幅広い分野の専門家がひとつ屋根の下で研究開発に挑戦できる体制があります。
――現在の事業にかける思いや将来のビジョンについてお聞かせください。
我々は「発明を量産する人工知能の開発」というビジョンを掲げ、世界を目指しています。たとえば製薬業界では、いまも数多くの研究者が時間と手間と予算を注ぎ込んで新薬候補を探索していますが、我々は「そこにAIを用いることで費用と時間を劇的に削減できるのではないか」と考えています。さらにAIの可能性は効率化だけではなく、やがては人智を超えた画期的発明さえ可能だと信じています。我々もいずれは全人類に利益をもたらす発明を実現したいですね。
去年もプログラムを利用してバイオヨーロッパに参戦
――UNIKORNプログラムに応募された理由をお聞かせください。
当社は英国で誕生したのですが、これまでは開発拠点としての色合いが強く、ビジネス面での機能は不十分でした。我々としては、今後は欧州および北米市場にも積極的に展開していこうと考えています。当社は、昨年も本プログラムに採択して頂いており、そのときは欧州渡航を通じて欧州市場の実状などを勉強させて頂きました。我々にとっては英国およびロンドンは創業の地であり、今回の英国渡航はまさに「故郷に戻る」という感覚もありますね。
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――去年のプログラム参加の感想についてもお聞かせください。
今年のピッチ審査では、審査員の皆様に「また来たのか」と思われているかと心配していました(笑)。昨年はBIO-EUROPE(昨年はスウェーデン・ストックホルムにて開催)に参加できたことで、欧州市場にどんなお客様がいるのか、また欧州市場における当社の事業の可能性なども勉強できました。小規模ながら現地で商談もできて、とてもありがたい経験でした。欧州のバイオ関連イベントに出展して、対面相談で当社の事業を紹介したのも初めての挑戦であり、貴重な機会だったと思います。
――第2期に採択された他のチームの方との連携は生まれていますか。
ありがたいことに、他チーム同士の連携も生まれています。今回は採択された会社が4社と少ないので横の連携が取りやすく、自然と情報交換なども進んでいます。互いに学び、支え合いながらまさにファミリーのような関係性を築け、私も嬉しく思っています。昨年の第1期プログラムの時は、わたしはまだ本プログラムの担当者ではなかったのですが、前任者を介して現在も第1期ファミリーの皆様とのつながりもあると聞きます。
メンターとの相性も良好で「お会いするのがたのしみ」
――メンタリングについても感想をお聞かせください。
UKメンターの方との相性も非常に良いと思っています。当社の担当者は、David Weston氏です。これまでに3回ほどメンタリングして頂きましたが、彼はフランクで忖度抜き、かつ堅実なアドバイスをくれます。メンタリングだけでなく、自分の知り合いを我々にご紹介頂くなど、当社のネットワーキング活動にもご尽力頂いています。今秋のロンドン訪問で初めてお会いするのがとても楽しみです。
 
 ――今回の欧州および英国渡航には諸橋様が行かれるご予定ですか?
今回はわたし1人で欧州に渡航する予定です。当社としては、今後の海外展開の主なターゲットとして、まずは製薬業界を見据えており、となると対象となる国も米国または欧州に絞られます。いずれはその両方に拠点の開設も含めて事業展開したいと考えており、その意味で今回の欧州訪問は、今後の展開における重要な「最初の1歩」になります。欧州にはパートナー関係の相手はいるのですが、当社の事業を利用している「顧客」はまだいないのが現状で、今後の課題ですね。
――メンタリングを受けたことで昨年から変わった点はありますか?
せっかくの欧州渡航の機会を頂いたこともあり、昨年は「とにかく頑張らないと」という気持ちで、目標設定などが曖昧であった点は否めません。一方で今年はメンタリングを受けられていることで、より有意義な渡航になりそうです。メンターを通じて事前に面談相手をご紹介頂き、海外の関係者とネットワークが渡航前から構築できているのが心強いですね。すごくありがたいことです。
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海外のイベント出展は何度か参加してはじめて見えてくる
――英国メンターのデイビット氏とは相性が良いと聞いて安心しました。
彼自身も製薬会社の出身であり、かつ現在は独立して事業を経営しており、スタートアップとのやりとりにも慣れているので、いつもバイアスのない率直な意見を聞かせてくれます。製薬会社といえば、今後我々が海外市場に進出するにあたって想定されるお客様の最大候補ですから、以前その立場にいた方のメンタリングを受講できるのは、彼らの考え方を知る上で非常に役立ちます。彼が我々をどう評価しているかは彼に聞かないとわかりませんが(笑)、我々は彼と一緒に仕事ができ良かったと考えています。
――第1期プログラムの参加経験は、お役に立っていますか。
はい。第1期の参加経験があったからこそ、今週の2回目の欧州渡航に向けて色々と準備ができていると思っています。実は最近、海外のイベントの参加経験が豊富なスタートアップの方と話をする機会があったのですが、彼がいうには「海外のバイオ関連イベントは1回参加しただけではよくわからない。でも2回、3回と回数を重ねるうちにだんだん要領がわかってくる。だからこそ何度も参加する必要がある」と。その意味では、我々の中でも過去の経験が活きているのではないかと思っているところです。
来年は新規モデル開発などを通じてさらなる「飛躍の年」に
――海外進出への思いや意気込みについてお聞かせください。
来年は、当社にとっては非常に重要な年になります。これまで当社は、主に低分子化合物や蛋白質などの分子構造に特化した基盤AIモデルを開発してきました。しかし来年からは、分子間相互作用など新たな基盤AIモデルや生成モデルの開発も開始する予定です。その点で来年は、我々にとって新たな飛躍の年になります。特に海外進出は喫緊の課題であり、だからこそ今秋予定のBIO-EUROPE参加では、ぜひとも最初のリードを獲得して、欧州進出の足がかりを構築したいですね。
――最後に、本記事を読まれる読者へのメッセージをお願いします。
当社は昨年に引き続き、2年連続で本プログラムに参画しており、プログラムの関係者の皆様には、本当に多くのご支援を頂いています。今年はさらに一層お世話になって海外展開の起点も構築したいと考えています。他にも様々なスタートアップ支援など様々な素晴らしいプログラムが用意されているので、スタートアップの皆様はぜひ積極的に情報収集して、こうしたプログラムを利用してみて下さい。きっと良い結果につながると思います。
.png) 諸橋 大介氏(AI事業部長)
諸橋 大介氏(AI事業部長)豪州メルボルン大学で物理学とソフトウェアエンジニアリングを学び、卒業後は人材業界に就職。主に医療業界や製薬業界などで活躍する人材紹介業務などを担当する。リクルート時代には医療/ヘルスケア関連のスタートアップ支援を担当し、そこでスタートアップのイロハを学ぶ。AI関連スタートアップに転職した際には、その経験を活かして営業部門の立ち上げを担当。SyntheticGestaltには昨年春に入社している。
 <UNIKORN第二期ファミリーインタビュー>
UNIKORN第二期ファミリーに聞く① 誰もが「陽子線がん治療」を利用できる世界を 株式会社ビードットメディカル
UNIKORN第二期ファミリーに聞く② 高品質な医療データの提供を通じて機器開発や創薬に貢献 株式会社Surg storage
UNIKORN第二期ファミリーに聞く③ 新規ドラッグデリバリーシステムを用いた「がんワクチン」開発に挑戦 DiveRadGel株式会社
<UNIKORN第一期ファミリーインタビューはこちら>
UNIKORNファミリーに聞く⑧ 4次元データを用いた創薬AIで化合物探索の「自動化」に挑む SyntheticGestalt(シンセティックゲシュタルト)株式会社
UNIKORNファミリーに聞く⑦ 東大発の人工知能×画像解析技術で世界市場へ エルピクセル株式会社
UNIKORNファミリーに聞く⑥ 体外受精の自動化技術で不妊治療のレベルアップを目指す 株式会社ARCS(アークス)
UNIKORNファミリーに聞く⑤ 革新的な合成ペプチド探索技術で再生医療・細胞治療・培養肉の更なる商業化に貢献! ペプチグロース株式会社
UNIKORNファミリーに聞く④ 小児希少難病に対する細胞治療薬を島根の地から世界に届けたい PuREC株式会社(ピュレック)
UNIKORNファミリーに聞く③ 医薬品の「製造プロセス開発」におけるコストダウンを実現する 株式会社Auxilart (オキシルアート)
UNIKORNファミリーに聞く② 細胞死メカニズムを利用した新規抗がん剤を開発 株式会社 FerroptoCure(フェロトキュア)
UNIKORNファミリーに聞く① 慶應義塾大発の最新技術で悪性脳腫瘍の新治療に挑戦! 株式会社 iXgene(アイエックスジーン)
 
  
  
  
  
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
   
  