Menu

イベントレポート

「"東北大学先端技術×ライフサイエンス"シリーズ vol.3 次世代放射光による可視化が変えるライフサイエンスの未来」を開催(5/26)

  • twitter
  • Facebook
  • LINE

2022年5月26日(木)に日本橋ライフサイエンスハブおよびオンラインにて、東北大学のナレッジ・テクノロジー・スタートアップ支援・イノベーション創造イニシアチブの現状を紹介する"東北大学先端技術×ライフサイエンス"シリーズのvol.3を開催いたしました。今回は、2023年に東北大学青葉山新キャンパスに完成する次世代放射光施設を取り上げました。
(主催:LINK-J、共催:国立大学法人東北大学オープンイノベーション戦略機構

同施設は、国・地域・大学・国研に加え、約100社に上る企業が出資して建設を進めており、出資した企業・学術機関は、それぞれが成果を専有できる新しい制度のもとで、世界トップクラスの性能の光を利用できます。

この新しい光は、モノの見え方を変えてしまいます。例えばライフサイエンス分野では、タンパク質構造解析に加え、細胞内の状態を可視化し、薬理や薬物動態といった創薬研究の応用分野が広がることが期待できます。さらに、「モノの見え方が変わる」ことで、計測と計算科学・データ科学・AIとの距離を縮め、仮説検証サイクルを加速します。

すでに、スピントロニクスや触媒など、デバイス・材料の研究開発の手法に革新をもたらしつつあり、2050年のカーボンニュートラルと脱炭素社会の実現にむけて様々な分野が集い、つながるオープンイノベーションの場として、産業界・学術から広く期待されています。

新たな連携の形による産学連携に関心をお持ちの方や、次世代放射光のライフサイエンスをはじめとする多分野での活用に関心のある方など、220名以上の方にご参加いただき、多数のご視聴・ご質問、誠にありがとうございました。
LINK-JのYouTubeチャンネルでアーカイブ動画を公開しています。是非ご覧ください。

【登壇者】
高田 昌樹 氏(東北大学 国際放射光イノベーション・スマート研究センター 教授)
村松 淳司 氏(東北大学 副理事(次世代放射光計画担当)、国際放射光イノベーション・スマート研究センター センター長)
権田 幸祐 氏(東北大学大学院医学系研究科 教授)
南後 恵理子 氏(東北大学多元物質科学研究所 教授)

【講演概要】
IMG_5815.JPG
「ライフサイエンスの研究基盤としての次世代放射光施設」高田先生
次世代放射光施設が、2023年、東北大学青葉山新キャンパスに完成します。次世代放射光施設は、軟X線領域における輝度の高さを強みとし、硬X線領域に強みを持つSPring-8と相補的に、ナノの可視化で我が国の最先端研究を支える放射光施設です。
非専門家が理解しやすい可視化された機能のマッピング画像は、このツールを用いる分野との融合を飛躍的に拡げます。この新しい光は、モノの見え方を変えてしまいます。
ライフサイエンス分野では、既存のたんぱく質構造解析に加え、細胞内の状態を可視化し、薬理や薬物動態といった創薬研究の応用分野が広がることが期待できます。そして、計算科学やデータ科学・AIとの融合が一気に進み、課題解決におけるイノベーションを高速化させるゲームチェンジャーとなることでしょう。次世代放射光施設の概要と展望について、ご紹介いたします。

IMG_5819.JPG
「X線吸収ナノ粒子を利用した腫瘍血管の光イメージング」権田先生
我々は、独自開発した金ナノ粒子をX線造影剤に用い、高分解能µX線CTを使って、がん、糖尿病、認知症など血管病変が関与する疾病モデルマウスの病態解析とその医療応用目指して研究を進めています。最近、µX線CTと蛍光イメージングを組み合わせることで、異なる血管新生阻害剤が腫瘍血管の病態変化に及ぼす効果の差を詳細に明らかにしました。このデータに加え、血管イメージングへの応用を目指した新たなX線造影剤開発の取り組みや、放射光を用いた血管イメージングの可能性について紹介したいと思います。

IMG_5825.JPG
「百聞は一見に如かず:タンパク質分子動画から見えてくる世界」南後先生
我々の身体で重要な役割を果たすタンパク質は、その機能を発揮する際に巧みに構造変化を起こすことが知られています。例えば、タンパク質にリガンドが結合する時の構造変化や酵素反応の様子を原子レベルで捉えることができれば、新たな分子創製や医薬への応用が期待されます。従来、タンパク質の動的な構造を原子分解能で捉えることは非常に困難でしたが、近年ではX線自由電子レーザーや放射光を用いて、動的構造の決定が可能となっています。本セミナーでは、我々が取り組むタンパク質動的構造解析の技術開発について紹介し、動的構造情報から期待される今後の展開について紹介したいと思います。

IMG_5829.JPG
パネルディスカッションでは、村松先生によるご進行のもと、パネリストが質問に答える形で議論が展開されました。

(質問一例)
・海外企業がコアリションに参加し次世代放射光施設を利用する事が可能か
・動的なタンパク質の構造情報を見ることによって創薬に対してどのような恩恵をもたらすか
・脳実質内における神経細胞などの光イメージングも可能か
・脳梗塞にもイメージングの応用が広がっていく可能性があるか

議論の中では、モノの見える化を進めるための東北大学内の取り組みとして、クライオ電子顕微鏡を有する「ソフトマテリアル研究拠点※」および「東北メディカル・メガバンク機構」と次世代放射光との連携についても紹介されました。
※ソフトマテリアルの社会実装の加速・拡大に資するため、東北大学の研究者と企業との産学連携拠点を目指し 2020 年8月に設立

最後に、お一人ずつ将来の期待を述べていただき閉会となりました。

高田先生
次世代放射光は課題解決のツールであり、コアリションによって様々な分野の先生方とマッチングできる点や、機密性・即応性が特徴である。各企業に合わせた活用の形があり、次世代放射光をどのように戦略的に利用するかを共に考えるためにコアリションコンセプトが存在するので、ぜひ問い合わせてほしい。青葉山が、分野融合が生まれるオープンイノベーションの場となることを目指している。すでに国立大学・私立大学・国立研究開発法人との利活用促進の動きも進んでおり今後に期待している。

南後先生
結晶構造解析等について新たな手法を試そうとしても、既存のビームラインに入れる事は難しく、その意味で、新たにデザインされる次世代放射光では新たな手法をフレキシブルに構築できるのではないかと期待している。

権田先生
従来の蛍光イメージングには多くの利点もあるが、三次元的・非侵襲的・経時的・正確に物の場所と量を特定することが困難であるという技術的課題があった。これらを解決する可能性を秘めたX線イメージングとして、次世代放射光を利活用することで、病気や薬物動態の解明・創薬の発展に寄与したい。

村松先生
東北大学もコアリションメンバーに入っている。若手研究者が思い立ったらすぐに次世代放射光を利用し、イノベーティブな活動ができる環境を整備した。オンデマンドな解析がすぐにできるので、企業の方々もコアリションメンバーになっていただき次世代放射光を活用してほしい。東北大学と企業が相互に連携することで、新たなものを創り出していきたい。
また、東北大学には共創研究所という制度もあり、企業の中央研究所等を仮想的に東北大学に置いて、次世代放射光・クライオ電子顕微鏡・核磁気共鳴装置等の東北大学の機能と知を使いながら、産学連携を進めることが可能である。

IMG_5834.JPG

閉会後は東北大学関係者と参加者との間で積極的に名刺交換が行われました。
ご参加・ご視聴いただいた皆様誠にありがとうございました。

こちらもおすすめ

pagetop