11月26日に、第7回LINK-Jオンライン・ネットワーキング・トーク「京大インキュベーター「IHK」で医療ヘルスケア・イノベーションを起こす! ~超スタートアップの本音2020~」をライブ配信いたしました。(主催:LINK-J 共催:京都大学大学院医学研究科「医学領域」産学連携推進機構)
本イベントでは、イノベーションハブ京都(IHK)に入居する、4社のスタートアップ企業に焦点を当て、IHKの活動や施設なども含めた事業紹介を行いました。後半は、登壇企業によるパネルディスカッションを行い、資金調達、人材確保等の設立にいたるまでの具体的な課題、さらなる成長に向けた課題などを議論していただきました。
【登壇者】
京都大学大学院医学研究科「医学領域」産学連携推進機構 特任教授 山本博一氏
京都大学大学院医学研究科「医学領域」産学連携推進機構 特定講師 山口太郎氏
トレジェムバイオファーマ株式会社 代表取締役 喜早ほのか氏
株式会社Photo Soni Life Technology 代表取締役 若松知哉氏
HiLung株式会社 共同創業者 伊藤俊介氏
AMI株式会社 代表取締役CEO 小川晋平氏
サイアス株式会社 代表取締役 等泰道氏(モデレーター)
イノベーションハブ京都のご紹介「京都大学における医学ヘルスケア・スタートアップ創出・育成」
京都大学大学院医学研究科「医学領域」産学連携推進機構 特任教授 山本博一氏
山本氏からは、イノベーションハブ京都(以下、IHK)についてご説明を頂きました。
2017年9月に開設されたIHKは、大学発スタートアップの創業と成長のための施設であり、ステージに応じた環境やプログラムを用意されています。中でもアーリーステージのベンチャーを対象とした「アントレプレナー・ラボ」は、開設当初から入居率100%と高い人気を誇っているとのこと。入居後は、IHK交流会を実施し、入居企業だけでなく、学内研究者や学外スタートアップや企業とのコミュニケーションの場を設けていることをご説明頂きました。またソフト面では、HiDEP(医療ヘルスケア・イノベーション起業家人材育成プログラム)にてゼロから医療機器開発と経営について学ぶことができ、ビジネスアイデアの創出、プロトタイピングまでを実践する4カ月のプログラムがあるという。これまでに起業2社、特許出願3件の実績があることもご紹介いただきました。
IHK施設見学紹介 京都大学大学院医学研究科「医学領域」産学連携推進機構 特定講師 山口太郎氏
今回は特別にIHKの共通機器室とインキュベーションコア・ラボを視聴者の皆様にご案内いただきました。
入居企業が実際に使用できる実験機器や、設備の詳細などをご説明いただき、山口氏は、「アイデアだけ持って入っていただいてもその日から実験ができる施設。新設した工房では、医療機器開発をサポートするため3Dプリンター、レーザーカッターなどもあります。常時見学は受付中ですので、ご興味のある方はこちらまでご連絡ください。」と紹介されました。
「歯数制御による歯の再生治療薬の開発」(トレジェムバイオファーマ株式会社 代表取締役 喜早 ほのか氏)
トレジャムバイオファーマ社は、京都大学歯科口腔外科髙橋克准教授の研究成果をもとに、「永久歯の次に生える歯を成長させ、むし歯や歯周病などによる欠損歯の新しい治療法とすること」を目指して2020年5月に設立したスタートアップです。
先天性無歯症患者に対する治療方法を段階的に進めるため、「ヒト化抗USAG-1抗体製剤」開発を進められています。最終的には先天性無歯症患者に対する歯の再生治療薬を提供し、第3生歯を形成させることにより歯を再生する治療法へと展開するため、2023年臨床試験開始を目指しています。
「光超音波イメージング技術の社会実装への挑戦」(株式会社Photo Soni Life Technology 代表取締役 若松 知哉氏)
Photo Soni Life Technology社は、京都大学インキュベーションプログラムの採択を受け、2020年7月に創業したスタートアップです。光超音波イメージング技術を応用することで、各疾患の早期診断や予防、治療支援に役立てることをミッションとしています。
光超音波イメージングのメカニズムは、パルスレーザーを生体に照射し、体内から発生する超音波を超音波センサーで検出することで、吸収体の場所を特定し可視可します。 光・超音波を用いることの利点は、非侵襲・非造影かつリアルタイムに画像が検出できることです。例えば、関節リウマチでは従来技術のX線やMRIでの問題点をクリアし、微細な欠陥を高コントラストで三次元・リアルタイムで描出可能で酸素飽和度による評価が可能です。若松氏は、「まずは顕微鏡の試験販売を行うことからはじめ、治験を進め、医療機器の販売を目指します。」と述べられました。
「呼吸器疾患の創薬プロセスを革新するiPS創薬プラットフォーム」(HiLung株式会社 共同創業者 伊藤 俊介氏)
HiLung社は、呼吸器疾患の創薬基盤を構築し、ソリューションを提供していくことを目指している2020年に創業したスタートアップです。
呼吸器疾患の根本治療はなく、医薬品の開発が難しい領域とされているが、同社は、iPS細胞を用いて肺の細胞を大量培養することで解決し、医薬品開発に必要なプラットフォームの実現を目指します。
伊藤氏は、「事業としては細胞販売や創薬支援、医薬品の開発、再生医療など製品開発と進めていきたいと考えています。臨床予測性を担保する創薬プラットフォームとして、高再現性のin vitro肺、高品質の疾患モデル、高ハイスループットの肺創薬スクリーニング、高深度のフェノタイプ解析基盤という強みがあり、今後は細胞販売ビジネス展開などからはじめていきたい。」と述べられました。
「超聴診器と遠隔医療」(AMI株式会社 代表取締役CEO 小川 晋平氏)
AMI社は、遠隔医療にも活用できる超聴診器の開発を進めている、2015年11月に設立した医療機器開発を事業とする企業です。
対象疾患は、大動脈弁狭窄症と心不全の2つとし、どちらも予後が悪いという共通点があるという。心疾患は早期発見がさらに重要になると考え、聴診器に注目したという。同社は、基盤から社内で設計して開発し、現在は医療従事者とエンジニアの混合チームで研究開発をし、臨床研究→ソフトウェア開発→ハードウェア開発を行っています。聴診器は、遠隔医療で用いるため、送信、出力という受け手のデバイスによる問題点をクリアするために、音を可視化する機能を備えています。
小川氏は、「遠隔で聴診して災害地医療や離島医療に役立てたいという思いで起業をしたので、超聴診器によって突然死を少しでも減らしたいと考えています。」と述べられました。
パネルディスカッション
パネルディスカッションでは、京都大学発ベンチャーであるサイアス株式会社の等氏をモデレーターとして、視聴者からの各社への質問に答える形で行いました。
苦労した点として、全員の共通認識として「資金と人」が話題にのぼりました。
「なぜ拠点を京都にしたのか?また世界への展開は?」などの質問に回答頂きました。
喜早「京都生まれ、京都育ち、さらに京都大学で研究しており、京都の方大変応援していただいている。また、歯に対する興味は各国の国民性があり、人口の多い国にはうけるのでは?」
若松「京都大学で研究を進めていること、産官学連携の豊富な実績があること。また、もちろん海外も視野にいれていて、海外の方が発展的である。」
伊藤「大学内での技術的なコミュニケーションがとりやすい点、今は難しいが海外のクライアントに喜んでもらえる。また、海外の方がマーケットは大きく、世界に目をむけている。アメリカに子会社あり。」
小川「HiDEPのプログラムが大きな強み。なた、将来的にはグルーバル展開を目指している。」
それぞれの会社の取り組み、そして超スタートアップだからこその課題などを語っていただきました。ご視聴いただいた皆さま、登壇者の皆さま、誠にありがとうございました。
またご質問などございましたら、こちらまでお問い合わせください。
LINK-Jオンライン・ネットワーキング・トークでは、引き続きライフサイエンスに携わる人々のスタートアップや企業支援について産官学を問わずお届けしてまいります。ぜひご参加ください。